【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第一章 積極的な魔塔主と翻弄される弟子

14.その顔は反則

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「レイちゃんだって、抱かれてもいいくらいは俺のこと好きだろ? 何やかんやで俺の後にくっついて回ってるじゃねぇか。それって師匠と弟子だからか?」
「……そうですよ。放っておくと他の人が被害を受けるから、事前に防ごうとしてるんじゃないですか。分かりませんか?」

 苦虫を噛み潰したような表情で見られてもな。
 俺は笑っちまうだけだし。

 そんなこと言ってもレイヴンは物事を弁えているヤツだから、本来は身持ちが固いはずだ。
 それでも俺には身体を許すってことは、ちゃんと信用してくれてるってことだ。

 ありがたいことで。

「……コレだから嫌いなのに。人の心を読まないでくださいよ。……師匠のこと、愛してはいませんけどね。本当に嫌いな人に嫌いって言う人、いませんよ。いや、いるかも?」
「ホント訳わかんねぇなぁ。まぁ、いいや。もう一眠りしたら、風呂まで連れてってやるからよ。後なんだ? 服ねぇ……何か探せばあるかもしれねぇわ。下着までは知らねぇけどな」

 俺が適当に答えるといつもの調子に戻ってきたレイヴンが溜め息混じりでぶつくさ言い始める。

「……もう、今回だけですよ? もう少しだけ、付き合ってあげますから。そうしたら……」
「まぁまぁ。硬いこと言わずに。また愉しもうぜ? 俺はお前のこと気に入ってるんだし」
「ペット扱いするの、やめてくださいよ。これだから、外で俺が白い目で見られるんだよ……顔で弟子の座を取ったとかなんとか……」
「んなの、言わせておけばいいだろうが。大体顔だけじゃ俺の弟子なんて務まるわけねぇだろ。実力があるから側に置いてんだからよ」

 見目麗しいのはいいことだが、それだけで判断するヤツもいるのは確かだ。
 だからといって、いちいち気にし過ぎなんだよな。

 慰めるつもりで指先で頬を撫でて何度目かのキスをする。
 さすがに諦めたレイヴンが大人しく俺の胸に顔を預けた。

「はぁ……俺、誰でも良い訳じゃないですから。何となく人肌恋しくなっただけですから。それが、たまたま。たまたま師匠だっただけで。俺、ホントどうしちゃったんだろう……大丈夫かな色々……」
「今更だよなァ? 別にー。んなこと、わぁってるよ。子猫は気まぐれだからいいんじゃねぇの? 俺は満足したからいいや」
「……これで満足してないって言ったら、本気で師匠を落とすところでしたよ。俺、そんなに魅力ないですか? って。これでも綺麗な顔してるし? 初めてなのに反応良かったでしょ?」
「……バーカ。最後の方だけだろ。このお子様が。ったく、どこまでも可愛くねぇ」
「はいはい。冗談ですから。師匠も俺と遊んでないで、良い人見つけてくださいね」
「あのなぁ……。まぁ、いいか。少しずつ分からせてやれば」

 調子が戻ると生意気なことを言いやがる。
 強がりなのは分かるが、まぁそこもひっくるめて可愛いもんだ。

 ただ、レイヴンの笑った顔は普通に綺麗な笑顔で、それだけで俺は心を揺さぶられる気がした。

 チッ。
 やっぱり顔がイイのは反則だろ。

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