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第一章 積極的な魔塔主と翻弄される弟子
34.騎士団長執務室にて<レイヴン視点>
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「もしかして、来客の予定があったのでは?」
「いや、今日は執務室で確認することが山ほどあるのを知っていたアイツが、飽きたら茶でも飲めと置いていったものだ。今日の訓練は任せているからな」
「あぁ、ウルガーですか。私も後で顔を出してみます」
ウルガーには話したいことがあったし、魔塔に戻る前に会おうと思っていたから、訓練所にいるならば顔も出しやすいか。
ウルガーは王国騎士団の副団長で、俺より2歳上の21歳だけど、ほぼ同期で魔法使いと騎士という職について、お互いに長を支えるようになってからさらに親しくなった。
俺が心を許せる相手で、親友でもあり良き兄でもある……のかな。
明るくてカラッとしているから、相談も凄くしやすくて頼りにしている。
世間話をしてお茶を飲みながら、俺が予算についての話を切り出すと、それだ、それ。と、ディートリッヒ様が眉間に皺を寄せる。
「文官が防衛に予算を裂き過ぎだと議題に上げたらしい。最もな意見でもあるが、この国は騎士団も統合されて1つにされてしまっているからな。他の国では、近衛騎士団、聖堂騎士団などときちん分かれているからいいのだが。ウチは何せ大所帯で困る。これ以上は少々キツイのだが、どこか減らせるところはないかと思い悩んでいたところだ」
「確かに。騎士団内で各自が仕事を分担しているにせよ、ディートリッヒ様の身体は一つしかありませんし。そもそも、騎士団を一括りにした予算で計算すること自体が間違っていると思うのですが……以前の国王が様々な法を無理に改変してからというもの、文官たちも悲鳴をあげているのでしょう」
師匠とは違って、ディートリッヒ様とは真面目な話を静かにできる。
それだけで心が安らぐ気がした。
話が通じることは素晴らしいと、当たり前のはずのことに感謝してしまう。
師匠もディートリッヒ様のように、人として尊敬できる素晴らしい性格だったら良かったのに……。
「あぁ。陛下が綻びを正すにはまだ時間がかかるだろう。魔塔もテオドールが無理矢理に仕切っているが、逆らう勢力もいるだろう?」
「はい。私はこの国出身ではありませんし、納得していない魔法使いも多数います。こちらとしても、予算は厳しいところではあるので何とか折り合いをつけようと考えています」
「……分かった。アイツではなくレイヴンと先に話せて良かった。テオに任せるとロクなことにならんからな」
「はい。来る前にロクでもないことを言われていましたので、先にディートリッヒ様とお話出来て良かったです。お茶、ごちそうさまでした」
席を立とうとすると、ディートリッヒ様が言いにくそうに、レイヴン、と呼びかけた。はい、と静かに返事をすると。視線を彷徨わせてから俺を心配そうに見遣る。
「いや、今日は執務室で確認することが山ほどあるのを知っていたアイツが、飽きたら茶でも飲めと置いていったものだ。今日の訓練は任せているからな」
「あぁ、ウルガーですか。私も後で顔を出してみます」
ウルガーには話したいことがあったし、魔塔に戻る前に会おうと思っていたから、訓練所にいるならば顔も出しやすいか。
ウルガーは王国騎士団の副団長で、俺より2歳上の21歳だけど、ほぼ同期で魔法使いと騎士という職について、お互いに長を支えるようになってからさらに親しくなった。
俺が心を許せる相手で、親友でもあり良き兄でもある……のかな。
明るくてカラッとしているから、相談も凄くしやすくて頼りにしている。
世間話をしてお茶を飲みながら、俺が予算についての話を切り出すと、それだ、それ。と、ディートリッヒ様が眉間に皺を寄せる。
「文官が防衛に予算を裂き過ぎだと議題に上げたらしい。最もな意見でもあるが、この国は騎士団も統合されて1つにされてしまっているからな。他の国では、近衛騎士団、聖堂騎士団などときちん分かれているからいいのだが。ウチは何せ大所帯で困る。これ以上は少々キツイのだが、どこか減らせるところはないかと思い悩んでいたところだ」
「確かに。騎士団内で各自が仕事を分担しているにせよ、ディートリッヒ様の身体は一つしかありませんし。そもそも、騎士団を一括りにした予算で計算すること自体が間違っていると思うのですが……以前の国王が様々な法を無理に改変してからというもの、文官たちも悲鳴をあげているのでしょう」
師匠とは違って、ディートリッヒ様とは真面目な話を静かにできる。
それだけで心が安らぐ気がした。
話が通じることは素晴らしいと、当たり前のはずのことに感謝してしまう。
師匠もディートリッヒ様のように、人として尊敬できる素晴らしい性格だったら良かったのに……。
「あぁ。陛下が綻びを正すにはまだ時間がかかるだろう。魔塔もテオドールが無理矢理に仕切っているが、逆らう勢力もいるだろう?」
「はい。私はこの国出身ではありませんし、納得していない魔法使いも多数います。こちらとしても、予算は厳しいところではあるので何とか折り合いをつけようと考えています」
「……分かった。アイツではなくレイヴンと先に話せて良かった。テオに任せるとロクなことにならんからな」
「はい。来る前にロクでもないことを言われていましたので、先にディートリッヒ様とお話出来て良かったです。お茶、ごちそうさまでした」
席を立とうとすると、ディートリッヒ様が言いにくそうに、レイヴン、と呼びかけた。はい、と静かに返事をすると。視線を彷徨わせてから俺を心配そうに見遣る。
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