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第八章 解こうとした魔塔主と何も知らない弟子とエルフの里の長
221.思うことは皆一緒
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俺の勢いにディーも考え込む。
コイツはコイツでさっき一人で面倒臭いことを言うくらいにはレイヴンのことを気にかけているからな。
本来であれば些細なことでも報告する義務があるはずだが、レイヴンを案ずる気持ちは俺の程度とは違うかもしれねぇが、ディーも人並み以上あるのは間違いない。
「本来であれば陛下の御前で隠し事をするなど、国家反逆罪と捉えられてもおかしくはないが。レイヴンの場合は様々な事例が重なり、偶然判明したということもある。それに見方を変えればレイヴンと里長が親子関係であるならば、我々としてもその繋がりを生かした方が国にとっても損にはならないはずだ。逆にレイヴンに不利益なことが課されるのならば、エルフたちも黙ってはいまい。エルフ側もレクシェル殿以外はこの事実を知らないと聞いた」
「言い方がまどろっこしいな。で、黙っててくれるのか?」
相変わらず、前置きが長い。
面倒臭ぇんだよ。
鋭い視線でディーを射抜く。
俺の中では良いか悪いかの二択しかねぇからな。
ディーは暫しの沈黙の後、静かに頷いた。
「俺もお前の意見が正しいのだと思う。報告すべきことではあるが、今ではない、という判断だ。あと……レイヴンにはレイヴンらしく自然体で過ごして欲しい」
「ま、お前の前ではアイツは子猫ちゃんだろうがな。それもレイヴンだし、子どもみたいに泣きじゃくるのも、クソ真面目に振る舞うのも、全部レイヴン。だろ?」
「……そうだな。全くお前のレイヴンに対しての執着には頭が上がらんよ。気持ち悪いをとうに越えているな」
「褒め言葉として受け取っといてやるよ。俺自身、ここまで入れ込む予定じゃなかったんだがなァ。これだけ一緒に過ごしてると情も湧くし、最早それだけじゃねぇってこった」
気持ち悪いってのはお前もだっつーの。
ニィと笑ってやると、何か思うところがあるディーも苦笑する。
まぁ、どうせレイヴンを想う気持ちなら負けないとか、そういうことなんだろうが。
もう、その考えの時点で気持ち悪いんだよなぁ。
「お前、本当に変わったな。昔はもっと自己中心的で周りはどうでもいいという空気を撒き散らしていた。自暴自棄なところも減ったし、鼻につくところは相変わらずだがそれでも昔に比べればマシだ」
「気持ち悪ぃから俺のことまで分析するんじゃねぇよ。逆にお前は昔っから融通の利かない面倒臭ぇ堅物だよな。それでもレイヴンが関わると自分を捻じ曲げるってんだから、お前もそういう意味では変わったのかもな」
「違いない」
いちいち余計なことを言いやがって。
ディーとは腐れ縁だし、俺のことを分かってるところがまた気持ち悪ぃんだよな。
昔の俺も唯一知ってるのはコイツくらいだからな。
腹は立つが気の置けないヤツなのは間違いない。
ディーとの会話が終わる頃、再度扉が叩かれる。
入りますよ? という声と共にウルガーも室内に入って来た。
「テオドール様が先にいるなんて珍しいですね。もしかして団長と話でも? 俺、もう少し席を外しましょうか?」
「気にすんな。俺が言いたいことは言い終わった」
ウルガーにヒラと手を振ると、ディーも頷いて同意する。
「俺も大体言い終わったところだ。後はレイヴンを待つとしよう。暫くは離れ離れになるだろうしな。折角会えた肉親との時間を邪魔したくない」
「レイヴンにとっては唯一の肉親ですし。色々なことを置いておいて、今は甘えていいと思うんですよね。アイツ常に我慢するし、この際だから言いたいことも言えばいいんですよ。きっと受け止めてくれますって。エルフの里長は心が広そうでしたし」
「何百年とか生きてんだろうから、これくらい余裕だろ。父親なんだからよ」
全員思うところは同じなのか、顔を見合わせて笑い合う。
レイヴンが何者であれ、俺も含めて、コイツらは過保護なくらいにレイヴンのことを思ってるんだよな。
そういう意味では信用できるだろうな。
さすが、美形はモテモテだなァ?
