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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子
135.一緒に外食を
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「爺さん、言い忘れたことがあるんだが」
「……お前さんの言いたいことは何となく分かる。あの子の魔石は儂が選んだ中でも最高級のものにしてやる。だから安心するんじゃな。心配せんでも、頼まれたからにはあの子の手助けになって、お前さんに損はさせんものにするつもりじゃ」
チラと俺を見遣る表情に、ニヤリと笑みを返す。
「アンタのことは俺も信用はしてるつもりだしな。俺の魔石は魔力回復系にでもしてもらうつもりだったが。それも俺の持ってる分、全回復ぐらいが理想なんだよなぁ。いざという時にぶっ放すように」
「無茶を言いよる。期待せんで待っておれ。全く、そのブレスレットの何倍もする値段の魔石を選びよる。コッチは商売じゃから構わんが。ほれ、レイヴンを待たせてるんじゃろ? さっさといかんか」
「だな。じゃあ頼んだぜ爺さん」
ヒラと手を振ると店を後にする。
+++
見送るクソルキもやれやれと息を吐く。
「魔塔主も弟子を随分可愛がっておるな。負けておられんわい。儂の名にかけて良い品を用意してやるとするかのう」
髭を楽しげにひと撫ですると、クソルキも店の奥へと引っこんでいった。
+++
「何かウロウロしてたら腹減ったな。どうせなら美人を見ながら酒でも飲みたい気分だな」
「師匠、それいつもじゃないですか。お腹が空いたというところだけは同意しますけどね。折角ですしハリシャさんの店に行きましょうか」
「何だ、お前から酒の許可が出るのは珍しいな」
「お酒を飲んでいいって言った訳じゃないですが、ハリシャさんのご飯は美味しいので」
意見が一致したので、馴染みのハリシャの酒場へと向かって歩き出す。
「そういやずっと袋持たせてたな。重いだろ? 持ってやる」
「いえ、別に大したことは。それにこういうのも補佐官の仕事のうち……って、そんなに無理矢理奪い取らなくても」
レイヴンが話している途中で強引に提げていた袋を取って、肩に掛ける。
何か言いたそうな顔してるが、そんなに俺が親切なことをすると怪しいか?
レイヴンにはいつも親切なはずだがな。
言いたいことを言わずに、レイヴンが苦笑する。
「では、お言葉に甘えます。……酒場は今日も盛況みたいですね」
扉の前から笑い声や話し声が漏れ出している。
レイヴンが先に扉を潜り、俺もすぐ後ろからついていく。
すでに酒を飲んでご機嫌な野郎どもが目に留まるが、席はかろうじて開いているのが見えた。
「飲んだくればっかで見ても面白くも何ともねぇな。女将の近くに行こうぜ? やっぱカウンターだよな」
ズンズンとカウンターへと近づいていくと、気づいた女将が視線を合わせる。
声を出す前にレイヴンと一緒なのに気がついた女将が目を丸くした。
「今日はレイヴンも一緒かい? 補佐官様付きなら大歓迎だよ。さあ、座んな」
「んだよ、そのあからさまな贔屓は。俺だっていつも寄って金落としてんじゃねぇか」
「こんばんは、ハリシャさん。いつも師匠がご迷惑をおかけしてすみません。お腹が空いたのでご飯を食べに来ました」
「いつも飲んだくれるわ、女の子の尻は触るわ……これで金すら払わないんじゃお役人様を呼んで追い出してるよ!」
ピシャリと言い切る女将には敵わねぇな。
降参と、両手を挙げて大人しく席に着く。
レイヴンは注文を取りに来たオネェちゃんと顔を合わせてニコと微笑む。
でたでた。
レイヴンはホントこういうところだよな。
コイツ、誰にでもこういう顔するんだよ。
「……お前さんの言いたいことは何となく分かる。あの子の魔石は儂が選んだ中でも最高級のものにしてやる。だから安心するんじゃな。心配せんでも、頼まれたからにはあの子の手助けになって、お前さんに損はさせんものにするつもりじゃ」
チラと俺を見遣る表情に、ニヤリと笑みを返す。
「アンタのことは俺も信用はしてるつもりだしな。俺の魔石は魔力回復系にでもしてもらうつもりだったが。それも俺の持ってる分、全回復ぐらいが理想なんだよなぁ。いざという時にぶっ放すように」
「無茶を言いよる。期待せんで待っておれ。全く、そのブレスレットの何倍もする値段の魔石を選びよる。コッチは商売じゃから構わんが。ほれ、レイヴンを待たせてるんじゃろ? さっさといかんか」
「だな。じゃあ頼んだぜ爺さん」
ヒラと手を振ると店を後にする。
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見送るクソルキもやれやれと息を吐く。
「魔塔主も弟子を随分可愛がっておるな。負けておられんわい。儂の名にかけて良い品を用意してやるとするかのう」
髭を楽しげにひと撫ですると、クソルキも店の奥へと引っこんでいった。
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「何かウロウロしてたら腹減ったな。どうせなら美人を見ながら酒でも飲みたい気分だな」
「師匠、それいつもじゃないですか。お腹が空いたというところだけは同意しますけどね。折角ですしハリシャさんの店に行きましょうか」
「何だ、お前から酒の許可が出るのは珍しいな」
「お酒を飲んでいいって言った訳じゃないですが、ハリシャさんのご飯は美味しいので」
意見が一致したので、馴染みのハリシャの酒場へと向かって歩き出す。
「そういやずっと袋持たせてたな。重いだろ? 持ってやる」
「いえ、別に大したことは。それにこういうのも補佐官の仕事のうち……って、そんなに無理矢理奪い取らなくても」
レイヴンが話している途中で強引に提げていた袋を取って、肩に掛ける。
何か言いたそうな顔してるが、そんなに俺が親切なことをすると怪しいか?
レイヴンにはいつも親切なはずだがな。
言いたいことを言わずに、レイヴンが苦笑する。
「では、お言葉に甘えます。……酒場は今日も盛況みたいですね」
扉の前から笑い声や話し声が漏れ出している。
レイヴンが先に扉を潜り、俺もすぐ後ろからついていく。
すでに酒を飲んでご機嫌な野郎どもが目に留まるが、席はかろうじて開いているのが見えた。
「飲んだくればっかで見ても面白くも何ともねぇな。女将の近くに行こうぜ? やっぱカウンターだよな」
ズンズンとカウンターへと近づいていくと、気づいた女将が視線を合わせる。
声を出す前にレイヴンと一緒なのに気がついた女将が目を丸くした。
「今日はレイヴンも一緒かい? 補佐官様付きなら大歓迎だよ。さあ、座んな」
「んだよ、そのあからさまな贔屓は。俺だっていつも寄って金落としてんじゃねぇか」
「こんばんは、ハリシャさん。いつも師匠がご迷惑をおかけしてすみません。お腹が空いたのでご飯を食べに来ました」
「いつも飲んだくれるわ、女の子の尻は触るわ……これで金すら払わないんじゃお役人様を呼んで追い出してるよ!」
ピシャリと言い切る女将には敵わねぇな。
降参と、両手を挙げて大人しく席に着く。
レイヴンは注文を取りに来たオネェちゃんと顔を合わせてニコと微笑む。
でたでた。
レイヴンはホントこういうところだよな。
コイツ、誰にでもこういう顔するんだよ。
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