【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第七章 エルフにも動じない魔塔主とたじろぐ弟子(と騎士二人)

193.エルフも人間も色々

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「テオ、抑えろ。宿屋には否はない。ここで事を荒立てても何も良いことはないだろう」
「そうですよ! 師匠。こんなのいつもの事じゃないですか。別に俺も気にしてませんから、抑えてください! 綺麗な宿屋を壊すつもりですか!」

 レイヴンも俺の腕を取って必死に訴える。
 
 ったく、本気にするなっての。

 フッと魔力マナを引っ込めて、ニヤリと笑ってディーとレイヴンの身体を腕で囲いこむ。

「悪ぃ悪ぃ」

 と、適当に言って二人をポンポンと叩く。
 ディーを盾にして逃げていたウルガーも安堵の息を吐いている。

 ちゃっかり逃げやがって。
 相変わらずだな、ウルガーの野郎も。

「……あなたもこれで分かったでしょう? 我々の中でも未熟なハーリオンが選ばれたのは、里長の気遣いよ。経験の少ないあなたに与えた任を、あなた自身で壊すつもりなの?」
「……本当のことを言っただけだ。なのにムキになって牙をむくなどと。やはりやったのはこの国の連中なのでは?」

 ひたすら悪態しか吐かないハーリオンに対して盛大な溜め息を吐くと、レクシェルは申し訳ありません、と前置きしてから、思い切りハーリオンの頬を平手で打った。

 パァンっ! と乾いた音が室内に響く。

 おぉ……なかなか怖ぇな。
 しかしまあ、この姉ちゃんは信用しても良さそうだ。

「立場を弁えなさい。これ以上騒ぐのならば、あなたをこれ以上ここにいさせる訳にはいかない。里長にありのままを伝え、この任から外します」
「……っ」

 ひとしきり全員を睨みつけてから、赤くなった頬を抑えてハーリオンは乱暴に扉を開け、出ていった。
 レクシェルはじんと痺れたであろう手を下ろして頭を下げる。

「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。あのような未熟者でも連れて来なければならないほど、私たちは疲弊してしまいました。里長はもう少し人間の皆さんとの交流をしていきたいと思っているのですが、まだあのような考えを持っている者たちも多くいるものですから……」
「くだらないことを言うヤツに、エルフも人間も関係ねぇよ。俺はコイツのことを気に入ってるから、あの生意気な兄ちゃんを威嚇しただけだ。ま、次言ったらどうなるかは分からねぇけど」

 俺の言い分にホッとしたのか、レクシェルがまた頭を下げる。
 姉ちゃんは悪くねぇんだがな。
 やっぱりエルフの中でも色々といるんだろうよ。
 人間と仲良くしたいヤツ、人間を蔑むヤツ。

 その辺りは種族関係ねぇんだろ。
 面倒なヤツらは一層しちまいたくなるもんな。

「少しくらいそういう目に合わないと分からないのです。頭を冷やしたら戻ってくると思うので、先に始めましょう。我々の事情を説明します」

 レクシェルが勧めた奥の部屋へと進み、各々ソファーや椅子へと腰掛けた。
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