【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

第三章 再確認する魔塔主と距離が近づく弟子

64.付かず離れず※＜テオドール・レイヴン視点＞

「しまった…煽られて思わず出しちまった……」
「……これ、で一回……です…よね？」
「仕方ねぇ……お前もまぁ…良かったみたいだし？」

レイヴンがやたらと一回を強調するからなぁ。
まぁ、このくらいで勘弁してやるか。

しっかし、感じてくれたみたいだから満足感はあるな。
そんなに分かりやすくパッと顔を背けて照れなくてもいいのによ。

確かに勢いよく放たれてるが。
これも若さってヤツだよな。

「……なかったことに……」
「ならねぇよなァ？　俺が、欲しかったんだろ？」
「ぅ……それは、その……流れ的に……んっ」

何であそこまで甘えといてなかったことにしようとするんだよ。
欲しがった癖にな。

今更照れて耳まで赤くしているレイヴンが可笑しくて耳を喰む。

「これ以上は、ダメ……です…っ…って。まだ、中にいるまま……っぁ！」
「終わりにしてやるから。今日はこのまま寝ようぜ？」
「え…冗談です、よね……？」
「レイちゃんが可愛いから、抱き枕ってことで」

腹の辺りの残滓だけ適当に拭き取ってそのまま横向きに寝転び、レイヴンのナカから抜かずに腕の中に抱き込む。

「んっ……や、離してくださ……ぁ、動かないで…っ」
「ビクビクして、あぁ…暖かくてイイわコレ」
「こんなの、眠れる訳ない…でしょう？　信じらんな……」

そんなこと言っていつもなら無理矢理引き剥がそうとしてくる癖に離れようともしねぇし？
基本的にくっつくのは好きみたいなんだよな。

俺の胸に顔を自然と寄せてくるし、不安なのもあるんだろうな。
ただ、抱きしめてるとさすがに眠くなってくる。
体温が高くて抱き心地が良いんだよな。

「ふぁぁぁ……あー眠ぃ。先に寝そうだわ」

気持ちよく微睡んでくる。
寝落ちする前にレイヴンの額に唇を落として、ひと撫でする。

「おやすみ」

一言言い残し、俺はそのまま寝落ちてしまった。

+++

「……嘘……この人、本当に寝てるし……」

俺より先に師匠が寝るとか、実は張り切りすぎて疲れたのかも……。
そう考えると余計に恥ずかしい。

もそもそと動いて胸の中から少し顔を出す。
無防備に寝顔を晒している師匠を見ると、信用されているんだと思えて少し安心する。

「この体勢はとても不安が残りますけど、これ以上抜け出せないし……諦めます。眠れるか分かりませんけど……おやすみなさい、テオ」

お返しのように師匠の頬に唇を落としてゆっくりと目を閉じる。
閉じてもやっぱり自分のナカにもまだいる事実が落ち着かなくて暫くは眠れなかったけど……そのうちに抱きしめられている体温を感じながら、俺も眠ってしまった。