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第一章 積極的な魔塔主と翻弄される弟子
36.さらに悩む弟子<レイヴン視点>
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「うわぁー……そんな日が来るかもとは思ってたけど、思ってたより早かったー……」
「え? なんで?」
「……いや、何でとは俺が言いたい。お前危なっかしいし、魔法使いとしては優秀かもしれないけど、何か抜けてるし、たまに感覚ぶっとんでるから」
「抜けてるって、失礼だな。それに、別に普通なんですけど。ウルガーの言うそんな日が来たら困るはずなのに、俺……触れられると、何か自分じゃなくなる感じがするんだよ。あの人にとってはただの弟子だろ? なのに」
師匠にされたことを少し、思い出してしまう。
あの人は、俺に近づいて唇を奪って。
それで――
指が自然と唇をなぞる。
感覚が思い出されて、顔が熱くなってきた。
視線を感じて、慌てて指を離す。
ウルガーも何故か頭を振って、声をあげた。
「いや、ここでそんなこと言わなくていいから! 大体何となく状況は把握したけどさ。変って何が?」
「いや、だから。最近師匠に触れられると……あぁもう! どうしたらいい? 俺、アレか? 淫乱ってヤツなのか? 嫌なんだけど! 師匠に変な魔法かけられてるとか、そういうことにならないかな?」
そう、変だ。
何で師匠に触れられるだけで俺、あんな感じになるんだろう?
あの人が慣れてるから?
それとも本当に俺が感じやすくて……。
――混乱してきて、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
グルグルと考え込んでしまうと、ウルガーが俺の両肩に手を置いて俺と目線を合わせてくる。
「……なぁ、本気で言ってんの? お前、そんなに恋愛方面ダメな子だったっけ?」
「いや、だって。恋愛じゃないし。身体だけの関係とか最悪だろ! そんな、師匠の性癖に付き合わされて。俺、そこまで達観できない。割り切ってとか無理。性欲処理まで、弟子の仕事とか言わないで欲しい。俺はたまたまその時だけ、一回だけだと思ったから、色々諦めたのに」
「……はぁ。身体だけの関係だとか、そんなことないと思うけどね、俺は。お前のこと気にかけてるんじゃないか? 色んな意味で。それじゃ、一応聞くけど。お前にとってテオドール様って何?」
「何って……師匠は師匠だよ。魔法に関しては尊敬すべき実力の持ち主だけど、人間的には最低で、めちゃくちゃで常識外で、尊敬できない人だよ。尻拭いも疲れるし、振り回されるコッチの身にもなってほしい」
ウルガーが言っていることはよく分からないけど、あの人が厄介な人だということは間違いない。
毎日振り回されて、本当に疲れるし。
ウルガーはやたらと長く息を吐き出した。
そして、もう一度俺に言い聞かせるようにジッと見つめてくる。
「何か、面倒臭いことになってるということは理解した。一つ言えるとしたら……レイヴン、お前が嫌ならちゃんと断った方がいいぞ。いくらテオドール様でも、本気で嫌がるヤツには何もしないと思う。まぁ、なんていうか。頑張れ」
ウルガーはポンポンと俺の肩を叩き、愚痴ならいつでも聞いてやるから、と。笑いながら言って、訓練へと戻っていった。
「だよな。俺が意思表示をしないからだよ。師匠だからって、何でもしていい訳じゃないんだから。キッパリと断ろう」
少しだけ心が軽くなった気がする。
立ち上がると来た時よりは足取りも軽い。
相談にのってくれたウルガーに心の中で礼を言いながら、王宮を後にした。
「え? なんで?」
「……いや、何でとは俺が言いたい。お前危なっかしいし、魔法使いとしては優秀かもしれないけど、何か抜けてるし、たまに感覚ぶっとんでるから」
「抜けてるって、失礼だな。それに、別に普通なんですけど。ウルガーの言うそんな日が来たら困るはずなのに、俺……触れられると、何か自分じゃなくなる感じがするんだよ。あの人にとってはただの弟子だろ? なのに」
師匠にされたことを少し、思い出してしまう。
あの人は、俺に近づいて唇を奪って。
それで――
指が自然と唇をなぞる。
感覚が思い出されて、顔が熱くなってきた。
視線を感じて、慌てて指を離す。
ウルガーも何故か頭を振って、声をあげた。
「いや、ここでそんなこと言わなくていいから! 大体何となく状況は把握したけどさ。変って何が?」
「いや、だから。最近師匠に触れられると……あぁもう! どうしたらいい? 俺、アレか? 淫乱ってヤツなのか? 嫌なんだけど! 師匠に変な魔法かけられてるとか、そういうことにならないかな?」
そう、変だ。
何で師匠に触れられるだけで俺、あんな感じになるんだろう?
あの人が慣れてるから?
それとも本当に俺が感じやすくて……。
――混乱してきて、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
グルグルと考え込んでしまうと、ウルガーが俺の両肩に手を置いて俺と目線を合わせてくる。
「……なぁ、本気で言ってんの? お前、そんなに恋愛方面ダメな子だったっけ?」
「いや、だって。恋愛じゃないし。身体だけの関係とか最悪だろ! そんな、師匠の性癖に付き合わされて。俺、そこまで達観できない。割り切ってとか無理。性欲処理まで、弟子の仕事とか言わないで欲しい。俺はたまたまその時だけ、一回だけだと思ったから、色々諦めたのに」
「……はぁ。身体だけの関係だとか、そんなことないと思うけどね、俺は。お前のこと気にかけてるんじゃないか? 色んな意味で。それじゃ、一応聞くけど。お前にとってテオドール様って何?」
「何って……師匠は師匠だよ。魔法に関しては尊敬すべき実力の持ち主だけど、人間的には最低で、めちゃくちゃで常識外で、尊敬できない人だよ。尻拭いも疲れるし、振り回されるコッチの身にもなってほしい」
ウルガーが言っていることはよく分からないけど、あの人が厄介な人だということは間違いない。
毎日振り回されて、本当に疲れるし。
ウルガーはやたらと長く息を吐き出した。
そして、もう一度俺に言い聞かせるようにジッと見つめてくる。
「何か、面倒臭いことになってるということは理解した。一つ言えるとしたら……レイヴン、お前が嫌ならちゃんと断った方がいいぞ。いくらテオドール様でも、本気で嫌がるヤツには何もしないと思う。まぁ、なんていうか。頑張れ」
ウルガーはポンポンと俺の肩を叩き、愚痴ならいつでも聞いてやるから、と。笑いながら言って、訓練へと戻っていった。
「だよな。俺が意思表示をしないからだよ。師匠だからって、何でもしていい訳じゃないんだから。キッパリと断ろう」
少しだけ心が軽くなった気がする。
立ち上がると来た時よりは足取りも軽い。
相談にのってくれたウルガーに心の中で礼を言いながら、王宮を後にした。
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