【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子

106.安心したあとは

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 落ち着かない顔をしているレイヴンがそわそわしながら胸の中から顔を出す。

「な、なんですかそれ……っていうか、ホントにそれでいいんですか? 俺は特に……元々頼れる人もいないので、ある意味ありがたいですけど……」
「心配性すぎるだろ。あと気にしてんのは……なんだ? 子どもが産めねぇとか、俺の家とか? そんなところか」

 余計なことを考えているのは知ってたしな。
 ここできちんと説明して納得させた方がいいだろう。
 じっと見つめてくるレイヴンの話を聞こうと少しだけ身体を離して見つめ返す。

「……未だにこれも信じてませんけど、師匠は貴族でしかも国を支える柱と言われるバダンテール家の長男、ですよね。そんな人がこの国では補佐官という位以外、身分もない俺のことを面倒見るって……」
「それこそ今更すぎるだろ。自分のケツは自分で拭けるから問題ねぇよ。家の問題だって言うなら、そもそも家を出て魔法使いやってる時点でダメだろ」

 予想通りすぎることを言われて、鼻で笑い飛ばす。
 不安そうにしていたレイヴンも不安が掻き消えていった様子で、安心して笑い返す。

「……ですよねー。それこそ、俺が師匠の弟子になる前からの話でしたね」
「問題があろうが、それこそ力でねじ伏せてるようなもんだろ。陛下のお墨付きっていう後ろ盾があれば最強じゃねぇか」
「ま、師匠ですもんね。知ってましたけど、一応?」
「いちいち細かいことを気にし過ぎだ。そうと決まれば、今日は余計にサボらねぇと」

 そう言うが早く、レイヴンを抱き枕にして一眠りしようとする。
 レイヴンも、なんだかなぁ……と呟くだけで、恥ずかしさも相まってるのか大人しくなる。

「告白って、こう……場所とか、タイミングとか。キッチリとしてから言うものだと思ってたんですけど。こんな形で言わされるとは思いませんでした」
「別に気にしなくていいだろ。そういうのがお好みって言うなら、今度改めてやってやろうか?」
「……期待せずに待ちます。何か、師匠にそういうのやらせると恐ろしいので」

 苦笑して、今日はもう諦めたとばかりにレイヴンが目を瞑る。
 俺の胸に耳を当てて鼓動を聞いていると安心したのか、レイヴンの方が先に寝息を立て始めた。

「なんだよ、結局お前も眠かったのか? まぁいいや。しかし……素直になるのが思ったより早かったな。まぁ……素直になっても中身が変わる訳じゃねぇからなぁ」

 宣言通り、入室禁止と言わんばかりの結界を扉の前で展開すると、一日サボるためにまずは一眠りすることにする。

 ここまではうだうだしてたが、結局俺に対しての好意は素直だったってことだよな。
 俺がどう思っているのか、少しは伝わったみたいだし。
 まぁ、これから嫌というほど知っていくだろうからいいか。

 安心しきって眠るレイヴンの体温を感じながら、俺も目を閉じた。
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