【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第六章 我が道を行く魔塔主と献身的に支える弟子(と騎士二人)

189.お騒がせな師弟と見守る騎士二人<テオドール・ウルガー視点>

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「……師匠、従ってください。じゃないと、俺。この後も一緒に行けません。また迷惑をかけてしまうかもしれないし……」
「んな、大げさだろ」
「テオドール様、レイヴンはこういう性格ですから。このままだと自ら裁かれようとして、帰っちゃいますって! 団長も堅苦しく言ってますけど、要は気にしない、と言ってるんですから」

 全員の視線が自分に集まってくる。
 聞こえよがしに舌打ちをしちまった。

 あー……分かったよ! やりゃあいいんだろう、やりゃあ。
 涙を飲んで懐にある煙草の箱を取り出して、燃やしてしまう。

「これでいいだろ? じゃあ、最後に言う事だけ言ったら離れてやるから。少し時間をくれ」
「……分かった」

 騎士の二人が離れると、レイヴンを見下ろし頭を掻きむしる。
 何でこういう流れになるんだか。
 
 俺がそんなに迷惑かけてるか?
 なぁ、レイヴン。

「……別に、お前を困らせたい訳じゃねぇのにな。そんなに嫌だったか?」
「……いいえ。だから、です。俺もテオに、その……触れられると我慢できなくなるかもしれないから……」

 レイヴンが消え入りそうな声で素直に告白してくる。
 それ、今言うのか?

 「こういうところだって!」

 と、小声で訴える。

「なんで、今そういうこと言うんだよ。俺も我慢してんのに。今はツンツンしている時だろうが。……ったく」
「だって、テオ。俺が叫んだり泣いたりして……取り乱したから、怒ったかなって」
「はぁ? 怒ったりしねぇよ。言ってるだろ? お前のこと面倒みるって。そういう生真面目で面倒臭いところも、妙に子どもっぽいところも、全部だって。だから、俺には遠慮しなくていい。お前の好きなようにしていいんだって。何のために俺がいると思ってるんだよ」
「テオ……」

 結局、レイヴンの方から抱きついてきて、ごめんなさい、と呟いた。
 こういうところは素直で可愛いんだよな。
 真面目すぎるのはアレだが、俺に頼ってくる姿を見ていると何でもしてやりたくなる。

「だから、謝るなって。悪いことなんて何もしてねぇんだから」

 ポンポンと頭を撫でる。
 レイヴンは名残惜しそうな表情を見せてからそっと離れ、いつもの表情に戻っちまった。

 まぁ、真面目なレイヴンが嫌いな訳じゃねぇけどよ。
 色々と堅苦しく考えすぎなんだよな。
 俺が奔放すぎるって言われれば、それはそれで仕方ねぇが。

 +++

 少し離れていたところで見守っていた俺たちも、結局父と兄のような気持ちになっていた。
 団長も兄とか言いそうだけど、目線はどう考えてもお父さんな気がする。

「あー……何か、本当に仲良くなりましたよね。レイヴンの態度が本当に柔らかくなったというか、何というか」
「……テオも変わった。やることなすことは相変わらずだが、レイヴンの前だけは人間に見えるな。恐ろしく偉大な魔法使いではなく、ただの嫉妬深くて変態のオヤジだ」
「団長、それ、テオドール様の前で言わないでくださいよ?またややこしくなるから」
「……善処する」

 ドタバタでお騒がせな事態もなんとか丸く収まったし、漸く指定された場所を目指し出発できそうだ。
 ホント、それぞれの個性が強すぎるんだよな……。
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