【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第三章 再確認する魔塔主と距離が近づく弟子

75.まずは準備

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 紅茶の準備ができたレイヴンが、ティーセットをトレーに乗せて戻ってくる。

 楽しそうに準備しているレイヴンを眺めていた俺の前には、香ばしい香りが漂うマグカップが置かれる。

「両方準備したのか? 相変わらずマメだわー」
「別にそんなに難しいことはしてませんし。それより、何を買ってきたのか楽しみです」

 レイヴンは自分のカップに紅茶を注ぐと、包装を解いて箱をそっと開けていく。
 喜んでいる姿がまた分かりやすいんだよなぁ。
 まぁ、面倒臭くなくてこういうところはいいんだけどよ。

「これは、限定のマカロンじゃないですか! しかも、日によってクリームが違う人気のシュークリームまで……師匠、もしかして俺の反応を確かめて誰か女の子にあげようとしてますか? だったら無駄ですよ、誰が食べても美味しいですからね」
「別にそんな意図はねぇよ。たまたまだって。前に食いたがってただろ?」

 何を疑ってるんだコイツは。

 女の子への手土産ならいちいち並んでまで買うような面倒臭い店で買わねぇんだよな。
 お貴族様御用達の小洒落た店で、ちょっとした宝石かなんかを買えばいい話だ。
 光り物は気に入らなけりゃどうとでもなるし、嫌がられることは少ない便利な代物だ。

 ったく、コイツはレイヴンを喜ばせるために買ったのによ。

 もう少し信用してくれてもいいんだがなァ?
 妙に可笑しくて苦笑いしちまう。

「なかなかないですよ、コレ。すぐに売り切れるんですよね」
「らしいな。街のヤツがそんなこと言ってたなァ」

 レイヴンが甲斐甲斐しくシュークリームとマカロンを取り分けていく。
 何かやたらと上機嫌だし、ちょっとからかってみるか。

「そういやあの店の子、なかなか可愛かったな。ボンッとしてたしよ」

 手で胸の大きさを表すように弧を描いて強調すると、レイヴンが子どもを叱るように指を突きつけてくる。

「……師匠、もしかしてペラシェちゃんの事を言ってますか?ダメですよ! あの子はメロウベリーの人気者なんですから! 絶対に変なことしないでくださいね?」
「何だ、お前もああいう子が好きなのか?」
「それはまぁ……。可愛くて良い子ですし、あの子目当てで通う人も大勢いるくらいですからね。師匠はどうせ胸しか見て無いでしょうけど」
「顔も可愛かったぞ。お前とは別の意味でほわほわしてたな」
「何で俺が比べられてるのか良く分かりませんけど、本当にダメですからね」

 何かやたらと釘を刺してくるんだが。
 まぁ、見て楽しむのとヤって愉しむのは別物だからな。

 確かに可愛い子だったし、ヤるかヤらないかで言ったらヤるのは否定しねぇが。
 今は別にそこまで思わねぇんだよな。

「ヤキモチか?」
「バッカじゃないの?」

 ちょーっと言っただけでこの反応だもんな。
 普段はホントにツンツンしてやがる。

 相変わらずの返答に肩が揺れるくらいには笑う。
 見てて飽きねぇな、レイヴンは。
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