【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第四章 行動に移す魔塔主と色々認めたくない弟子

93.聖女と補佐官<レイヴン視点>

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 自室でシャワーを浴びて身支度を整えてから、早足で神殿に向かうと俺に気付いた神官に案内され神殿奥の一室へと通された。

「レイヴンちゃん、こちらにどうぞ。今、衣装合わせをしているところなの。貴方にはこれを着てもらおうと思って」

 微笑みを湛えた聖女様が改めて俺のほうへと振り返って、俺を招き入れてくれた。

「……本当に俺でいいのでしょうか? 祭典の重要な役回りと伺いましたが、私ではなく神官の方々が行うべきではないでしょうか」
「神官ちゃんたちは神官ちゃんたちで役割があるから、問題ないわ。それにね、女神の舞には美しい従者が必須なの。レイヴンちゃんの美貌が必要不可欠なのよ」
「聖女様がそうおっしゃられるのならば。その、衣装というのは……」

 聖女様の手には白く美しい生地が握られており、所謂一般的に神が描かれる時に纏うような薄いローブのようなものだ。
 片方だけ肩にかけるタイプで服自体の丈も膝丈な分、身体の露出も目立つ。

 子どもの天使が身に付けそうな衣装に、思わず困惑する。

「きっと似合うと思うわ。レイヴンちゃんは普段地味でしょう? 絶対に白が映えるはずよ」
「その、黒髪の私だとかなり浮く気がするのですが……」
「私は黒髪で良いと言ったのだけれど、教皇がブロンドこそが神に遣える者だって言い張るのよね。もう、拘りが強いから」
「黒髪は不吉だと言われていますから。仕方ありませんよ。いつも言われていることですから、気にしてません」

 神官たちにもあまり歓迎されていないのは分かっているし、髪の色のせいで昔は冷遇されていたこともあった。

「色で差別するなど、あってはならないことです。貴方もそう思うでしょう?」

 一人の神官に聖女様が話を振ると、慌てたようにその通りです、と同意する。
 よろしい、と頷いた聖女様が、衣装合わせを始めようと指示出しを始めた。

 あっという間いつものローブを脱がされたと思ったら、白の布地を纏っていた。

「とても落ち着かないのですが……」
「想像通りね。肌も綺麗で白くて透明感があるし、本当に男の子にしておくのが勿体ないわ。これで、準備したウィッグを被せると……」

 肩口に切り揃えられたブロンドのウィッグを被った自分を鏡を通して見ていると、全く別人に見えてくるから不思議だ。
 元々美しい聖女様の隣に立つと、確かに仕えている従者に見えなくもない。

 神官にその出来栄えに、ほぅ、と感嘆の息を漏らされてなんだかくすぐったい。

「やっぱり、良く似合うわね。可愛いわ」
「……最早、誰だか分からないほど原型も留めていませんが。聖女様のお役に立てるなら」
「後は儀式の時に、私に神具を渡してくれればいいだけだから。大丈夫よ。衣装はこれでいいわ。仕上げて頂戴。……その前に。もう! 可愛いわね、レイヴンちゃん」

 聖女様は笑顔で俺を抱きしめる。
 抵抗できるはずもなくなされるがままに大人しくしていると、やんわり開放された。

「邪魔者がいなくて良かったわ。あと、テオドールには裏方として魔法で祭典を支えてもらおうかと思っているの。この書類に目を通しておくようにって伝えて」
「畏まりました。必ず伝えて責任を持って読ませますのでご安心ください」
「そう言ってもらえると安心だわ。では、本番もよろしくね」

 衣装を脱いでから祭典の流れについて簡単な打ち合わせだけしていき、予定は滞りなく終了した。
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