【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第八章 解こうとした魔塔主と何も知らない弟子とエルフの里の長

213.懐かしい記憶

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「……ぅ……これ、が……?」
「今、幼い頃の記憶を蘇らせた。それと同時に魔力マナとは少々違う力の流れを感じることができると思うのだが」

 レイヴンが目を閉じて、自身でも力の流れを感じ取ろうとする。
 暫くそのままだったが、そのうち自然と目から涙が零れ落ちて、レイヴンのローブを濡らしていく。

「あ……俺、可愛がってもらっていたんですね。ほんの少しの間だったから、朧げだけど。そっか……良かった……お母さんの顔も、少しだけ思い出せました」
「一緒に暮らせていたのは三年も満たなかったと思うが。私の長い人生の中でも一番幸せな時間だった。カナリーは本当に可愛がっていたよ。私も……愛おしかった」

 二人で遠慮し合う空気が流れる。

 俺も散々毒づいたが、レイヴンは元々家族の温もりに憧れてたしな。
 クレインお父さんもレイヴンのことを思っていたっつーことは分かったしな。
 息を吐いて一言呟く。

「しゃあねぇな」

 立ち上がってレイヴンの背中を軽く押す。

 バランスを崩したレイヴンは、そのまま目の前にいたクレインに倒れかかり、クレインも慌てて自然にレイヴンを受け止めた。

「テ、テオっ……あ、その……ありがとう、お父さん……」
「……っ、レイヴン……あぁ……私を父と、呼んでくれるとは……森と精霊に、感謝を……そして、テオドール。君にも感謝を」

 レイヴンが遠慮気味に背中へ手を回すと、クレインも遠慮がちに両腕をレイヴンに回して抱きしめた。

 紆余曲折あっての親子の再会だからな。
 まぁ、結果が良ければ全て良しだろ今回は。

 二人を見ながらニィと笑う。

「気にすんな」

 ヒラと手を振り、両腕を組んで様子を暫く見守る。

 ぎこちないが親子が愛情を確かめあった後、そっと身体を離してレイヴンがクレインを見上げる。
 先程よりかは他人行儀ではない視線にクレインも表情が自然と和らぎ、レイヴンの目元をそっと拭う。

「あ、ええと……そうだ。うまくできるか分かりませんけど、精霊魔法を試しに使ってみたいのですが」
「……そうだな。そんなに難しいことではないと思うが、今は慣れていないから力の強い精霊を呼ぶことはできないだろう。そのうちに認められれば、精霊たちの方から自然と力を貸してくれるようになる。精霊魔法とは、精霊を呼び出して対話し、その精霊の力を借りることが主な召喚魔法の一種だ。慣れていくうちに呼び出していられる時間も長くなるはずだ」
「なるほど……分かりました。やってみます」

 レイヴンはそう言うと、ゆっくりと目を閉じてまずは感覚的に自身の身体の中に流れるいつもと違う力を掴もうとする。

 暴走はなさそうだが、万が一のためにその様子をじっと見つめる。

 レイヴンが何かをつかんで、力に逆らわず願掛けするように優しく力をまとめあげる。

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