【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

文字の大きさ
上 下
35 / 483
第一章 積極的な魔塔主と翻弄される弟子

34.騎士団長執務室にて<レイヴン視点>

しおりを挟む
「もしかして、来客の予定があったのでは?」

「いや、今日は執務室で確認することが山ほどあるのを知っていたアイツが、飽きたら茶でも飲めと置いていったものだ。今日の訓練は任せているからな」
「あぁ、ウルガーですか。私も後で顔を出してみます」

 ウルガーには話したいことがあったし、魔塔に戻る前に会おうと思っていたから、訓練所にいるならば顔も出しやすいか。

 ウルガーは王国騎士団の副団長で、俺より2歳上の21歳だけど、ほぼ同期で魔法使いと騎士という職について、お互いに長を支えるようになってからさらに親しくなった。

 俺が心を許せる相手で、親友でもあり良き兄でもある……のかな。
 明るくてカラッとしているから、相談も凄くしやすくて頼りにしている。

 世間話をしてお茶を飲みながら、俺が予算についての話を切り出すと、それだ、それ。と、ディートリッヒ様が眉間に皺を寄せる。

「文官が防衛に予算を裂き過ぎだと議題に上げたらしい。最もな意見でもあるが、この国は騎士団も統合されて1つにされてしまっているからな。他の国では、近衛騎士団、聖堂騎士団などときちん分かれているからいいのだが。ウチは何せ大所帯で困る。これ以上は少々キツイのだが、どこか減らせるところはないかと思い悩んでいたところだ」
「確かに。騎士団内で各自が仕事を分担しているにせよ、ディートリッヒ様の身体は一つしかありませんし。そもそも、騎士団を一括りにした予算で計算すること自体が間違っていると思うのですが……以前の国王が様々な法を無理に改変してからというもの、文官たちも悲鳴をあげているのでしょう」

 師匠とは違って、ディートリッヒ様とは真面目な話を静かにできる。

 それだけで心が安らぐ気がした。
 話が通じることは素晴らしいと、当たり前のはずのことに感謝してしまう。

 師匠もディートリッヒ様のように、人として尊敬できる素晴らしい性格だったら良かったのに……。

「あぁ。陛下が綻びを正すにはまだ時間がかかるだろう。魔塔もテオドールが無理矢理に仕切っているが、逆らう勢力もいるだろう?」
「はい。私はこの国出身ではありませんし、納得していない魔法使いも多数います。こちらとしても、予算は厳しいところではあるので何とか折り合いをつけようと考えています」
「……分かった。アイツではなくレイヴンと先に話せて良かった。テオに任せるとロクなことにならんからな」
「はい。来る前にロクでもないことを言われていましたので、先にディートリッヒ様とお話出来て良かったです。お茶、ごちそうさまでした」

 席を立とうとすると、ディートリッヒ様が言いにくそうに、レイヴン、と呼びかけた。はい、と静かに返事をすると。視線を彷徨わせてから俺を心配そうに見遣る。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

手紙

ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。 そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

処理中です...