76 / 483
第三章 再確認する魔塔主と距離が近づく弟子
75.まずは準備
しおりを挟む
紅茶の準備ができたレイヴンが、ティーセットをトレーに乗せて戻ってくる。
楽しそうに準備しているレイヴンを眺めていた俺の前には、香ばしい香りが漂うマグカップが置かれる。
「両方準備したのか? 相変わらずマメだわー」
「別にそんなに難しいことはしてませんし。それより、何を買ってきたのか楽しみです」
レイヴンは自分のカップに紅茶を注ぐと、包装を解いて箱をそっと開けていく。
喜んでいる姿がまた分かりやすいんだよなぁ。
まぁ、面倒臭くなくてこういうところはいいんだけどよ。
「これは、限定のマカロンじゃないですか! しかも、日によってクリームが違う人気のシュークリームまで……師匠、もしかして俺の反応を確かめて誰か女の子にあげようとしてますか? だったら無駄ですよ、誰が食べても美味しいですからね」
「別にそんな意図はねぇよ。たまたまだって。前に食いたがってただろ?」
何を疑ってるんだコイツは。
女の子への手土産ならいちいち並んでまで買うような面倒臭い店で買わねぇんだよな。
お貴族様御用達の小洒落た店で、ちょっとした宝石かなんかを買えばいい話だ。
光り物は気に入らなけりゃどうとでもなるし、嫌がられることは少ない便利な代物だ。
ったく、コイツはレイヴンを喜ばせるために買ったのによ。
もう少し信用してくれてもいいんだがなァ?
妙に可笑しくて苦笑いしちまう。
「なかなかないですよ、コレ。すぐに売り切れるんですよね」
「らしいな。街のヤツがそんなこと言ってたなァ」
レイヴンが甲斐甲斐しくシュークリームとマカロンを取り分けていく。
何かやたらと上機嫌だし、ちょっとからかってみるか。
「そういやあの店の子、なかなか可愛かったな。ボンッとしてたしよ」
手で胸の大きさを表すように弧を描いて強調すると、レイヴンが子どもを叱るように指を突きつけてくる。
「……師匠、もしかしてペラシェちゃんの事を言ってますか?ダメですよ! あの子はメロウベリーの人気者なんですから! 絶対に変なことしないでくださいね?」
「何だ、お前もああいう子が好きなのか?」
「それはまぁ……。可愛くて良い子ですし、あの子目当てで通う人も大勢いるくらいですからね。師匠はどうせ胸しか見て無いでしょうけど」
「顔も可愛かったぞ。お前とは別の意味でほわほわしてたな」
「何で俺が比べられてるのか良く分かりませんけど、本当にダメですからね」
何かやたらと釘を刺してくるんだが。
まぁ、見て楽しむのとヤって愉しむのは別物だからな。
確かに可愛い子だったし、ヤるかヤらないかで言ったらヤるのは否定しねぇが。
今は別にそこまで思わねぇんだよな。
「ヤキモチか?」
「バッカじゃないの?」
ちょーっと言っただけでこの反応だもんな。
普段はホントにツンツンしてやがる。
相変わらずの返答に肩が揺れるくらいには笑う。
見てて飽きねぇな、レイヴンは。
楽しそうに準備しているレイヴンを眺めていた俺の前には、香ばしい香りが漂うマグカップが置かれる。
「両方準備したのか? 相変わらずマメだわー」
「別にそんなに難しいことはしてませんし。それより、何を買ってきたのか楽しみです」
レイヴンは自分のカップに紅茶を注ぐと、包装を解いて箱をそっと開けていく。
喜んでいる姿がまた分かりやすいんだよなぁ。
まぁ、面倒臭くなくてこういうところはいいんだけどよ。
「これは、限定のマカロンじゃないですか! しかも、日によってクリームが違う人気のシュークリームまで……師匠、もしかして俺の反応を確かめて誰か女の子にあげようとしてますか? だったら無駄ですよ、誰が食べても美味しいですからね」
「別にそんな意図はねぇよ。たまたまだって。前に食いたがってただろ?」
何を疑ってるんだコイツは。
女の子への手土産ならいちいち並んでまで買うような面倒臭い店で買わねぇんだよな。
お貴族様御用達の小洒落た店で、ちょっとした宝石かなんかを買えばいい話だ。
光り物は気に入らなけりゃどうとでもなるし、嫌がられることは少ない便利な代物だ。
ったく、コイツはレイヴンを喜ばせるために買ったのによ。
もう少し信用してくれてもいいんだがなァ?
妙に可笑しくて苦笑いしちまう。
「なかなかないですよ、コレ。すぐに売り切れるんですよね」
「らしいな。街のヤツがそんなこと言ってたなァ」
レイヴンが甲斐甲斐しくシュークリームとマカロンを取り分けていく。
何かやたらと上機嫌だし、ちょっとからかってみるか。
「そういやあの店の子、なかなか可愛かったな。ボンッとしてたしよ」
手で胸の大きさを表すように弧を描いて強調すると、レイヴンが子どもを叱るように指を突きつけてくる。
「……師匠、もしかしてペラシェちゃんの事を言ってますか?ダメですよ! あの子はメロウベリーの人気者なんですから! 絶対に変なことしないでくださいね?」
「何だ、お前もああいう子が好きなのか?」
「それはまぁ……。可愛くて良い子ですし、あの子目当てで通う人も大勢いるくらいですからね。師匠はどうせ胸しか見て無いでしょうけど」
「顔も可愛かったぞ。お前とは別の意味でほわほわしてたな」
「何で俺が比べられてるのか良く分かりませんけど、本当にダメですからね」
何かやたらと釘を刺してくるんだが。
まぁ、見て楽しむのとヤって愉しむのは別物だからな。
確かに可愛い子だったし、ヤるかヤらないかで言ったらヤるのは否定しねぇが。
今は別にそこまで思わねぇんだよな。
「ヤキモチか?」
「バッカじゃないの?」
ちょーっと言っただけでこの反応だもんな。
普段はホントにツンツンしてやがる。
相変わらずの返答に肩が揺れるくらいには笑う。
見てて飽きねぇな、レイヴンは。
1
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
すずらん通り商店街の日常 〜悠介と柊一郎〜
ドラマチカ
BL
恋愛に疲れ果てた自称社畜でイケメンの犬飼柊一郎が、ある時ふと見つけた「すずらん通り商店街」の一角にある犬山古書店。そこに住む綺麗で賢い黒猫と、その家族である一見すると儚げ美形店主、犬山悠介。
恋に臆病な犬山悠介と、初めて恋をした犬飼柊一郎の物語。
※猫と話せる店主等、特殊設定あり
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる