191 / 483
第六章 我が道を行く魔塔主と献身的に支える弟子(と騎士二人)
188.反省しない魔塔主と謝罪する弟子
しおりを挟む
レイヴンとウルガーも拠点に戻ってきた後は、どうも微妙な空気の中、皆黙々と撤去作業をしていた。
まぁ、どうせ悪いのは俺ってことになってるしどうだっていいんだけどよ。
レイヴンが気にしてるんだよな。
まぁ、もうちょい対策しておけばバレずに済んだかもしれねぇからな。
それだけはやっちまったよなぁ。
「先程は取り乱しまして、大変申し訳ありませんでした!」
衣服を整え出発準備も整ったところで、レイヴンがディーの前で深々と頭を下げる。
レイヴンのことだ。
遊びではないこの道中にいくら俺が先に手を出してきたからとはいっても流されてはいけなかったし、それを律することができなかった自分に恥じてこの命を下ろされても仕方がない。
とか何とか、思ってんだろうな。
別に見張りが追ってきて王命に背いたりしないかと見張っている訳でもねぇし、目的さえ果たせばぶっちゃけ過程はどうだっていいと思うが。
そもそも俺が出張るってことはそういうことだと、陛下は理解している。
俺が動くのは自分が大切に思う者の為だけだ。
その条件で魔塔主も引き受けているし、それがひいては国のためになるのならば構わないと言ったのは陛下だ。
っていう話を何回しても、レイヴンには届かない訳だが。
「レイヴン……」
「私は、如何なる処分でも受ける覚悟はできています。勅命の途中にあのようなことをすべきではないと頭では分かっていたはずなのに、補佐官としてお恥ずかしい限りです」
「全く、相変わらず真面目すぎるんだよな。レイヴンは」
「テオドール様! 事態がややこしくなるから、黙っててください!」
チッ。
これだから頭の固い連中は。
レイヴンもどうしてそういう風になっちまったんだか。
ウルガーがやたらと訴えてくるから静かにしてやるけどよ。
レイヴンは頭を下げたままあげようともしない。
責任を感じてるってか。
だから、誰もそんなこと思ってねぇのに。
何なら俺が罰でもなんでも受けてやるってのによ。
自分を責め続けているレイヴンを見て、ウルガーがディーを見て声をかける。
「団長、何か言ってやらないと」
「そうだな」
仕方なく黙って事の成り行きを見守ることにして、一歩下がる。
レイヴンの両肩に優しく手を置いたディーが、レイヴンの身体を起こし、少し屈んでレイヴンと同じ目線になると静かに口を開く。
見てるだけで腹が立ってくるが、見ない振りしてやるからさっさと終わらせろってんだよ。
「レイヴン、確かに勅命を受けた我々は国を背負って今も動いている。これが軍であれば懲罰もあり得たのかもしれないが。俺個人としては、懲罰には当たらないと考えている。まず、第一にレイヴンは本当に水浴びをしていただけだということ。第二に確かに補佐官として魔塔主の行いを正すように動くべきではあるが、レイヴンのことだ。テオドールを跳ね除けようとしたのだろう?」
「それは……」
「ならば、レイヴンに否はないと考える。よって、懲罰を下すのならば、この男だ」
ディーが俺の腕を掴んでレイヴンの目の前に突き出す。
あのなぁ! 馬鹿力で掴むなっての!
「痛ぇな! なんだよ、いきなり」
「レイヴン、コイツの煙草は今すぐ全て燃やしてしまえ。後、次の目的地に着くまでレイヴンに接近することを禁ずる」
は? いや何で俺の煙草が関係あるんだよ!
横暴だろ、横暴!
「な――おい、ディー! お前、ふざけるのも大概に……」
不快感を顕にしてディーを睨みつけ、声を上げた。
勢いよく反抗してやろうと声を上げてるのに俺を止めるように、レイヴンが俺の両腕を掴む。
まぁ、どうせ悪いのは俺ってことになってるしどうだっていいんだけどよ。
レイヴンが気にしてるんだよな。
まぁ、もうちょい対策しておけばバレずに済んだかもしれねぇからな。
それだけはやっちまったよなぁ。
「先程は取り乱しまして、大変申し訳ありませんでした!」
衣服を整え出発準備も整ったところで、レイヴンがディーの前で深々と頭を下げる。
レイヴンのことだ。
遊びではないこの道中にいくら俺が先に手を出してきたからとはいっても流されてはいけなかったし、それを律することができなかった自分に恥じてこの命を下ろされても仕方がない。
とか何とか、思ってんだろうな。
別に見張りが追ってきて王命に背いたりしないかと見張っている訳でもねぇし、目的さえ果たせばぶっちゃけ過程はどうだっていいと思うが。
そもそも俺が出張るってことはそういうことだと、陛下は理解している。
俺が動くのは自分が大切に思う者の為だけだ。
その条件で魔塔主も引き受けているし、それがひいては国のためになるのならば構わないと言ったのは陛下だ。
っていう話を何回しても、レイヴンには届かない訳だが。
「レイヴン……」
「私は、如何なる処分でも受ける覚悟はできています。勅命の途中にあのようなことをすべきではないと頭では分かっていたはずなのに、補佐官としてお恥ずかしい限りです」
「全く、相変わらず真面目すぎるんだよな。レイヴンは」
「テオドール様! 事態がややこしくなるから、黙っててください!」
チッ。
これだから頭の固い連中は。
レイヴンもどうしてそういう風になっちまったんだか。
ウルガーがやたらと訴えてくるから静かにしてやるけどよ。
レイヴンは頭を下げたままあげようともしない。
責任を感じてるってか。
だから、誰もそんなこと思ってねぇのに。
何なら俺が罰でもなんでも受けてやるってのによ。
自分を責め続けているレイヴンを見て、ウルガーがディーを見て声をかける。
「団長、何か言ってやらないと」
「そうだな」
仕方なく黙って事の成り行きを見守ることにして、一歩下がる。
レイヴンの両肩に優しく手を置いたディーが、レイヴンの身体を起こし、少し屈んでレイヴンと同じ目線になると静かに口を開く。
見てるだけで腹が立ってくるが、見ない振りしてやるからさっさと終わらせろってんだよ。
「レイヴン、確かに勅命を受けた我々は国を背負って今も動いている。これが軍であれば懲罰もあり得たのかもしれないが。俺個人としては、懲罰には当たらないと考えている。まず、第一にレイヴンは本当に水浴びをしていただけだということ。第二に確かに補佐官として魔塔主の行いを正すように動くべきではあるが、レイヴンのことだ。テオドールを跳ね除けようとしたのだろう?」
「それは……」
「ならば、レイヴンに否はないと考える。よって、懲罰を下すのならば、この男だ」
ディーが俺の腕を掴んでレイヴンの目の前に突き出す。
あのなぁ! 馬鹿力で掴むなっての!
「痛ぇな! なんだよ、いきなり」
「レイヴン、コイツの煙草は今すぐ全て燃やしてしまえ。後、次の目的地に着くまでレイヴンに接近することを禁ずる」
は? いや何で俺の煙草が関係あるんだよ!
横暴だろ、横暴!
「な――おい、ディー! お前、ふざけるのも大概に……」
不快感を顕にしてディーを睨みつけ、声を上げた。
勢いよく反抗してやろうと声を上げてるのに俺を止めるように、レイヴンが俺の両腕を掴む。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜
ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。
恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。
※猫と話せる店主等、特殊設定あり
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる