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第八章 解こうとした魔塔主と何も知らない弟子とエルフの里の長
209.明かされる過去
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クレインがまだ経験も浅く血気盛んだった頃、里の排他的雰囲気と拘束にうんざりし里を抜け出したことがあったらしい。
好奇心旺盛だった故だが、そこを魔物に襲われて重症を負ってしまった。
何とか魔物を倒して彷徨い歩き、力尽きて倒れていたところにたまたま通りがかって助けてくれたのが、後に妻となるカナリーという人間の女性だった。
その人がレイヴンの本当の母親ってことか。
「私とカナリーは種の違いを越えて、次第に愛し合うようになった。カナリーは辺境の村に住んでいたのだが、両親が早くに亡くなってしまい、一人で自給自足でひっそりと暮らしていたらしい。少し離れた森の中にあった家だったから、私がエルフだということも隠しながら暫くは幸せに暮らしていた。そうして、そのうちに……レイヴン、君が産まれたのだ」
「俺が……あなたと、その、母さんとの……子ども? それって、つまり……俺はエルフと人間の血を引いている、ということ、ですか?」
「あぁ。その通りだ」
「それじゃあ、あなたが……俺の……本当の、お父さん……」
レイヴンは言葉をそのまま受け止めて、ゆっくりとクレインを見上げる。
言葉の意味を噛み砕く理性はあっても、急な話にただ、クレインを見つめている。
レイヴンが自然と力を込めて俺の手を握ってくる。
安心させるようにレイヴンの手に自分の手を重ねて握り込む。
「あ……」
「まだ肝心のところが聞けてねぇ。もうちょい、頑張れるか? レイ」
「……はい。大丈夫、です。この先が、きっと聞かなくてはいけないところだから」
レイヴンは俺の言う事に素直に頷く。
素直な時はレイヴンが心を開いている時だが、必死に溢れ出そうになるものを我慢しているのが分かる。
それでも俺を求めてくれるのなら、安心させてやらねぇと。
この先を話そうとするクレインの表情は悲しみに満ちていた。
結果から考えてもこの後の話は胸糞悪い話に決まってるが、辛くても聞いておくべきだ。
どういう経緯でレイヴンが捨てられて一人きりになってしまったのか。
レイヴンも覚悟を決めたのか、静かに話の続きを待つ。
「だが、幸せな日々は続かなかった。里からやってきた悪しき伝統に縛られたエルフの老人たちに、見つかってしまったのだ。私は何とか二人を連れて逃げ出したのだが、力が及ばず……見つかるのも時間の問題だった。レイヴンはエルフの身体的特徴が出ていなかったから、普通の人間として暮らすことさえできれば、カナリーと共に生きられると、そう思った」
「だから……記憶封印と鍵をかけたんですね?」
クレインは静かに頷いて、レイヴンを改めて見遣る。
その視線は深い悲しみの中に慈愛も溢れる優しい視線だ。
話を聞いている限りレイヴンの父親も被害者みたいなもんだが何もできなかったし、何もしてこなかったという事実は変わらねぇ。
もっと必死にレイヴンを探すことだってできたはずだが、それはできなかったわけだからな。
まぁ、そう偉そうに言っても俺も力がない時はただの言いなりだったから人のことも言えねぇよな。
好奇心旺盛だった故だが、そこを魔物に襲われて重症を負ってしまった。
何とか魔物を倒して彷徨い歩き、力尽きて倒れていたところにたまたま通りがかって助けてくれたのが、後に妻となるカナリーという人間の女性だった。
その人がレイヴンの本当の母親ってことか。
「私とカナリーは種の違いを越えて、次第に愛し合うようになった。カナリーは辺境の村に住んでいたのだが、両親が早くに亡くなってしまい、一人で自給自足でひっそりと暮らしていたらしい。少し離れた森の中にあった家だったから、私がエルフだということも隠しながら暫くは幸せに暮らしていた。そうして、そのうちに……レイヴン、君が産まれたのだ」
「俺が……あなたと、その、母さんとの……子ども? それって、つまり……俺はエルフと人間の血を引いている、ということ、ですか?」
「あぁ。その通りだ」
「それじゃあ、あなたが……俺の……本当の、お父さん……」
レイヴンは言葉をそのまま受け止めて、ゆっくりとクレインを見上げる。
言葉の意味を噛み砕く理性はあっても、急な話にただ、クレインを見つめている。
レイヴンが自然と力を込めて俺の手を握ってくる。
安心させるようにレイヴンの手に自分の手を重ねて握り込む。
「あ……」
「まだ肝心のところが聞けてねぇ。もうちょい、頑張れるか? レイ」
「……はい。大丈夫、です。この先が、きっと聞かなくてはいけないところだから」
レイヴンは俺の言う事に素直に頷く。
素直な時はレイヴンが心を開いている時だが、必死に溢れ出そうになるものを我慢しているのが分かる。
それでも俺を求めてくれるのなら、安心させてやらねぇと。
この先を話そうとするクレインの表情は悲しみに満ちていた。
結果から考えてもこの後の話は胸糞悪い話に決まってるが、辛くても聞いておくべきだ。
どういう経緯でレイヴンが捨てられて一人きりになってしまったのか。
レイヴンも覚悟を決めたのか、静かに話の続きを待つ。
「だが、幸せな日々は続かなかった。里からやってきた悪しき伝統に縛られたエルフの老人たちに、見つかってしまったのだ。私は何とか二人を連れて逃げ出したのだが、力が及ばず……見つかるのも時間の問題だった。レイヴンはエルフの身体的特徴が出ていなかったから、普通の人間として暮らすことさえできれば、カナリーと共に生きられると、そう思った」
「だから……記憶封印と鍵をかけたんですね?」
クレインは静かに頷いて、レイヴンを改めて見遣る。
その視線は深い悲しみの中に慈愛も溢れる優しい視線だ。
話を聞いている限りレイヴンの父親も被害者みたいなもんだが何もできなかったし、何もしてこなかったという事実は変わらねぇ。
もっと必死にレイヴンを探すことだってできたはずだが、それはできなかったわけだからな。
まぁ、そう偉そうに言っても俺も力がない時はただの言いなりだったから人のことも言えねぇよな。
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