【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第三章 再確認する魔塔主と距離が近づく弟子

54.聖女クローディアンヌ

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 一晩椅子に座ったまま寝ちまったが、魔力マナは問題なく回復した。
 レイヴンも普通に目覚めて、慌てたように身支度を整えて俺を叩き起こす。

 元気になった途端に俺に文句を言おうと気合を入れてくるからなぁ。
 元気な証拠だと言われれば、そうなんだが。
 本当に可愛げがねぇんだよな。

 生返事で躱しているところに扉が叩かれる。
 レイヴンがそっと開くと、笑顔の聖女サマが姿を現した。

「聖女様、この度は何とお礼を言えばいいのか……」
「顔色も良くなって、もう大丈夫そうね」

 部屋から出て、改めて丁寧すぎる礼を言っているレイヴンを見て微笑んでいる聖女。

 コイツの微笑みは万人を癒やすとか何とか讃えられてんだよな。
 金糸のような美しい髪は透き通っていて美しく、それは心の美しさ故なのだろうだとか言われてたか。

 どこがだ? 別に金髪ってだけじゃねぇか。
 そんなこと言ったら俺だってそうだ。

「それと比べてこの師匠の態度は……」

 レイヴンが何故か呆れた顔をして溜め息を吐く。
 俺が何したってんだよ。なぁ?
 ちゃんと両足で立ってるじゃねぇか。

「ほら、師匠も!」
「俺はもう言ったからいいんだよ、面倒臭ぇな」
「この人に何を言っても私達が疲れるだけだから。それよりも……私のことは名前で呼んでいいって言ったのに。ほら、呼んでみて?」

 うわ、脅しじゃねぇか。
 そんな笑顔で圧をかけられたら言わないといけない雰囲気になるだろうが。

 俺のレイヴンを困らせんじゃねぇよ。
 視線が彷徨ってんだろ。
 それでも真面目なレイヴンは、遠慮しながらちっちゃい声で、クロード様、だとよ。

「お前、何でそっちの名前呼ばせてるんだよ」
「いいのいいの。クローディアンヌは元々姉さまの名前だし。貴方たちの前では、私は私でいたいから」

 聖女もといクロードは嘘臭く寂しそうな顔をしてから、また嘘臭い笑顔に戻る。

 コイツが聖女と呼ばれてるのは俺と一緒で役職名からきている。ババアと呼んでいるが、性別はれっきとした男だ。

 クロードにはクローディアンヌという双子の姉がいた。
 最初にその姉が女神からの祝福を受けたが、身体が弱かったからクロードがガキの頃に亡くなったと聞いた。
 だが、祝福を受けた者がすぐに亡くなるのは体裁が悪いという理由で、表向きに亡くなったことになっているのはだ。

 それもこれも教皇を含めた神殿のヤツらが勝手に決めたことだ。
 コイツも納得しているとは言っているが、自分が死んでいることになっている気持ちってのはどうなんだろうな?

 コイツがクロードであることを知っているのは、神殿のお偉いさん方、陛下、ディーとウルガー、それとレイヴンくらいか。
 正式な場では聖女クローディアンヌとして。
 女として生きているからな。

 クロードは死を悟った姉から女神の力を受け継いでいるから、正式な聖女だ。
 だから、レイヴンを救った奇跡の力ってヤツも使える訳だ。
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