【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第四章 行動に移す魔塔主と色々認めたくない弟子

97.<Theo side>いつもと違う雰囲気の理由

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風呂に入ったが、気分は晴れない。
別に精神的にとか、そういうんじゃねぇが。

なんつーか、ああいうことした後に、レイヴンに触れていいのか?
とか、考えちまう。

そういうことは腐るほどやってきてるし、んなこと気にしないですでに散々触ってるし、気にするのも柄じゃねぇんだが。

適当に煙草を吹かしながら、思案する。

真実をそのまま言えば、レイヴンがどう反応するのか。

動揺するとしても俺のしたことならば文句は言わずに受け入れるのは間違いない。
ただ、内心は色々考えて悩むのが想像できる。

俺を軽蔑するのか? と。
ふと、考える。

「ハッ……嫌われたくねぇって? 今更だよな」

自分で行き着いた答えを呟くと、皮肉めいた笑いが漏れた。
処断したことより、レイヴンに嫌われたくないとか。

ったく、随分と弱々しいこと考えてんじゃねぇか。
そんな歳でもねぇのに。

灰皿が大分埋まってきたところで扉を叩く音がする。

「師匠、戻りました。開けますよ?」
「……おう」

噂をすればレイヴンが部屋までやってきた。
俺は風呂上がりのガウン姿のままで、片手には煙草、ソファーにドカリと座って足を組んでるやる気のない姿だ。

分かりやすくレイヴンが顔を顰めた。

「……風呂上がりに吸ってたらまた臭いが付くのに。しかも結構吸ってません? 煙いなぁもう……」

注意されても、煙を退かすように手を振る姿を見ても、聞く耳持たずにそのまま煙を燻らせる。

「伝えることもありますし、煙草を一度消してくれませんか? 喋りづらいので」
「相変わらず、固いよなぁー。レイちゃんは。報告はココで聞くから、コッチ来い」
「はぁ……。真面目に聞いて下さいよ?」

なんやかんや考えても、レイヴンが目の前にいると構いたくなるし触れたくなる。
さっきまで妙に感傷的になってたっていうのに、大人しく近寄るレイヴンを引っ張り込んで隣に座らせた。

「そんなに引っ張らなくても座りますよ。それと聖女様から預かった書類がありますので、しっかりと目を通してくださいね」
「そこに置いとけ」

顎で側の机を指し示すと、レイヴンが睨んでくる。

「見るから」

一言だけ言って、大分短くなっていた煙草を灰皿に押し付けた。

「今日は衣装合わせと本番の祭儀の打ち合わせをしてきました。俺は聖女様の補佐をしますので……」

レイヴンが持ってきた書類に目を通すが、真面目な話は退屈で書類の内容も頭に入ってこない。
諦めて煙草に手を伸ばす。

「ちょっと、師匠! 聞いてますか? そして、師匠は裏方ですからタイミングが大事ですからね? 適当にやらないでくださいよ?」

煙草をもぎ取られると、縋るものもなくなる。
顔で不満を訴えたがレイヴンは取り合ってくれそうにない。

身体を倒してレイヴンの膝の上に頭を乗せた。

レイヴンの膝枕は悪くねぇな。
息を吸い込むと、レイヴンの清廉な魔力マナの香りがする気がした。

少しだけ目を瞑ってたせいか、目を開くとレイヴンが俺の顔を覗き込んでいた。

「師匠……? 何か静かですけど、具合でも悪いんですか? 煙草は……いつも吸いすぎてるし、関係なさそうですけど」
「ぁー……なぁ、髪の毛乾いてるか?」
「え?  あぁ……ちょっと濡れてる感じしますけど……」
「じゃあ、このまま乾かしてくれよ。魔法でちょちょいと」

俺は適当なことを言って、このままの体勢でいてもらう口実を作り出す。

レイヴンは溜め息交じりで呪文を紡ぐ。
ふわ、と柔らかい温風を手のひらから出し髪の毛を梳くように撫でてくる。

レイヴンの指が髪に触れるたびに、気持ちが安らぐ。

「……熱くないですか?」
「あぁ。大丈夫だ」
「面倒なら髪の毛切ってもいいと思いますけど……」
「切るのも面倒なんだよなぁ。それに、レイちゃんが乾かしてくれればいいし?」

いつものように笑ってやると、不思議そうな顔をするがそれでも暫く同じように温風を丁寧に当ててくる。
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