【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第三章 再確認する魔塔主と距離が近づく弟子

51.思っていた以上に大切で

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「うるせぇな! 俺だってババアのとこなんて来たかねぇんだよ! 解毒薬で効き目がねぇんだから、仕方がねぇだろうが!」
「病人の前で吠えるんじゃないわよ! この魔塔のオーガキング!」
「あぁん? てめぇだってババアどころか本当はジジイじゃねぇか!」
「それ以上吠えるなら部屋から追い出すよ! 私だって、アンタみたいな獣と顔を突き合わせたくなんてないんだから!」

 ああ言えばこう言う、ホント面倒なヤツだ。
 コイツと顔を突き合わせると大体こうなるから、俺だってきたくなかったんだっての。

 イラついたが、コイツと言い合うと少しスッキリした。
 俺がどう言おうかと黙っていると、聖女がワザとらしい咳払いをする。

「……扉と結界は今すぐ直して頂戴。それと、レイヴンちゃんが落ち着くまではレイヴンちゃんに免じて私の部屋を貸してあげるから。アンタはそれ以上騒がずに、側にいてあげなさい」

 説教臭いが、コイツのおかげでレイヴンは助かったのも間違いない。
 聖女は強力な回復魔法を使える唯一無二の存在だからな。

 仕方ねぇ。
 礼ぐらいは言っておくか。

「……わぁったよ。……恩に着る」
「そういうことは最初に言いなさいよ。全く。他にも壊したものは直しておきなさい?」

 何か言いたげな教皇たちの背中を押して追いやりながら、聖女は意味深に優しい笑みを残して自室から退出した。

 ……アレは後で何か言ってくるな。

「……ババアに借りができちまったなァ。ったく、どこでやられてきたんだよ……」

 適当に出入り口に手を翳し呪文を紡ぐと、扉が壊れる前と同様に復元していく。
 室内にあった椅子を適当にベッドの前へと引きずって持ってくると、ドカリと腰をおろした。

 改めてレイヴンを眺めながら、口で何種類もの呪文を詠唱して積み重ねていく。すると、フォン、という音と共に、扉の外で淡い光を放つ結界が掛け直された。

 大体こんなもんでいいだろう。
 何の結界だったか種類は忘れたが、要は塞がってれば文句はねぇだろ。
 侵入されなきゃいいんだろうし。

 面倒事は終わらせて、レイヴンの顔を間近で覗き込む。
 眠るように目を瞑ったままのレイヴンを見たが、ちゃんと息をしている。

 先程のレイヴンが倒れていた姿を思い出す。
 自分では何もできないと思った瞬間に、何も考えられなくなった。

 俺にとって、レイヴン自身の存在が大きくて大切だってことか。

「参ったわ……」

 頭を掻き毟る。
 我を忘れるほどだとは、自分でも呆れる。
 まぁ……何となく分かってたが。

 今回のことは完全に俺の判断が甘かった。
 レイヴンに任せること自体は間違っていないが、万が一の事態を想定できていなかった。

 レイヴンが朦朧としながらも最適解を選んだから、最悪の事態だけは何とか免れただけだ。

 こんなこと――
 二度と起きてたまるかよ。

「ホント、危なっかしいんだよ。お前は」

 心臓の音を確かめるように、レイヴンの胸元に頭を寄せる。
 鼓動を聞くと、身体の力が一気に抜けた。

 そういや、魔力マナを無駄遣いしてたな。
 少し眠らせてもらうとするか。
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