【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

楓乃めーぷる

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第三章 再確認する魔塔主と距離が近づく弟子

72.暗躍する影<another>

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 アスシオは通り過ぎたテオドールを苦々しげに目線で見送り、敬愛する王の前へと参上する。

「……陛下、またテオドールに何か言われたのですか?」
「それこそ、いつものことだろう。今回の件はテオドールの逆鱗に触れたのだから、これでも静かに済んでいる方ではないか」
「また陛下はそのような……。アレを付け上がらせては王の威厳に関わると何度も申し上げているではありませんか」
「分かっている。だが、私が今いるのも。テオドールの力があってこそなのだ。時には我儘も聞いてやるくらいの器量がなければな」

 国王を支える一人である宰相のアスシオは内務を取り仕切り、国の政を国王と共に行う職についている。
 アスシオは王の言うことは絶対だと常日頃思っているため、国王に対して無礼な態度を取り続けるテオドールとは気が合わずに常にぶつかっているが国王にいつも諭されてしまう。

「納得はできませんが、陛下の御心のままに」
「それでこそ我が右腕だ。さて、私も戻るとしよう」

 +++

 一方その頃。

 人も近づかない薄暗い裏路地。
 そこでフードを目深に被った者たちが何やら揉めている。
 辺りには魔法具で軽めの認識妨害がされているが、防音結界までは張られていない。

「報酬は十分に払ったはずだ! なのに、アイツは生きているじゃないか! 話が違う!」
「元々、我が作品のお披露目をしただけで。暗殺だの何だのはお前が勝手に言ったことではないか。確かに作品たちには猛毒を仕込んでいるとは言ったが」
「何だと? そんな話は聞いていないぞ! 私は、アンタらなら金さえ払えば人殺しもすると言うから大金をはたいたというのに。このままでは、私の立場がマズくなるどころか。バレたらあのオーガに殺されかねない! どうしてくれる!」

 影の一人がクッと笑う。
 その態度に益々声を張り上げるが、誰かに聞かれてはマズイことを思い出し一旦口を噤む。

「作品の動き方によっては、死人も出るかもしれないとは言ったな。こちらとしても、試作品たちは無残な姿にされて非常に残念だ。しかも、サンプルまで持っていかれて困ったものだよ。思った以上のリスクに逆に金を貰いたいくらいだ。こんな金額じゃ、商売上がったりなのでな」
「ぐ……どちらにせよ、私にはもう後がない。何とか陛下に頼み込むくらいしか……」
「……フン。話は終わったか? ならばもう会うこともないな。私はまだやることが山積みなのだ。金がないなら話をする価値もない」

 影は去り際に一度振り返る。

「……私も自分の命は惜しいのでな? ま、お前は手遅れだろうがな」

 立ち竦む影を残し、嘲笑と共に暗がりへと消えていった。
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