【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第六章 我が道を行く魔塔主と献身的に支える弟子(と騎士二人)

159.普段と違う反応

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 レイヴンは俺が大人しくタオルを持って待っていたことを偉い偉いと適当に褒めてきた。

 それ褒めてんのか? 褒めるならもっとちゃんと褒めて欲しいもんだ。

 別に気にしてる訳じゃねぇし、こういう戯れも悪くはねぇか。
 そう思えば楽しくなってきて、レイヴンの身体をわしゃわしゃ拭いてやる。

「も、もうちょっと丁寧に拭けませんか? 髪の毛がまたグシャグシャになりそうで……」
「注文が細かいんだよなぁ。いいじゃねぇか、拭いてやってるんだし」
「自分で拭くつもりで取ってくださいとお願いしたんですよ! ほら、テオもびしょ濡れなんですから……」

 俺の手からタオルを奪い、今度はレイヴンが身体を拭いていく。
 俺とレイヴンだと結構身長差があるんだよな。
 背伸びをして俺を拭こうとしたレイヴンを、そのまま脇の下に手を入れてヒョイと持ち上げる。

「テオ!? いきなり持ち上げられたら驚くじゃないですか! っていうか、逆にやりづらいんですけど」
「ん? いや、高い高ーい?」
「……何してくれてんですかこの人は……」
「ザッとでいいだろ。また風呂入るかもしれねぇし」
「は? またって何を言って……まさか……テオ。明日、情報収集するって言いましたよね? 俺たち何をしに来ましたか? それでなくても、何か付き合ってやらされて……」

 レイヴンが大好きもとい、いつも文句を言い出すことが確定している、人の悪い笑みを浮かべてやってから手をパッと離す。
 そのままレイヴンの身体を抱きとめると、鼻歌混じりで抱えたままベッドの上へと転がした。

「俺があの程度で満足するとでも? 甘いな……甘いなァ? レイちゃん。夜はこれからだ」
「いや、隣に二人、いるんですよ!? ただでさえ色々と疑われているのに、そんなことできるわけ……あぁぁ……結界を張り巡らせるのが早い……」

 自分の上に覆いかぶさった俺の爽やかな笑顔を見て、レイヴンの顔が自然と引きつる。

 失礼だよなぁ? こんなに微笑みかけてやってんのに。 

 防音結界は、俺の可愛いレイヴンの声をアイツらに聞かせる訳にはいかねぇからな。
 そりゃあ展開するだろ。
 これでどんなに甘い声をあげても問題ねぇし。

 こんなの適当に展開してもイケる。

 髪からポタポタと雫が垂れてこようが関係ねぇ。
 今はレイヴンをどう喰ってやろうかしか考えてない。

 レイヴンも俺が片手で防音結界を張り巡らせたことは理解したようだが、どう逃れようと必死で思考を巡らせるってとこか。

「せ、せめて髪の毛は乾かしたほうがいいのでは……?」
「確かに、コレは鬱陶しいか。じゃあ……コレで」

 レイヴンの必死の言い訳は可愛いんだがなァ?
 
 サラリと呪文を紡ぎ、凝縮させた温風魔法でお互いの身体をさっと乾かしてしまう。

「こんなところで魔法の便利づかいを……」
「これから後は、また後で考えるとして。そろそろ観念してもらおうか?」

 俺の長い髪がレイヴンの身体を擽るくらいに距離が縮まる。
 
 普段はほぼ面倒臭がって髪を結んだままでヤってるしな。
 雰囲気は違うかもしれねぇな。

 そんなに強引にしてるつもりもねぇが、レイヴンが雰囲気に気圧されてんのか、珍しく抵抗してこねぇな。
 文句すら言ってこないのは珍しい。

「どうした? いつもならこの辺りでギャンギャン言ってくるのに。しおらしいじゃねぇか」
「え? あ、ええと……そう、ですね。テオを止めたいのに、なんだか止められない……」
「そんなに見つめてくるとは、ますます珍しいな。いつもと違うことあったかぁ?」
「……俺から言ったりしませんよ? それにこの状況からひっくり返すには、俺も全力で魔法を叩き込まないと無理だろうし、そんなことしたら色々と迷惑ですから」

 諦めたように苦笑するレイヴンの頬を撫で、レイヴンが普段よりおとなしい理由を考えてみる。

 勿論、隣の奴らを気にしてということもあるし、先程から煩いほどに勅命だと言っているが。
 俺を見ている目つきが珍しいものを見ているような、そんな感じがする。
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