243 / 483
第九章 我慢していた魔塔主と受け入れる弟子
241.美味い酒と美味い飯
しおりを挟む
「ぁー。やっぱコレだよなぁ。うめぇな」
「このオッサン……どれだけ飲みたかったんだよ……」
「飲むヤツなんてみんなこんなもんだよ。補佐官様はこういう大人になるんじゃないよ」
「大丈夫です、俺はお酒あまり飲めませんし。師匠とは違いますから」
「ひでぇなぁ?」
キッパリと言い切るレイヴンに適当に返す。
注がれたお替り分のビールをチビ、と一口飲むと久しぶりのビールが染みる。
ったく、飲むのも禁じられて辛いの何のってなぁ?
出されたハムをひょいと手で放りこんで咀嚼し、またのんびりと酒を嗜む。
チラとレイヴンを見遣ると、出されたコーンスープをお行儀よく飲んでいてまた笑う。
「……なんですか? さっきから。ちょっと気持ち悪いです」
「おいおい、言い方よ。可愛いなと思ってな」
「……酔いが回るの早すぎません? ねぇ、ハリシャさん」
「アンタが可愛いのはみんなそう思ってるけど、魔塔主様は確かにアンタを見る目も気持ち悪いねぇ。気をつけな、こういうのはタチが悪いんだからね」
女将も視線を二人に順に流して肩を竦める。
ま、残念ながら手遅れなんだけどな。
話しながら刻んだ野菜と生米をサッと炒めた女将は、具合を見ながら調味料を足して蓋をする。
待つ間にレイヴンにもレモネードを出してスープのお替りを装う。
手際の良さと軽妙な話がいいんだよな。
更に、顔も良いし。
酒が進むんだよなァ。
「全く、女将も容赦がねぇよな。俺にもレイヴンに向ける優しさの欠片でいいから寄越せってんだよなぁ。まぁ、いいけどよ」
別に女将は女将だから好きだし、構わねぇけどな。
おかげで料理ができる前にビールを追加で二杯開けちまった。
レイヴンも出された温野菜をつまんで食べてるし、食も進むってことだな。
俺らがのんびり食ってると、店内に良い香りがふわりと漂ってくる。
蓋をずらした女将が、米の具合を見るために摘まんで味見をする。
程なくしてざっくりとかき混ぜると、皿に盛り付け俺らの眼の前にトン、と出す。
「へぇー。米を炒めてんのか。うまそうだな」
「簡単だけど腹にはたまるよ。さ、食べとくれ」
「うわぁ……美味しそうですね。頂きます」
細かく刻まれた野菜が米と混ざり合った炒めご飯は、食欲を唆る香りがする。
自然と顔を綻ばせたレイヴンが渡されたスプーンを手に取って、はふはふと口へと運ぶ。
俺がニヤニヤとレイヴンを見ていると女将が軽く小突く。
仕方ねぇ大人しく食うか。
「美味しいですね! 俺も今度作ってみようかな?」
「そうだなぁ。米はいいよな。ガツガツ食べられるしな」
「それは良かったよ。まだたくさんあるから食べておくれ」
美味い料理に舌鼓を打ちながら、のんびりとした昼食の時間を楽しむ。
こういうのが意外と悪くねぇんだよな。
レイヴンもたぶん似たようなこと考えてるのが分かる。
笑顔で飯を食えるってのはいいもんだ。
「このオッサン……どれだけ飲みたかったんだよ……」
「飲むヤツなんてみんなこんなもんだよ。補佐官様はこういう大人になるんじゃないよ」
「大丈夫です、俺はお酒あまり飲めませんし。師匠とは違いますから」
「ひでぇなぁ?」
キッパリと言い切るレイヴンに適当に返す。
注がれたお替り分のビールをチビ、と一口飲むと久しぶりのビールが染みる。
ったく、飲むのも禁じられて辛いの何のってなぁ?
出されたハムをひょいと手で放りこんで咀嚼し、またのんびりと酒を嗜む。
チラとレイヴンを見遣ると、出されたコーンスープをお行儀よく飲んでいてまた笑う。
「……なんですか? さっきから。ちょっと気持ち悪いです」
「おいおい、言い方よ。可愛いなと思ってな」
「……酔いが回るの早すぎません? ねぇ、ハリシャさん」
「アンタが可愛いのはみんなそう思ってるけど、魔塔主様は確かにアンタを見る目も気持ち悪いねぇ。気をつけな、こういうのはタチが悪いんだからね」
女将も視線を二人に順に流して肩を竦める。
ま、残念ながら手遅れなんだけどな。
話しながら刻んだ野菜と生米をサッと炒めた女将は、具合を見ながら調味料を足して蓋をする。
待つ間にレイヴンにもレモネードを出してスープのお替りを装う。
手際の良さと軽妙な話がいいんだよな。
更に、顔も良いし。
酒が進むんだよなァ。
「全く、女将も容赦がねぇよな。俺にもレイヴンに向ける優しさの欠片でいいから寄越せってんだよなぁ。まぁ、いいけどよ」
別に女将は女将だから好きだし、構わねぇけどな。
おかげで料理ができる前にビールを追加で二杯開けちまった。
レイヴンも出された温野菜をつまんで食べてるし、食も進むってことだな。
俺らがのんびり食ってると、店内に良い香りがふわりと漂ってくる。
蓋をずらした女将が、米の具合を見るために摘まんで味見をする。
程なくしてざっくりとかき混ぜると、皿に盛り付け俺らの眼の前にトン、と出す。
「へぇー。米を炒めてんのか。うまそうだな」
「簡単だけど腹にはたまるよ。さ、食べとくれ」
「うわぁ……美味しそうですね。頂きます」
細かく刻まれた野菜が米と混ざり合った炒めご飯は、食欲を唆る香りがする。
自然と顔を綻ばせたレイヴンが渡されたスプーンを手に取って、はふはふと口へと運ぶ。
俺がニヤニヤとレイヴンを見ていると女将が軽く小突く。
仕方ねぇ大人しく食うか。
「美味しいですね! 俺も今度作ってみようかな?」
「そうだなぁ。米はいいよな。ガツガツ食べられるしな」
「それは良かったよ。まだたくさんあるから食べておくれ」
美味い料理に舌鼓を打ちながら、のんびりとした昼食の時間を楽しむ。
こういうのが意外と悪くねぇんだよな。
レイヴンもたぶん似たようなこと考えてるのが分かる。
笑顔で飯を食えるってのはいいもんだ。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜
ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。
恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。
※猫と話せる店主等、特殊設定あり
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる