【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子

122.少しは真面目に

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 レイヴンが着替え終えた後、共に部屋から出る。

 辺りに人気がないことを念入りに確認しているのがらしくて笑えるが、そんなに気になるなら別に認識妨害かけりゃ話は早いんだよなぁ?
 別に提案するほどのことでもねぇが。
 
 レイヴンは何事もなかったかのように振る舞ってるが、あれくらいでもまぁまぁ感じてたし、ほわほわとしてんのか緩く首を振っている。

 どこでも、いつでも、感じてくれて嬉しい限りだがな。

「なんだぁ? 怠そうにしてんな」
「……誰のせいですか、誰の。そんなことより、魔塔に戻りますよ? 師匠までこちらにいるのでは、誰に報告していいか分からなくなっているでしょうからね」

 文句だらけのいつも通りのレイヴンだ。
 二人で神殿の外へと出たところで定番のため息を吐くレイヴンの腰を抱えて、いつもの詠唱をし移動する。

「よっと。やっぱ、神殿は空気悪ぃな。この淀んだ感じが落ち着くわー」
「また飛んでるし……これ、慣れてない人だと絶対酔うと思う……。しかも、淀んだ空気が落ち着くってなんですか……煙草で煙い感じが? とりあえず、執務室に行きましょう。師匠の部屋にいたら報告が聞けませんし……」

 レイヴンがまた文句を言って一歩踏み出すとふらっとして俺に軽く寄りかかる。
 珍しいな、移動テレポート酔いするとか。

 慌てて体勢を整えようとするレイヴンの膝裏に手を入れて、そのまま抱き上げる。

「いや、歩けますからね? 何で抱っこしてるんですか……」
移動テレポート酔いしたって言うからよ。親切心?」
「いらねぇー」
「ウチの補佐官が悪い子になってる! 誰のせいだよ」
「……師匠のせいでしょ、師匠の」

 何で口調が悪くなってんだよ。
 それは俺に似なくていいっての。

 くだらないやり取りを楽しんでいると、魔塔主執務室の前まで辿り着く。
 ずっとそわそわしていたレイヴンがホッと息を吐き出す。

 そんなに恥ずかしがらなくてもいいのによ。
 ホント人目ばっか気にするよなァ。

「魔道具からも異常は検知されてませんし、今のところは何事も起こっていないようですね。見張り担当からも異常なしの報告のみですし、良かったです」

 室内に並べられた映像転送用の魔道具は見張り役が持っている魔道具と連動し、同じ映像が映し出される。
 高性能な魔道具だが、動かすためには質の良い魔石が何個も必要で普通に使うと燃費が悪い。

 こういうのを予算がどうとかケチるから面倒なんだよ。
 魔石が嫌っつーなら、仕方ねぇから俺の魔力マナを込めるって言っても、勝手にするなとかぬかしやがる。
 俺の力をどう使おうと勝手だって言っても、魔塔主の力も国のものだからとかなんとか、一部の文官どもが煩すぎてどうでも良くなったから、結局放置した。

 こんなくだらねぇことを陛下に言うのも面倒だしな。
 貸しだと思われたらそっちの方が厄介だ。

 そんなんだから使用するのは重要な時のみに限られて、幾つもの許可を取らないと使用もできない。
 こういうしがらみはクソくらえだ。

 ま、見えないところで好き勝手してるんだけどな。
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