94 / 483
第四章 行動に移す魔塔主と色々認めたくない弟子
93.聖女と補佐官<レイヴン視点>
しおりを挟む
自室でシャワーを浴びて身支度を整えてから、早足で神殿に向かうと俺に気付いた神官に案内され神殿奥の一室へと通された。
「レイヴンちゃん、こちらにどうぞ。今、衣装合わせをしているところなの。貴方にはこれを着てもらおうと思って」
微笑みを湛えた聖女様が改めて俺のほうへと振り返って、俺を招き入れてくれた。
「……本当に俺でいいのでしょうか? 祭典の重要な役回りと伺いましたが、私ではなく神官の方々が行うべきではないでしょうか」
「神官ちゃんたちは神官ちゃんたちで役割があるから、問題ないわ。それにね、女神の舞には美しい従者が必須なの。レイヴンちゃんの美貌が必要不可欠なのよ」
「聖女様がそうおっしゃられるのならば。その、衣装というのは……」
聖女様の手には白く美しい生地が握られており、所謂一般的に神が描かれる時に纏うような薄いローブのようなものだ。
片方だけ肩にかけるタイプで服自体の丈も膝丈な分、身体の露出も目立つ。
子どもの天使が身に付けそうな衣装に、思わず困惑する。
「きっと似合うと思うわ。レイヴンちゃんは普段地味でしょう? 絶対に白が映えるはずよ」
「その、黒髪の私だとかなり浮く気がするのですが……」
「私は黒髪で良いと言ったのだけれど、教皇がブロンドこそが神に遣える者だって言い張るのよね。もう、拘りが強いから」
「黒髪は不吉だと言われていますから。仕方ありませんよ。いつも言われていることですから、気にしてません」
神官たちにもあまり歓迎されていないのは分かっているし、髪の色のせいで昔は冷遇されていたこともあった。
「色で差別するなど、あってはならないことです。貴方もそう思うでしょう?」
一人の神官に聖女様が話を振ると、慌てたようにその通りです、と同意する。
よろしい、と頷いた聖女様が、衣装合わせを始めようと指示出しを始めた。
あっという間いつものローブを脱がされたと思ったら、白の布地を纏っていた。
「とても落ち着かないのですが……」
「想像通りね。肌も綺麗で白くて透明感があるし、本当に男の子にしておくのが勿体ないわ。これで、準備したウィッグを被せると……」
肩口に切り揃えられたブロンドのウィッグを被った自分を鏡を通して見ていると、全く別人に見えてくるから不思議だ。
元々美しい聖女様の隣に立つと、確かに仕えている従者に見えなくもない。
神官にその出来栄えに、ほぅ、と感嘆の息を漏らされてなんだかくすぐったい。
「やっぱり、良く似合うわね。可愛いわ」
「……最早、誰だか分からないほど原型も留めていませんが。聖女様のお役に立てるなら」
「後は儀式の時に、私に神具を渡してくれればいいだけだから。大丈夫よ。衣装はこれでいいわ。仕上げて頂戴。……その前に。もう! 可愛いわね、レイヴンちゃん」
聖女様は笑顔で俺を抱きしめる。
抵抗できるはずもなくなされるがままに大人しくしていると、やんわり開放された。
「邪魔者がいなくて良かったわ。あと、テオドールには裏方として魔法で祭典を支えてもらおうかと思っているの。この書類に目を通しておくようにって伝えて」
「畏まりました。必ず伝えて責任を持って読ませますのでご安心ください」
「そう言ってもらえると安心だわ。では、本番もよろしくね」
衣装を脱いでから祭典の流れについて簡単な打ち合わせだけしていき、予定は滞りなく終了した。
「レイヴンちゃん、こちらにどうぞ。今、衣装合わせをしているところなの。貴方にはこれを着てもらおうと思って」
微笑みを湛えた聖女様が改めて俺のほうへと振り返って、俺を招き入れてくれた。
「……本当に俺でいいのでしょうか? 祭典の重要な役回りと伺いましたが、私ではなく神官の方々が行うべきではないでしょうか」
「神官ちゃんたちは神官ちゃんたちで役割があるから、問題ないわ。それにね、女神の舞には美しい従者が必須なの。レイヴンちゃんの美貌が必要不可欠なのよ」
「聖女様がそうおっしゃられるのならば。その、衣装というのは……」
