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第八章 解こうとした魔塔主と何も知らない弟子とエルフの里の長
211.美しい涙の影には
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湿っぽい話は好きじゃねぇが、仕方なく空気を読んで大人しくする。
視界に入る不安そうなレイヴンを見ていると抱きしめたくなっちまう。
衝動を抑えて、今はレイヴンの手を握り返す。
「その通りだ。エルフの里では人間を毛嫌いし、さらに黒髪を持つものはこの地に呪いを振りまく忌み子だとされてきた。レイヴンだけではなく、過去にも私と同じような者がいて、その時に産まれた子も秘密裏に殺されたと聞いた」
「そんな……だとしたら、俺はどうして助かったんでしょうか……その、お母さんは……」
クレインは美しく鮮やかなセルリアンブルーの瞳から、綺麗な涙を一筋流す。
涙まで絵になるようなところは親子なのかもしれねぇな。
「私が未熟だったばかりに……彼女にも、レイヴンにも、何もしてやれなかった。私は捕まる前に彼女を遠くへ逃したのだが……彼女がどうなったのか……亡くなったということだけは他のエルフに教えてもらうことができたが。私が知っていたのはそこまでで、レイヴンがどうなってしまったのか知ることができなかったのだ。だから、まさか生きていてくれたのだとは……思いもよらなかった。すまない……私にもっと、もっと、力があれば……いなくなってしまった彼女の元へと逝くことすら、私にはできなかった」
涙は流れ続けるが、レイヴンもどうして良いか分からずに困惑して動けない。
真剣に告白しているのは分かるが、俺はどうしても捻くれた解釈になっちまうから何も言えねぇ。
そんなに泣かれてもお父様を抱きしめるわけにもいかねぇし。
こういう重苦しい雰囲気は苦手なんだよ。
開いている片手で頭を掻きむしる。
「で、アンタは。今はどうなんだよ? 里長になったんだろ?」
話を俺が進めないと終わらねぇか?
にしても、得意じゃねぇから勘弁してほしいんだが。
まぁ、いつまでも重苦しい雰囲気って訳にもいかねぇし。
何とかこの空気を打破して進めようと話を振る。
レイヴンは俺を見て安堵したのか微笑を向けてくる。
今の話で笑うところがあったかどうかは分からねぇが、安心したならいいけどよ。
レイヴンはそのまま静かにクレインを見上げる。
「私はここから外へ出ることが許されず、死ぬことも許されず、悲しさを封じ込めてしまおうとヤケになって多くのことを学んだ。その甲斐あって、里長になることができたのだ。漸く少しずつこの里の風習を変えようと悪しき者たちを追放し、排他的考えを排除して人間とも緩やかに交流していこうとしていたところだったのだが……」
「そんな時に里を脅かす者が現れた、ということだったのですね。そこにやってきた人間たちのなかに俺もいたから……」
クレインは静かに頷く。
漸く止まった涙をそのままに、クレインはレイヴンに少しだけ近づく。
悲しげな表情だが、慈愛の表情も含めた優しい目線でレイヴンを見つめる。
視界に入る不安そうなレイヴンを見ていると抱きしめたくなっちまう。
衝動を抑えて、今はレイヴンの手を握り返す。
「その通りだ。エルフの里では人間を毛嫌いし、さらに黒髪を持つものはこの地に呪いを振りまく忌み子だとされてきた。レイヴンだけではなく、過去にも私と同じような者がいて、その時に産まれた子も秘密裏に殺されたと聞いた」
「そんな……だとしたら、俺はどうして助かったんでしょうか……その、お母さんは……」
クレインは美しく鮮やかなセルリアンブルーの瞳から、綺麗な涙を一筋流す。
涙まで絵になるようなところは親子なのかもしれねぇな。
「私が未熟だったばかりに……彼女にも、レイヴンにも、何もしてやれなかった。私は捕まる前に彼女を遠くへ逃したのだが……彼女がどうなったのか……亡くなったということだけは他のエルフに教えてもらうことができたが。私が知っていたのはそこまでで、レイヴンがどうなってしまったのか知ることができなかったのだ。だから、まさか生きていてくれたのだとは……思いもよらなかった。すまない……私にもっと、もっと、力があれば……いなくなってしまった彼女の元へと逝くことすら、私にはできなかった」
涙は流れ続けるが、レイヴンもどうして良いか分からずに困惑して動けない。
真剣に告白しているのは分かるが、俺はどうしても捻くれた解釈になっちまうから何も言えねぇ。
そんなに泣かれてもお父様を抱きしめるわけにもいかねぇし。
こういう重苦しい雰囲気は苦手なんだよ。
開いている片手で頭を掻きむしる。
「で、アンタは。今はどうなんだよ? 里長になったんだろ?」
話を俺が進めないと終わらねぇか?
にしても、得意じゃねぇから勘弁してほしいんだが。
まぁ、いつまでも重苦しい雰囲気って訳にもいかねぇし。
何とかこの空気を打破して進めようと話を振る。
レイヴンは俺を見て安堵したのか微笑を向けてくる。
今の話で笑うところがあったかどうかは分からねぇが、安心したならいいけどよ。
レイヴンはそのまま静かにクレインを見上げる。
「私はここから外へ出ることが許されず、死ぬことも許されず、悲しさを封じ込めてしまおうとヤケになって多くのことを学んだ。その甲斐あって、里長になることができたのだ。漸く少しずつこの里の風習を変えようと悪しき者たちを追放し、排他的考えを排除して人間とも緩やかに交流していこうとしていたところだったのだが……」
「そんな時に里を脅かす者が現れた、ということだったのですね。そこにやってきた人間たちのなかに俺もいたから……」
クレインは静かに頷く。
漸く止まった涙をそのままに、クレインはレイヴンに少しだけ近づく。
悲しげな表情だが、慈愛の表情も含めた優しい目線でレイヴンを見つめる。
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