【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子

273.報告を聞いて

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 事の次第を自室で伝え聞き、手にしていた道具を机に置くと、使いと共に小部屋へと来ていたレイヴンへと視線を向けた。
 使いは報告を端的に済ませると、そのまま踵を返して立ち去っていく。

 ウルガーがパっと見で判断して、俺じゃないと無理そうだって思ったってことか。
 で、念押しの王命とは俺を働かせる気満々じゃねぇか。

 どれだけサボると思われてんだかな。
 まあ、やらなくていいならやりたくねぇのは事実だが。

 こっちは準備がもうちょいかかるってのに、全くもって空気を読まない迷惑なヤツらだ。

「何だ動きが早ぇな。もうちょい色々仕込みたかったところだが、性懲りもなくこの国の近くでおっ始めるとはな。コレに関しちゃサボる訳にいかねぇし」
「テオが……とても普通なことを言っていて驚きです。魔塔主としてご指示を頂きたいのですが、補佐官の俺はこの場で待機しますか? それともお供を?」
「失礼なことが聞こえたが、まぁいいか。そうだな……どっちかっつーとヤツらは俺たちに会いたそうだしな。この国をというよりも、実験成果を見たいっつーところだろ」
「確かにそういうことを考えていそうな雰囲気はしていましたけどね。それで、どうします?」

 レイヴンが答えを促すようにもう一度尋ねてくる。
 急いては事をし損じるって言うしな。
 
 立ち上がるとレイヴンの腕を引いて、胸元へと引き込む。
 もそもそと困惑して動くレイヴンを抑え込んで、苦しくならない程度に力を込めてそのまま抱きしめた。

「だったら残っても意味ねぇし、俺のやる気のためについてこい」
「……言ってることもどうかと思いますけど、今、なんで抱きしめられたのか分からないのですが」
「先にやる気の補填をしたに決まってんだろ」
「なんですか、それ……」

 呆れた声の中に、照れが混じってるんだよな。
 必死に隠そうとしてんのが、相変わらずだ。
 レイヴンをひと撫でしてから、仕方なく開放する。
 ホントはこれくらいじゃ足りねぇが、まずは憂いを取り除かねぇとな。

 念のための薬瓶を準備しベルトに差し込むと、慣れた手付きで装着していく。
 まださすがに本格的な戦闘になることはねぇとは思うが、どうなるかは分からねぇ。
 
 レイヴンも同じく、ベルトを装着すると俺よりは少な目に薬瓶を差し込んでいく。
 俺の部屋にもレイヴンの装備は常に用意してあるから、どこでも支度はできるようにしてある。
 最後に魔法使い用のローブを纏って、外出準備を整える。

「まぁ、召喚陣だろうけどよ。今回は壊すだけじゃ物足りねぇから仕込みも入れる」
「仕込み……ですか。よく分かりませんが、俺たちに危険が迫らないことであれば」

 顔を見合わせてお互いに確認をする。
 視線をテラスへと向けて、移動手段を伝えてやる。
 今から魔塔の階段を下りてわざわざ出かけるなんていう選択肢は存在しねぇ。
 
 俺の意図を理解しているレイヴンも、渋々一緒にテラスへと出る。
 ローブを掴んでくるレイヴンを手繰り寄せて、左手をレイヴンの腰に回し呪文を紡ぐ。
 指定された場所へ、移動テレポートを発動させた。
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