【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子

105.弟子の本心は

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「師匠みたいに自堕落でどうしようもない大人になりたい訳じゃなかったですけど、魔法使いとしての腕は尊敬すべきものですし、憧れだったのは事実です」
「……それで?」
「何をされても、それは一番近くにいる弟子だからってずっと言い聞かせてましたけど。何度もされるうちに、それだけじゃ何かモヤモヤするっていうか……。だから、距離をおこうと思ったんですけど……」

 言い淀むレイヴンに発破をかけるように、それでもいつもよりはやんわりと煽る。

「……ツッコミたくねぇけど、長くね? 核心に辿り着くまでに寝落ちするかもしれねぇ」
「……むしろ寝落ちしてください。聞かれたくないし」

 レイヴンが視線を彷徨わせる様子も可愛いと思う自分が終わってんな。
 なんかケツが痒くなりそうだから一気に言ってほしいんだがなぁ?

「だから、こういうこと。外で、俺の知らない人としないで欲しいって思う自分がいて。何をされても義務感だって思い込んで、考えるのを放棄してましたけど。あー……こういうの、本当に苦手だ。求めたら、それこそ逃げられそうだし……」

 こういう話になるとやたらと不器用で伝えることすらなかなかできないレイヴンに、肩をポンと叩いて落ち着かせる。
 全く、自分で何言ってるのか分かってないって感じが丸分かりなんだよな。

「それ、先に似たようなこと言っただろ? オッサンの執着よりはマシだろが」
「まぁ……そうですね」

 あっさり流すんじゃねぇっての。
 俺が気持ち悪いヤツみたいじゃねぇか。

「ったく、何で自虐で助け舟出してんだよ……ほら、続き」

 俺と顔を合わせることにも戸惑っていたが、意を決したレイヴンが残った思いを一気に吐き出していく。

「俺、師匠のこと。好き……みたいです。師匠としてだけじゃなくて、個人的に」

 なんだよ、個人的にって。
 好きならちゃんと飛び込んでこいってのになぁ?
 そこで何で変な言い回しするんだか。

「個人的に、ねぇ? それなら、いつもの感じで呼んでくれよ。なぁ、レイ」

 優しく頬に触れると、レイヴンはその手に自身の手を重ね合わせる。

「……テオが、好きです。今も自分の気持ちを認めるのが不安だけど……貴方の側で成長して、貴方の側で立っていることが相応しいって言われるように、なりたいです。だから、これからも側にいても……いい、ですよね?」

 ったく、そこも真面目かよ。
 どこまでもイイコちゃんなんだよな、レイヴンは。

 緊張した面持ちの告白に、フッと笑ってクシャクシャと頭を撫で回す。
 いつもの文句が飛び出る前に自分の懐へと閉じ込めてしまい、もう一度囁きかける。

「……イイコだ。お前の面倒は最後まで見てやるから、安心しろよ?」

 ここまで言わせたらコッチのもんだ。
 ちゃんと自分の気持ちを言葉にした訳だし、そこまで意固地にならねぇだろ。

 結局浮かれてるのは俺の方だし、参るよな。
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