ニィと笑んで、レイヴンがいる方角へと顔を自然と動かした。
コイツはコイツでさっき一人で面倒臭いことを言うくらいにはレイヴンのことを気にかけているからな。
本来であれば些細なことでも報告する義務があるはずだが、レイヴンを案ずる気持ちは俺の程度とは違うかもしれねぇが、ディーも人並み以上あるのは間違いない。
「本来であれば陛下の御前で隠し事をするなど、国家反逆罪と捉えられてもおかしくはないが。レイヴンの場合は様々な事例が重なり、偶然判明したということもある。それに見方を変えればレイヴンと里長が親子関係であるならば、我々としてもその繋がりを生かした方が国にとっても損にはならないはずだ。逆にレイヴンに不利益なことが課されるのならば、エルフたちも黙ってはいまい。エルフ側もレクシェル殿以外はこの事実を知らないと聞いた」
「言い方がまどろっこしいな。で、黙っててくれるのか?」
相変わらず、前置きが長い。
面倒臭ぇんだよ。
鋭い視線でディーを射抜く。
俺の中では良いか悪いかの二択しかねぇからな。
ディーは暫しの沈黙の後、静かに頷いた。
「俺もお前の意見が正しいのだと思う。報告すべきことではあるが、今ではない、という判断だ。あと……レイヴンにはレイヴンらしく自然体で過ごして欲しい」
「ま、お前の前ではアイツは子猫ちゃんだろうがな。それもレイヴンだし、子どもみたいに泣きじゃくるのも、クソ真面目に振る舞うのも、全部レイヴン。だろ?」
「……そうだな。全くお前のレイヴンに対しての執着には頭が上がらんよ。気持ち悪いをとうに越えているな」
「褒め言葉として受け取っといてやるよ。俺自身、ここまで入れ込む予定じゃなかったんだがなァ。これだけ一緒に過ごしてると情も湧くし、最早それだけじゃねぇってこった」
気持ち悪いってのはお前もだっつーの。
ニィと笑ってやると、何か思うところがあるディーも苦笑する。
まぁ、どうせレイヴンを想う気持ちなら負けないとか、そういうことなんだろうが。
もう、その考えの時点で気持ち悪いんだよなぁ。
「お前、本当に変わったな。昔はもっと自己中心的で周りはどうでもいいという空気を撒き散らしていた。自暴自棄なところも減ったし、鼻につくところは相変わらずだがそれでも昔に比べればマシだ」
「気持ち悪ぃから俺のことまで分析するんじゃねぇよ。逆にお前は昔っから融通の利かない面倒臭ぇ堅物だよな。それでもレイヴンが関わると自分を捻じ曲げるってんだから、お前もそういう意味では変わったのかもな」
「違いない」
いちいち余計なことを言いやがって。
ディーとは腐れ縁だし、俺のことを分かってるところがまた気持ち悪ぃんだよな。
昔の俺も唯一知ってるのはコイツくらいだからな。
腹は立つが気の置けないヤツなのは間違いない。
ディーとの会話が終わる頃、再度扉が叩かれる。
入りますよ? という声と共にウルガーも室内に入って来た。
「テオドール様が先にいるなんて珍しいですね。もしかして団長と話でも? 俺、もう少し席を外しましょうか?」
「気にすんな。俺が言いたいことは言い終わった」
ウルガーにヒラと手を振ると、ディーも頷いて同意する。
「俺も大体言い終わったところだ。後はレイヴンを待つとしよう。暫くは離れ離れになるだろうしな。折角会えた肉親との時間を邪魔したくない」
「レイヴンにとっては唯一の肉親ですし。色々なことを置いておいて、今は甘えていいと思うんですよね。アイツ常に我慢するし、この際だから言いたいことも言えばいいんですよ。きっと受け止めてくれますって。エルフの里長は心が広そうでしたし」
「何百年とか生きてんだろうから、これくらい余裕だろ。父親なんだからよ」
全員思うところは同じなのか、顔を見合わせて笑い合う。
レイヴンが何者であれ、俺も含めて、コイツらは過保護なくらいにレイヴンのことを思ってるんだよな。
そういう意味では信用できるだろうな。
さすが、美形はモテモテだなァ?
ニィと笑んで、レイヴンがいる方角へと顔を自然と動かした。
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