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第八章 解こうとした魔塔主と何も知らない弟子とエルフの里の長
223.深い絆<レイヴン視点>
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俺とクレインさん……お父さんと色々な話をしていた。
ずっと思い出せなかった子どもの頃の話、カナリーさん……お母さんがどういう人だったか? っていう話。
お父さんは今、どういう生活をしていていつも何をしているのか。
俺は今、テオと一緒に魔塔に住んでいる話とか。
もし俺に家族がいたとしたら、してみたかった話をしていた。
その話は傍から聞いている人がいたならば、他愛のない話だ。
でも、することができなかったから……今、お父さんがいるという事実が、とても嬉しかった。
短い時間だったけど、ディートリッヒ様を始め、テオやウルガーも俺のことを気遣ってくれたおかげでお父さんとの貴重な時間を過ごすことができた。
まだどう接すればいいのか分からないけど、話していたら少しずつ距離が縮まってきた気がする。
気づいた時には二人で笑い合って話せていたし。
本当は一緒に暮らして、もっと話していたいけど……そういうわけにもいかない。
俺は魔塔での暮らしが、お父さんには里長としての暮らしがあるから。
「話すことは尽きないが、レイヴンにはレイヴンの生きる場所があるだろう。私はいつでもここにいる。里から離れることはできないが、いつでもお前を見守っている」
「ありがとうございます、お父さん。お互いに辛くて忘れられないことはあるけれど、俺は会えて本当に良かったです。テオが一緒ならきっと近くまで飛んでこられるから、また顔を出しに来ます。なんて、我儘を言ったら聞いてくれるのかは気分次第でしょうけど」
「そうか。彼は移動を会得しているのだな。この里にもテオドールの名前は聞こえてきていたのだが、本当に我々の予想以上の使い手なのだな。――それでは、レイヴンにこれを。受け取ってくれ」
お父さんは薄緑色の葉の装飾が施された小さな小箱を俺に手渡してくれた。
そっと開けてみると、中にはセルリアンブルーの魔石のあしらわれた小さな一枚葉の耳飾りが入っていた。
金素材みたいで、小ぶりだけど品の良い耳飾りは華美でもなく自然な作りだ。
「これは……?」
「これを身に着けていれば私と会話をすることができる。魔石には精霊の力が込められているから、精霊の力の及ぶ範囲であれば会話することが可能だ。後、里へと続く結界を通ることができる力もあるから、いつでも訪ねてきなさい。レイヴンならば我らの作り出した空間の歪みを越えて、里の入り口まで迷わず来られるはずだ」
「ありがとうございます。大切にしますね。俺からは何も渡せる物が今ないので、今度来る時に何か持ってきますから」
「そんなに気にすることはないが、レイヴンが選んでくれた物ならば喜んで頂こう」
初めてのプレゼントをもらえたのが嬉しくて小箱を胸に抱く。
お父さんに微笑みかけると、優しい表情を向けてくれて頭を撫でてくれた。
出発前に時間をもらったとはいえ、長居しすぎると別れが惜しくなってしまいそうだ。
寂しい気持ちは隠せないけど、お父さんの顔を見上げて忘れないように。
目に焼き付けて笑いかけた。
ずっと心の中で憧れていた優しい時間。
もう少しだけ、余韻に浸って目をつぶる。
そろそろ行かなくちゃと暫く頭を撫でてもらっていると、ふと、お父さんが悩むような仕草を見せたあと躊躇いがちに口を開く。
ずっと思い出せなかった子どもの頃の話、カナリーさん……お母さんがどういう人だったか? っていう話。
お父さんは今、どういう生活をしていていつも何をしているのか。
俺は今、テオと一緒に魔塔に住んでいる話とか。
もし俺に家族がいたとしたら、してみたかった話をしていた。
その話は傍から聞いている人がいたならば、他愛のない話だ。
でも、することができなかったから……今、お父さんがいるという事実が、とても嬉しかった。
短い時間だったけど、ディートリッヒ様を始め、テオやウルガーも俺のことを気遣ってくれたおかげでお父さんとの貴重な時間を過ごすことができた。
まだどう接すればいいのか分からないけど、話していたら少しずつ距離が縮まってきた気がする。
気づいた時には二人で笑い合って話せていたし。
本当は一緒に暮らして、もっと話していたいけど……そういうわけにもいかない。
俺は魔塔での暮らしが、お父さんには里長としての暮らしがあるから。
「話すことは尽きないが、レイヴンにはレイヴンの生きる場所があるだろう。私はいつでもここにいる。里から離れることはできないが、いつでもお前を見守っている」
「ありがとうございます、お父さん。お互いに辛くて忘れられないことはあるけれど、俺は会えて本当に良かったです。テオが一緒ならきっと近くまで飛んでこられるから、また顔を出しに来ます。なんて、我儘を言ったら聞いてくれるのかは気分次第でしょうけど」
「そうか。彼は移動を会得しているのだな。この里にもテオドールの名前は聞こえてきていたのだが、本当に我々の予想以上の使い手なのだな。――それでは、レイヴンにこれを。受け取ってくれ」
お父さんは薄緑色の葉の装飾が施された小さな小箱を俺に手渡してくれた。
そっと開けてみると、中にはセルリアンブルーの魔石のあしらわれた小さな一枚葉の耳飾りが入っていた。
金素材みたいで、小ぶりだけど品の良い耳飾りは華美でもなく自然な作りだ。
「これは……?」
「これを身に着けていれば私と会話をすることができる。魔石には精霊の力が込められているから、精霊の力の及ぶ範囲であれば会話することが可能だ。後、里へと続く結界を通ることができる力もあるから、いつでも訪ねてきなさい。レイヴンならば我らの作り出した空間の歪みを越えて、里の入り口まで迷わず来られるはずだ」
「ありがとうございます。大切にしますね。俺からは何も渡せる物が今ないので、今度来る時に何か持ってきますから」
「そんなに気にすることはないが、レイヴンが選んでくれた物ならば喜んで頂こう」
初めてのプレゼントをもらえたのが嬉しくて小箱を胸に抱く。
お父さんに微笑みかけると、優しい表情を向けてくれて頭を撫でてくれた。
出発前に時間をもらったとはいえ、長居しすぎると別れが惜しくなってしまいそうだ。
寂しい気持ちは隠せないけど、お父さんの顔を見上げて忘れないように。
目に焼き付けて笑いかけた。
ずっと心の中で憧れていた優しい時間。
もう少しだけ、余韻に浸って目をつぶる。
そろそろ行かなくちゃと暫く頭を撫でてもらっていると、ふと、お父さんが悩むような仕草を見せたあと躊躇いがちに口を開く。
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