【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第九章 我慢していた魔塔主と受け入れる弟子

255.早朝に<レイヴン視点>

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 次の日――

 早めに眠ったおかげで体調も戻ったのかもしれない。
 朝方早めに目が覚めた。
 テオは自分を抱き込んだまま眠っていて、結局一晩中、抱きしめられてたってことになる。
 寝ぼけながら、側にいるだけならいいって言った気もするけど……だからって、抱き枕じゃないんだから。
 俺をいつも抱き枕代わりにするのはやめてほしい。

 逆に気恥ずかしい気持ちのまま、そっと腕の中から抜け出して、キッチンへと向かう。
 冷えたミルクを取り出して、鍋に入れる。
 火をかけて温めながら何気なく、テラスへと歩み寄って外へ出た。
 
 まだ少し肌寒いけど、スッキリと晴れ渡った空に気持ちも晴れやかになっていくような気がする。

「何か休みが続くと気が抜けそうだな。何しよう……」

 身体を伸ばして陽の光を浴びてから、ゆっくりと火を止めに戻る。
 温まったミルクをカップへと注いでいき、熱さに気をつけてそっとカップに口付けて一口飲む。
 立ったままだと行儀が悪いので、椅子を引いて腰掛けた。

 思ったよりも温まっていて、少し熱かったかもしれない。
 カップを一旦テーブルに置いてから、まだ眠っているテオを眺める。

「眠ってれば静かで……面倒臭くもないのに」

 眠っていることをいいことに言いたい放題言ってやる。
 いつもやられっぱなしだし、何を言ってもヘラヘラ返されて腹が立つ。
 寝ている間に言いたいことを言ってしまうと、少し楽になってくる気がした。

 のんびりとカップを傾けて、静かな朝の時間を楽しんでいたのに、それでも一向にテオが起きてこない。
 ミルクも飲み終えたので気になってベッドへと戻る。
 テオの顔を覗き込んで暫くそのまま近くで見ていると、ゆっくりと目を開けた。

 テオが俺に柔らかな微笑を向けてくるから、その表情を間近で見てしまって、思わず固まってしまった。
 時々、誰にも見せないような顔をして俺を見てくるから、見慣れなくて対応が遅れてしまう。

「おはよう、ございます。テオ」

 テオが他人行儀な挨拶に笑いながら、俺の顔を引き寄せて軽く口付ける。

「ずいぶんと早起きじゃねぇか」
「たまたまだと思いますけど……」
「なんだ、もう起きて欲しいのか?」
「いえ、今日はまだ休みですし。俺もそこまで言いませんよ」

 別に……と言いかけたところで、テオが腕を引いてベッドへと俺を誘い込む。
 体勢を崩した俺を、強い力で引き寄せる。
 ベッドの中に身体が沈み込むと、また腕の中へと閉じ込められてしまった。

「テオは、寝直しますか?」
「まだ眠いしな。今日はゴロゴロしてればいいだろ」
「俺は読書しようと思ってたんですけど、まだ時間が早いので……」
「そうか。じゃあ、もう少し寝てようぜ」

 テオは欠伸をしていて、まだまだ眠そうだ。
 あまり朝に強くないこの人を見てると、俺も今日はもう少し寝ようかなという気分になってくる。
 今度は大人しく腕の中にいてあげようかな。
 別にさっきも暴れたりした訳じゃないけど、テオはやたらと俺を抱き込みたがるから。

 テオの温かな体温に触れながらもう一度微睡み、ゆっくりと眠りに落ちていく。
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