聖女様の手には白く美しい生地が握られており、所謂一般的に神が描かれる時に纏うような薄いローブのようなものだ。
片方だけ肩にかけるタイプで服自体の丈も膝丈な分、身体の露出も目立つ。
子どもの天使が身に付けそうな衣装に、思わず困惑する。
「きっと似合うと思うわ。レイヴンちゃんは普段地味でしょう? 絶対に白が映えるはずよ」
「その、黒髪の私だとかなり浮く気がするのですが……」
「私は黒髪で良いと言ったのだけれど、教皇がブロンドこそが神に遣える者だって言い張るのよね。もう、拘りが強いから」
「黒髪は不吉だと言われていますから。仕方ありませんよ。いつも言われていることですから、気にしてません」
神官たちにもあまり歓迎されていないのは分かっているし、髪の色のせいで昔は冷遇されていたこともあった。
「色で差別するなど、あってはならないことです。貴方もそう思うでしょう?」
一人の神官に聖女様が話を振ると、慌てたようにその通りです、と同意する。
よろしい、と頷いた聖女様が、衣装合わせを始めようと指示出しを始めた。
あっという間いつものローブを脱がされたと思ったら、白の布地を纏っていた。
「とても落ち着かないのですが……」
「想像通りね。肌も綺麗で白くて透明感があるし、本当に男の子にしておくのが勿体ないわ。これで、準備したウィッグを被せると……」
肩口に切り揃えられたブロンドのウィッグを被った自分を鏡を通して見ていると、全く別人に見えてくるから不思議だ。
元々美しい聖女様の隣に立つと、確かに仕えている従者に見えなくもない。
神官にその出来栄えに、ほぅ、と感嘆の息を漏らされてなんだかくすぐったい。
「やっぱり、良く似合うわね。可愛いわ」
「……最早、誰だか分からないほど原型も留めていませんが。聖女様のお役に立てるなら」
「後は儀式の時に、私に神具を渡してくれればいいだけだから。大丈夫よ。衣装はこれでいいわ。仕上げて頂戴。……その前に。もう! 可愛いわね、レイヴンちゃん」
聖女様は笑顔で俺を抱きしめる。
抵抗できるはずもなくなされるがままに大人しくしていると、やんわり開放された。
「邪魔者がいなくて良かったわ。あと、テオドールには裏方として魔法で祭典を支えてもらおうかと思っているの。この書類に目を通しておくようにって伝えて」
「畏まりました。必ず伝えて責任を持って読ませますのでご安心ください」
「そう言ってもらえると安心だわ。では、本番もよろしくね」
衣装を脱いでから祭典の流れについて簡単な打ち合わせだけしていき、予定は滞りなく終了した。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

【完結】元ヤクザの俺が推しの家政夫になってしまった件
深淵歩く猫
BL
元ヤクザの黛 慎矢(まゆずみ しんや)はハウスキーパーとして働く36歳。
ある日黛が務める家政婦事務所に、とある芸能事務所から依頼が来たのだが――
その内容がとても信じられないもので…
bloveさんにも投稿しております。
完結しました。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

蜂蜜とストーカー~本の虫である僕の結婚相手は元迷惑ファンだった~
清田いい鳥
BL
読書大好きユハニくん。魔術学園に入り、気の置けない友達ができ、ここまではとても順調だった。
しかし魔獣騎乗の授業で、まさかの高所恐怖症が発覚。歩くどころか乗るのも無理。何もかも無理。危うく落馬しかけたところをカーティス先輩に助けられたものの、このオレンジ頭がなんかしつこい。手紙はもう引き出しに入らない。花でお部屋が花畑に。けど、触れられても嫌じゃないのはなぜだろう。
プレゼント攻撃のことはさておき、先輩的には普通にアプローチしてたつもりが、なんか思ってたんと違う感じになって着地するまでのお話です。
『体育会系の魔法使い』のおまけ小説。付録です。サイドストーリーです。クリック者全員大サービスで(充分伝わっとるわ)。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる