【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子

131.待っていた言葉

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 レイヴンの前髪を掻き上げて様子を見るが、何故かギュッと目が閉じられている。
 意識飛んでるか? そこまでじゃなさそうだったんだが。

「レイ? ……おい、レイ?」
「はぁっ、はぁっ……ん、……」

 グッタリとベッドに横たわったまま息を逃すばかりで反応がない。
 仕方なく自身を引き抜いてレイヴンの瞼に唇を落とすと、固く閉じられていた瞳が少しだけ反応して俺を映した。

「……っつい、あっ、ついから……離し、て?」
「そりゃぁ、ヤることヤったら熱いよなぁ。でもほら、余韻ってヤツが……」
「……いらない。もう、疲れた。喉、痛い……」
「お前なぁ……終わった途端に素に戻るなよ……」

 横たわったまま何故か不機嫌そうなレイヴンを残し、仕方なく水を取りにいく。
 水差しごと持ってくると、レイヴンの身体を起こして水を飲ませようとコップを近づける。

「ン……はぁ……」
「で、涼しくなったか?」
「……少し、は。もう、テオに付き合うの、疲れる……」
「年寄り臭ぇな、ったく」

 レイヴンの口調は不貞腐れているが水で喉を潤してもその顔は火照ったままで、情事の後が色濃く残っている。
 俺がじっと見つめていることに気付くと、何? と首を傾げる。

「これだけ乱れてんのに、まぁだ素直にならないのかよ。所有印もたくさんついてるってのに。別にエロエロじゃなくてもいいけどよ、こう、もうちょっと可愛げある態度とか……」
「……何ですか、それ……いつも、跡つけないでって、言ってるのに。絶対に、付けるのは誰でしょうね?」

 レイヴンも静かに俺を見つめてから息を吐き出し、諦めたように胸に顔を預けてくる。
 暫く俺の胸の鼓動を聞くように寄りかかってじっとしていたが、急にポツリと言葉を紡ぎ出す。

「意地悪だし、すぐ触ってくるし、やめてって言ってもやめてくれないけど。それでもテオじゃないと……嫌だから――」

 視線を合わせて、最後の一言を何とか絞り出そうとするレイヴンを、茶化さずに静かに見つめる。

「……貴方を、愛して、ます。テオ……」

 その一言で耳まで赤くしているレイヴンの頬に手を当てた。
 また随分と情熱的な告白じゃねぇか。
 嬉しいねぇ。

 今、俺も素直に嬉しそうな顔してんだろうな。
 言ってから困惑しているレイヴンに顔を寄せる。

 こう言わせるのにここまで苦労したのは初めてだな。

 それだけに俺への気持ちがこもっているのが分かるし、レイヴンにとっちゃ自分の気持ちを見つめて、認めるまでが長かっっただろうから、大きな一歩だよな。

 フ、と、口元が緩むのが分かる。
 ホント、可愛いヤツだ。
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