【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子

262.自室で真剣に

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 一旦魔塔にいる魔法使いたちの様子を見て、俺というよりレイヴンが細かな指示を出す。
 俺が話すよりもレイヴンが話すと、コイツらも言うこと聞くんだよな。
 今日の予定をしっかりと説明した後に、一緒に俺の自室に戻る。
 
 レイヴンが台所で飲み物を準備している間に机へ向かい、記録用の本の白紙のページに自分の見たものを書き写していく。
 書き写しちまえば、レイヴンも一緒に見られるしな。

「どうぞ。テオが真面目すぎてちょっと驚いてます」
「なんだ? 惚れ直したか?」
「口を閉じていれば、ですけど。元々研究がお好きだからとは思っていましたけど、探究心は力になるんですね」
「そんな小難しいことは考えてねぇけど、自分の知らないことを吸収するのは嫌いじゃねぇな」

 レイヴンが置いたカップを手に取り、鼻孔を擽る香ばしさが漂う珈琲を一口飲む。
 何も言わねぇうちに珈琲を淹れるのも上手くなったよな。
 俺の好みをよく分かっているのも、さすが可愛い弟子ってことだな。

「俺はこちらにいますので、何かあれば声をかけてください」
「あぁ、分かった」

 レイヴンも調べものをするから資料を貸してほしいとわざわざ言ってくる。
 んなもん、勝手に使って構わねぇってのによ。
 
 真面目な顔して、俺の自室にある資料や本を何冊も抱えてテーブルの上へと広げていく。
 本当はレイヴンを構いながらやりたいところだが、触ると確実にヤっちまいそうだから、少しだけ我慢して作業に戻る。

+++

 集中して記憶を書き出せたし、後は問題ねぇはずだ。
 珈琲を一気に煽り、腕を掴んで上へと伸ばす。
 そのまま首だけ動かして、レイヴンの様子を伺う。
 
 ついさっきまで難しい顔して唸ってたんだが、ソファーにもたれ掛かって寝てるみてぇだな。
 椅子から立ち上がって、様子を見にソファーへと歩み寄る。

「レイ?」

 話しかけても反応はない。
 静かな寝息を立てて、すやすやと眠っちまってる。
 寝てると長いまつげがよく見えて、また絵になる可愛さだよなぁ。
 
 テーブルには様々な本や資料が広げられたままだし、レイヴンも何かしら書き写してみてぇだな。
 俺の部屋にある書物の中でも分厚いものを読み進めているうちに、睡魔に襲われたってところか。

「俺が静かにしてると寝るのか? まぁ、ここ何日か特に可愛がってるし、しょうがねぇな」

 寝顔を晒せるくらい安心してくれてんのは嬉しいもんだな。
 レイヴンを起こさないように抱き上げて運び、静かにベッドへと寝かせた。
 
 ベッドの脇に座って見ているだけじゃ我慢できねぇ。
 どうしても触れたくなってくる。
 
 色々構いたくなるのを堪えて一度だけ撫でる。
 真面目なところも見せてやらねぇと、本気にしねぇしな。
 
 仕方なく立ち上がり、踵を返して作業の続きをするために机へと戻った。
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