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第八章 解こうとした魔塔主と何も知らない弟子とエルフの里の長
208.二人の絆
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レイヴンが薄っすらと目を開けたので、自然とそちらに視線が移る。
レイヴンだって何かしらおかしいと思っているのは間違いねぇ。
何か勘付いてるのか不安そうに考え込んでるのが良く分かる。
「気がついたか?」
「あ……はい。ご迷惑を、おかけしました」
起き上がろうとするレイヴンをクレインより先に手を差し伸べて補助をする。
悪いが、まだその役目は渡すわけにはいかねぇんだよな。
伸ばしかけた手はどうして良いものか分からず、クレインはそっとその手を握り込んだ。
レイヴンはベッドの上で何とか起き上がると、俺らの顔を交互に見ながら戸惑った表情を見せた。
「……先程、俺にとっては知らない風景が頭の中を駆け巡ったんです。たぶん、今の俺が知らないだけで、本当は知っているのかも、しれませんが――」
「……それは――」
本人を目の前にして言いづらそうにクレインが顔を背ける。
こんな顔してるレイヴンから顔を背けて逃げるつもりか?
自然と舌打ちしちまった。
別にどうでもいいヤツに食ってかかるほど暇でもねぇが。
やっぱり腹が立つ。
コイツはレイヴンの父親だろ?
どんな事情があったとしても、今は目の前のレイヴンに向き合って説明するべきだ。
仮にも親を名乗りたいっていうならよ。
そんなのはエルフだろうが人間だろうが関係ない。
どんなに辛いことでも、きちんと言ってやったほうがいい。
俺の様子でイラついてるのが分かったらしいレイヴンが、困ったような不安なような、なんとも言えない表情のまま動かなかったが、すがるように俺の腕を掴む。
俺がイライラしても仕方ねぇ。
今はレイヴンを少しでも安心させてやらねぇと。
なるべく優しく笑んで、頭を撫でた。
「……テオ?」
「なぁ、アンタ。俺には言えて、コイツには言えないなんてこと、ねぇよな?」
「……」
「……何か、知っているのなら教えてください。俺、子どもの頃の記憶はあまりよく覚えていないんです。でも、さっき見えた風景の中には、何となく子どもの頃の自分の記憶なんだろうって、そういう風景もありました。薄暗くてぼんやりとしていたから、詳しくは分からなかったけど。里長さんと、何か関係があるのですか……? それに、テオ。テオは何か、聞いたんでしょう?」
レイヴンが恐る恐る言葉を紡ぎ、俺の腕を掴む力を強める。
人前で俺を名前で呼ばないレイヴンが、何度も俺の名前を呼んでいる。
こんなに不安そうにしてるのは珍しいな。
それほどまでにってことなんだろうが。
心配しなくても、お前の側から離れたりしねぇよ。
椅子に座り直して共に話を聞こうという態度を示してやる。
俺らの様子を見たクレインは漸く意を決したのか、レイヴンに向き直る。
「どこから話せばいいのか。まずは、レイヴン。これから話すことは決して許されることではないのだが、君にも知る権利があることだ。どうか話を聞いて欲しい。その後で君を縛り付けるものを解き放とうと思う。ここまで成長した君ならば、きっと大丈夫だろう」
「……分かりました。あの……俺を縛り付けるものとは?」
レイヴンが先に疑問を口にする。
まぁ、そりゃそうだよな。
俺からも説明するべきだし、横から口を挟む。
「記憶封印と鍵だな。俺が外せたら良かったんだがなぁ? 言語が難しいんだよ。それに見たことのない厳重な鍵のせいで、下手に手出しするとレイヴン自体に危険が及ぶ代物だからな。解読が間に合わなかった。俺も未熟で、悪かったな」
「そう、ですか……テオでも難しいから、刺激しないように俺にも言わないでいたんですね。自分では自覚症状がなかったので、気づきませんでした」
「秘法の魔法の一種だ。無理もない」
クレインは俺らを交互に見た後、自分も含めて落ち着くのを見計らってから、重い口を開いてゆっくりと話し始めた。
レイヴンだって何かしらおかしいと思っているのは間違いねぇ。
何か勘付いてるのか不安そうに考え込んでるのが良く分かる。
「気がついたか?」
「あ……はい。ご迷惑を、おかけしました」
起き上がろうとするレイヴンをクレインより先に手を差し伸べて補助をする。
悪いが、まだその役目は渡すわけにはいかねぇんだよな。
伸ばしかけた手はどうして良いものか分からず、クレインはそっとその手を握り込んだ。
レイヴンはベッドの上で何とか起き上がると、俺らの顔を交互に見ながら戸惑った表情を見せた。
「……先程、俺にとっては知らない風景が頭の中を駆け巡ったんです。たぶん、今の俺が知らないだけで、本当は知っているのかも、しれませんが――」
「……それは――」
本人を目の前にして言いづらそうにクレインが顔を背ける。
こんな顔してるレイヴンから顔を背けて逃げるつもりか?
