【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第七章 エルフにも動じない魔塔主とたじろぐ弟子(と騎士二人)

203.魔塔主の真骨頂

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 ピキ、ピキ、と最初はゆっくりだったものが、手のひらに凝縮されていくものが大きくなればなるほどに、ビキビキと音を立てて、その場にある全ての物を凍らせる。

 皆が凍りつく前に、レイヴンが自分たちの周りに防御結界を張って、冷気の侵入を阻むがそれでも全ての寒さは防げない。
 吐く息の白さが、温度の低下を実直に伝えてくる。

「――絶対零度アブソリュートゼロ

 力を持って放たれた魔法はその場で弾け、周囲の木々、地面、そして合成獣キメラへとその手を伸ばしていく。

 生命活動を行っていたはずのモノたちは、放たれた冷気で瞬時にして氷の氷像と化す。
 先程まで動いていたのは嘘のように、流れていた時すらも凍り、空間ごと閉じ込める。

 凍るフリーズとは比べものにならない暴力的な冷気は、もう少しで里の結界すらも凍らせてしまうほどの範囲で森を凍らせる。

 よしよし。
 これでも抑えてやったんだから御の字だろ。

 制御する場合は真面目にやらねぇといけないのだけが面倒だが、一気に殲滅するのはスカっとするな。
 ちまちまやるよりは、ぶっ放す方が楽だ。

「こんなモンだな。レイヴン、他に何かいるか?」
「……いいえ。全ての合成獣キメラは凍ったようです。生命活動は周囲にも感じられません」

 鎧の上から身体を擦っていたウルガーも一番前に出てきて辺りを見回し、寒さから皆を守っていたディーもレイヴンに同調して頷く。

「暴力的とまで言える氷……先程の空間の歪みのところまで冷気が伸びている」
「ありがとうございます……! 里に侵入されずに済みました。これもテオドールさんを始め皆さんのおかげです。ありがとうございます」

 レクシェルが礼を述べてくる。

 美人な姉ちゃんに言われる分にはイイ気分だな。
 ニヤと笑んで、ヒラヒラと手を振って答えてやる。

「まぁ、森も凍っちまったがな。暫くは見世物にしておけばいいんじゃね?」
「師匠……見世物って……まぁ、いいです。森が凍ってしまったことについてはどうするか話し合いましょう。一部溶かすならば溶かさないと」
「まあ何にせよ、その里長だかに会わねぇと。だろ?」

 ディーに同意を求めると頷いて肯定する。その話を受けてレクシェルが頷き、そうですね、と、同じく賛成した。

 まあ、そのためにここまで来た訳だしな。
 もてなしてもらわねぇと、タダ働きってのはなぁ。

 普段よりは魔力マナも消耗してるし、俺はいいが他の連中も疲労してるだろうしな。
 ややこしいことはさっさと片付けちまうに限る。
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