【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

文字の大きさ
上 下
226 / 483
第八章 解こうとした魔塔主と何も知らない弟子とエルフの里の長

224.父親公認?<レイヴン視点>

しおりを挟む
「そういえば……テオドールから聞いたのだが。彼とはその……師弟関係だけでなく、それ以上の関係、恋人だ、と……」

 お父さんの話を聞いて思わず小箱を落としかけて、慌ててギュッと抱きしめる。
 恥ずかしくって顔が真っ赤になっているのが分かる。
 絶句してしまって口はパクパクだし、固まって動けない。
 ギギギと音がなるのではというくらいに不自然に首を動かしてお父さんを何とか視界に捉える。

「大丈夫か? いや……私も驚いたのだが。テオドールが普通に言うものだから、そうなのか、と思ってな」
「あ、あ、あ……あの人、何、とんでもないことを、俺の知らない間に言ってくれてんだよもうっ! 本当に、そんなことを言ってたんですか!?」
「しかしレイヴンのことをとても心配していた様子だったし、愛している、とハッキリと言っていたから。私も驚きはしたのだが彼の行動を見ていて納得はした」
「はぁっ!? あ、愛してるとか、言ったんですか!? あぁぁぁ……ホント、何言ってるの、あの人は……俺にどうしろと言うんです? 泣きたい、隠れたい、恥ずかしくてどうしよう……うぅぅ……」

 俺の意識がないからって、何言ってんのあの人は……!
 どうしていいか分からなくて、落ち着きなくそわそわと動き回ってしまう。

 お父さん……一体俺とテオのことをどう思ってるんだろう……。
 納得してくれてはいるみたいだけど……。

 困りきっていると、戸惑っていたお父さんが俺を優しく抱きしめてくれた。
 テオの熱くて自信に満ち溢れた頼れる感じとは違って、お父さんは慈愛に溢れた優しい温かさだ。

 お父さんに包まれていると少し落ち着いてきた。
 でも、甘えさせて欲しくて。
 もう一度目を閉じて、俺からも両腕を回して顔を寄せた。

「父親としては複雑な気持ちなのだが、二人の絆は私では計り知れない絆なのだろうと思っている。だから、私からはとやかく言うつもりはない。彼がレイヴンのことを大切に思っている気持ちに嘘はないのだと、短い間話しただけだが十分に理解はしているつもりだ」
「そうですか……あの、何というか。すみません。でも、俺もその……一緒にいたいと思う気持ちは嘘ではなくて。好きとか、愛してるとか、そういうのは置いておいたとしても。テオの隣にずっといられたらって、思ってます」
「レイヴンは元々テオドールを補佐する役目なのだろう? だったら側にいて支えてあげなさい。それが彼の望みでもあり、レイヴンの望みでもあるのだから」

 テオが何故かお父さんに信用されているのが不思議だけど、俺もテオの側にいたい気持ちは本当だ。
 お父さんとはまた違った存在だし、あんなでも俺にとっては……好きな人でもあるから。
 あんまり本人の前では言いたくないけど。

 もそもそとまだ熱さの残る顔を上げてお父さんを見上げた。
 こうして甘えられるのも嬉しくて、自然と笑顔になってしまう。
 お父さんも微笑んで俺の髪を撫でて、親愛のキスをしてくれた。

「……そろそろ行きますね。また来ます、お父さん」
「あぁ。いつでも待っている。また会おう、レイヴン」

 もう一度抱きしめ合い、名残惜しい気持ちを抑えて手を振りながら後ろは振り返らずに歩き出す。
 お父さんに見送ってもらっている気がして、背中がぽかぽかと温かい気持ちになった。

 お父さん、行ってきます。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜

ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。 恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。 ※猫と話せる店主等、特殊設定あり

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

処理中です...