自然と舌打ちしちまった。
別にどうでもいいヤツに食ってかかるほど暇でもねぇが。
やっぱり腹が立つ。
コイツはレイヴンの父親だろ?
どんな事情があったとしても、今は目の前のレイヴンに向き合って説明するべきだ。
仮にも親を名乗りたいっていうならよ。
そんなのはエルフだろうが人間だろうが関係ない。
どんなに辛いことでも、きちんと言ってやったほうがいい。
俺の様子でイラついてるのが分かったらしいレイヴンが、困ったような不安なような、なんとも言えない表情のまま動かなかったが、すがるように俺の腕を掴む。
俺がイライラしても仕方ねぇ。
今はレイヴンを少しでも安心させてやらねぇと。
なるべく優しく笑んで、頭を撫でた。
「……テオ?」
「なぁ、アンタ。俺には言えて、コイツには言えないなんてこと、ねぇよな?」
「……」
「……何か、知っているのなら教えてください。俺、子どもの頃の記憶はあまりよく覚えていないんです。でも、さっき見えた風景の中には、何となく子どもの頃の自分の記憶なんだろうって、そういう風景もありました。薄暗くてぼんやりとしていたから、詳しくは分からなかったけど。里長さんと、何か関係があるのですか……? それに、テオ。テオは何か、聞いたんでしょう?」
レイヴンが恐る恐る言葉を紡ぎ、俺の腕を掴む力を強める。
人前で俺を名前で呼ばないレイヴンが、何度も俺の名前を呼んでいる。
こんなに不安そうにしてるのは珍しいな。
それほどまでにってことなんだろうが。
心配しなくても、お前の側から離れたりしねぇよ。
椅子に座り直して共に話を聞こうという態度を示してやる。
俺らの様子を見たクレインは漸く意を決したのか、レイヴンに向き直る。
「どこから話せばいいのか。まずは、レイヴン。これから話すことは決して許されることではないのだが、君にも知る権利があることだ。どうか話を聞いて欲しい。その後で君を縛り付けるものを解き放とうと思う。ここまで成長した君ならば、きっと大丈夫だろう」
「……分かりました。あの……俺を縛り付けるものとは?」
レイヴンが先に疑問を口にする。
まぁ、そりゃそうだよな。
俺からも説明するべきだし、横から口を挟む。
「記憶封印と鍵だな。俺が外せたら良かったんだがなぁ? 言語が難しいんだよ。それに見たことのない厳重な鍵のせいで、下手に手出しするとレイヴン自体に危険が及ぶ代物だからな。解読が間に合わなかった。俺も未熟で、悪かったな」
「そう、ですか……テオでも難しいから、刺激しないように俺にも言わないでいたんですね。自分では自覚症状がなかったので、気づきませんでした」
「秘法の魔法の一種だ。無理もない」
クレインは俺らを交互に見た後、自分も含めて落ち着くのを見計らってから、重い口を開いてゆっくりと話し始めた。
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