【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第三章 再確認する魔塔主と距離が近づく弟子

69.今更後悔しても遅いけれど<レイヴン視点>

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「……団長、レイヴンは! なことが分かったし。そろそろ戻りましょうか。レイヴン……色々と良かったな?」
「そうか? それならばいいが。レイヴンは働きすぎなところがあるからな。こちらでも今回の件は団員に聴取しているから、何か分かったら知らせるとしよう」

 ……一言余計だ。
 でも、うまく疑われないようにしてくれたみたいだ。
 ディートリッヒ様の腕を引いて、俺との距離を取ってくれる。

 ホッとして息を吐き出すと、ウルガーが面白そうに笑って俺の耳元に口を寄せてきた。

「……お熱いことで? 団長が熱くなると面倒だから、俺とお前だけの秘密ってことで」
「……っるさい。でも、ありがとう」

 あぁぁぁ……やっぱり察してる!
 怪我じゃなくて、情事の跡、つまり、キスマークだとバレてるってことだよな。

 もう、師匠をぶん殴りたい……。

 俺の肩を叩いてウルガーはディートリッヒ様を促して、楽しそうな笑みを残して部屋から出ていった。

「あぁぁ~~~……やっぱり、止めれば良かった! ウルガーだからいいけど、恥ずかしすぎるだろコレ!」

 二人がいなくなって、改めて羞恥心でいっぱいになって頭を抱える。

「ディートリッヒ様に知られるのは、恥ずかしすぎる。俺、やられたい放題の人みたいになるし……認識妨害まで頭回らなかった……やっぱり寝よう、そうしよう」

 もう一度布団に潜り直し、今度こそ目を瞑って何も考えないようにしているのに頭の中で師匠とのやり取りばかり思い出してしまう。

 何で許可したんだよ、俺は。
 やっぱり跡とか、そういうのは恥ずかしいからダメだ。
 師匠に言ったら、その都度認識妨害を広範囲でかければ問題ないとか、絶対に言うはずだけど。

 俺はどんどんと流されていく自分が少し怖くなってきた。
 師匠はどうあっても師匠なはずだ。

 それなのに。
 俺の心の中でもあの人がいっぱいになってくる。

「なんで……」

 暫く触れないでもらっていたのに、やっぱりいつも何かしら触れられているからあの人から触れられないというのは不思議な感じだった。

 その後に、俺がこんなことになってしまって。
 息ができなくなったあの時だって、師匠のことしか浮かんでこなかった。

「テオ……」

 名前を呼んでみると、なんだか安心する。

 俺が目を開けた時。
 抱きしめられて本当は少し、嬉しかった。
 あぁ、心配してくれたんだなって。

 俺のことを大事にしてくれているのは何となく分かるけど、いつも茶化されてばかりだから何が本心だか分からない。
 ただ単に構うのが面白いからからかっているだけなんだって。

 そう、思うのに。

 結局、暫く悶々として。
 嫌になった辺りで眠ってしまった。
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