【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

文字の大きさ
上 下
263 / 483
第十章 たまには真面目な魔塔主といつも真面目な弟子

261.調べものを終えて

しおりを挟む
 集中してそこらの本を片っ端から読んで、気になった内容はレイヴンと共有する。
 その繰り返しをしていたってのに、アスシオが俺らの側へといつの間にか歩み寄っている。
 今まで石像のように動きもしねぇでいたくせに。
 いきなり邪魔するなっての。

「そろそろお時間ですので。お二方には申し訳ありませんが、本日はこの辺りで切り上げて頂けますか?」
「お前、気配消して近づいてくるんじゃねぇよ。しゃあねぇな……了解」
「貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。師匠、行きましょう」

 アスシオは相変わらず表情一つ変えない無愛想なまんまだ。
 無愛想野郎に大してもレイヴンだけが一礼する。
 必要ねぇだろ、別に。
 
 仕方なく黙っていると、レイヴンがアスシオの背に続いて歩き出す。
 俺もその後にだらだらと歩いて続く。
 
 アスシオが来た時と同じように結界を外し、一緒に禁書の部屋から元いた図書館へと戻る。
 スーッと赤の結界が作動したのを目視で確認すると、アスシオが魔道具を素早く戻す。

「では私はこれで。くれぐれも妙な気は起こさぬよう」
「なんで俺を見るんだよ。いちいち煩ぇな。分かってるからさっさと行けよ」
「言い方! ……申し訳ありません。アスシオ様、ありがとうございました」

 アスシオは最後に俺を一瞥し、レイヴンにだけ一礼するとクルと背を向けて去っていった。
 最初から最後まで感じ悪ぃヤツだな。
 別にどうでもいいけどよ。
 
 漸く邪魔者がいなくなったな。
 遠慮なくレイヴンの背中側から腕を回して抱きしめる。
 やっぱ腕の中に閉じ込めておくと、安心するっつーか。
 もう、癖みたいなもんだよな。

 真面目なことをするのは向いてねぇし、ただただ疲れる。
 癒しを求めて、レイヴンの肩に頭を乗せた。

「何か頭使ったら疲れたな。一段落したら休憩しようぜ。まずは部屋に戻るか」
「俺も目が疲れた気はしますけど……って、重いです。戻るのには賛成ですけど」
「だよな。大体見たいものは見たし、今日のところはいいだろ。一旦引き上げだ」
「そうですね、そうしましょうか。って、ここでアレ使ったらダメですよ」

 レイヴンが首を上げて、念押ししてくる。
 別に室内で移動テレポートを使う気はなかったけどよ。
 中庭だったらよくねぇか?
 
 俺の考えはお見通しとばかりに、レイヴンがじっと見てくる。
 
「分かったって。そんな目で見なくても使わねぇよ」
 
 自然と不満が声色に漏れ出ちまった。
 レイヴンを抱きしめたまま、耳元で吹き込んでやる。

 ピクっと反応した癖に、振り返ってめちゃくちゃ睨んでくる。
 相変わらず反応はよろしいってのになぁ。
 不機嫌になられると、この後触らせてくれねぇし。
 諦めてレイヴンを開放して、だらだらと歩き始めた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。 恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。 ※猫と話せる店主等、特殊設定あり

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

処理中です...