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番外編SS
勝つのは師匠か弟子か 1<ポッキーの日SS>
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今日は魔塔全体の休日だ。
緊急事態以外は全員お気楽にしていても誰も文句を言ってこないという点で素晴らしい日だ。
まぁ、いつも誰にも文句を言わせるつもりもねぇけどな。
可愛い弟子はと言えば、街に買い物に行くとかなんとか言って外出している。
おかげで暇を持て余して、煙草を咥えながら自室のテラスで陽の光を浴びている訳だが。
「お……もう買い物が終わったのか?」
天辺からだろうが、アイツの黒髪は良く目立つ。
遠目にレイヴンが見えたので構いに行くとするか。
+++
俺から動こうかと扉に近づくと、扉を叩く音がする。
「師匠、起きてますか?」
レイヴンを驚かせるつもりですぐさま扉を開いたが、やっぱりいた、と予想されていたので少し面白くない。
「なんだ? 俺が起きてちゃ悪いのか?」
「むしろいつもさっさと起きていてください。じゃなくて。新作のお菓子を手に入れられたんです。師匠もいかがですか?」
嬉しそうに微笑むレイヴンが可愛らしい。
そんなにお菓子が嬉しいかぁ? ホント甘いものが好きだな。
まぁ、わざわざ来てくれたなら招き入れる以外の選択肢もねぇな。
「良く分からねぇが、入れよ」
「はい。失礼します」
ご機嫌なレイヴンが勝手知ったる俺の部屋に積極的に入ってきて、ソファーの側のテーブルの上に抱えていた紙袋を乗せる。
そこから一つの小箱を取り出すと、リボンを解いて中身を俺に見せてきた。
「見てください! 流行り最先端のチョコレートスティックです! この細さと軽さを表現したのはメロウベリーが初めてだそうです。軽いサクサク感とチョコレートをお楽しみください……ですって」
子どものようにはしゃいでいるレイヴンが珍しい。
それだけ楽しみだったっていうことなんだろうが。
「ほら、じゃあ食べてみようぜ?」
先にソファーに腰掛け、隣をポンポンと叩いてレイヴンを呼ぶと素直に寄ってくる。
こうも純粋に喜んでいるのを見てると、からかいたくなるんだよなァ……。
ちょっとお遊びを提案してみるか。
「なぁ、レイヴン。勝負しようぜ」
「は? 勝負って何を急に……」
「俺が勝ったら今日一日俺の部屋で過ごして言うことを聞く。お前が勝ったら、お願いごとを聞いてやるよ」
「それ、俺に利点が全くないじゃないですか。やりませんよ? 俺はゆっくりと味わいたいんです」
これくらいじゃのってこねぇか。
作戦は……あるっちゃある。
ゴリ押しだ。
レイヴンは押しに弱い。
「俺が大人しくお願いごとを聞くことなんてなかなかないぞ? 今日じゃなくてもいい。別に真面目に仕事しろーとかでもいいしな。どうだ?」
「……裏があるとしか思えませんけど……まぁ聞くだけは聞きます」
「よしよし。じゃあ……」
俺はそう言ってチョコレートスティックを一つ手に取って、煙草の様に咥えて見せた。
「……先に食べてるし。何のつもりだか知りませんが……」
説明は手振りで、そっちを咥えろと、指を指して指示する。
レイヴンは何言っているんだ、という表情のまま動かない。
ノリが悪ぃな。全く。
「分かりやすいだろ? 端と端を咥えて、先に折った方が負けだ」
「こういうこと、好きですよね。どうせ酒場のお姉さんと一緒に遊んだんでしょう? はぁ……面倒臭い……」
「いいじゃねぇか。1本くらい遊んでも。ゆっくり食う分はあるんだしよ」
「俺が勝ったら、もう大人しくしていてくださいね」
レイヴンは俺が引かないことが分かっているので、結局折れて言うことを聞く。
まぁ、本当にただのお遊びだからな。
緊急事態以外は全員お気楽にしていても誰も文句を言ってこないという点で素晴らしい日だ。
まぁ、いつも誰にも文句を言わせるつもりもねぇけどな。
可愛い弟子はと言えば、街に買い物に行くとかなんとか言って外出している。
おかげで暇を持て余して、煙草を咥えながら自室のテラスで陽の光を浴びている訳だが。
「お……もう買い物が終わったのか?」
天辺からだろうが、アイツの黒髪は良く目立つ。
遠目にレイヴンが見えたので構いに行くとするか。
+++
俺から動こうかと扉に近づくと、扉を叩く音がする。
「師匠、起きてますか?」
レイヴンを驚かせるつもりですぐさま扉を開いたが、やっぱりいた、と予想されていたので少し面白くない。
「なんだ? 俺が起きてちゃ悪いのか?」
「むしろいつもさっさと起きていてください。じゃなくて。新作のお菓子を手に入れられたんです。師匠もいかがですか?」
嬉しそうに微笑むレイヴンが可愛らしい。
そんなにお菓子が嬉しいかぁ? ホント甘いものが好きだな。
まぁ、わざわざ来てくれたなら招き入れる以外の選択肢もねぇな。
「良く分からねぇが、入れよ」
「はい。失礼します」
ご機嫌なレイヴンが勝手知ったる俺の部屋に積極的に入ってきて、ソファーの側のテーブルの上に抱えていた紙袋を乗せる。
そこから一つの小箱を取り出すと、リボンを解いて中身を俺に見せてきた。
「見てください! 流行り最先端のチョコレートスティックです! この細さと軽さを表現したのはメロウベリーが初めてだそうです。軽いサクサク感とチョコレートをお楽しみください……ですって」
子どものようにはしゃいでいるレイヴンが珍しい。
それだけ楽しみだったっていうことなんだろうが。
「ほら、じゃあ食べてみようぜ?」
先にソファーに腰掛け、隣をポンポンと叩いてレイヴンを呼ぶと素直に寄ってくる。
こうも純粋に喜んでいるのを見てると、からかいたくなるんだよなァ……。
ちょっとお遊びを提案してみるか。
「なぁ、レイヴン。勝負しようぜ」
「は? 勝負って何を急に……」
「俺が勝ったら今日一日俺の部屋で過ごして言うことを聞く。お前が勝ったら、お願いごとを聞いてやるよ」
「それ、俺に利点が全くないじゃないですか。やりませんよ? 俺はゆっくりと味わいたいんです」
これくらいじゃのってこねぇか。
作戦は……あるっちゃある。
ゴリ押しだ。
レイヴンは押しに弱い。
「俺が大人しくお願いごとを聞くことなんてなかなかないぞ? 今日じゃなくてもいい。別に真面目に仕事しろーとかでもいいしな。どうだ?」
「……裏があるとしか思えませんけど……まぁ聞くだけは聞きます」
「よしよし。じゃあ……」
俺はそう言ってチョコレートスティックを一つ手に取って、煙草の様に咥えて見せた。
「……先に食べてるし。何のつもりだか知りませんが……」
説明は手振りで、そっちを咥えろと、指を指して指示する。
レイヴンは何言っているんだ、という表情のまま動かない。
ノリが悪ぃな。全く。
「分かりやすいだろ? 端と端を咥えて、先に折った方が負けだ」
「こういうこと、好きですよね。どうせ酒場のお姉さんと一緒に遊んだんでしょう? はぁ……面倒臭い……」
「いいじゃねぇか。1本くらい遊んでも。ゆっくり食う分はあるんだしよ」
「俺が勝ったら、もう大人しくしていてくださいね」
レイヴンは俺が引かないことが分かっているので、結局折れて言うことを聞く。
まぁ、本当にただのお遊びだからな。
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