【第二部開始】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる

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第一章 積極的な魔塔主と翻弄される弟子

21.お気に入りの酒場

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 爺の店から行きつけの酒場に向かう。
 女将を見ながら酒を飲むのは良いもんだ。

 昼間は夜ほど客もいねぇし、女将の顔を見ながら酒が飲めるのがイイ。
 いつものカウンター前に陣取って座る。

 すぐに俺に気づいた女将が綺麗な顔してる癖に眉を怒らせた。

「昼間っから何しに来てるんだい? 魔塔主様?」
「よぉ。腹減ったから何か食わせてくれよ。早めに帰ってこいって煩い弟子がいるから夜に来れそうにないんだわ」
「ハン。別にあんたは呼んでないよ。デカイ図体で邪魔だしね」
「そんなこと言って、俺のこと好きな癖によォ」
「煩いねぇ! 助けてもらったくらいで惚れたと思ったら大間違いだよ! いいからさっさと座りな」
「へーへー」

 酒場の女将のハリシャは黒髪の美人女将だ。
 俺より年上なはずだが、いつも綺麗でコッチとしちゃあ酒がすすむ。
 俺だけじゃなくて町のヤツらにも人気があるのも納得だ。

 女将は既婚者で旦那がいたらしいが、俺は顔も知らない。
 俺がココに厄介になる前に戦争で死んじまったと聞いた。
 だから俺は旦那のこと、周りの連中に聞いた話しか知らないんだよな。

 女将は今こそ俺に嫌味を言えるくらい気丈に振る舞ってるが、一度だけ夜に魔物が出る森でフラフラしてるところを見かけた。
 その頃は俺もこの酒場には通ってねぇ頃だ。

 流石に放っておけねぇし、何で外にいるんだよって声を掛けたんだよな。

 そうしたら、月が綺麗だったから、湖に行きたかっただなんて言うんだぜ?
 とは言っても、俺がギャンブルで負けちまった憂さ晴らしで魔法でもぶっ放してやろうかと外に出た時間だから、かなり遅かったはずだ。

 そりゃあ、色っぽい話をしてるってだけじゃなさそうだって分かるだろ。

 そんな女将のことが気になって、俺はすっかり常連になっちまったって訳だ。

「とりあえずビールくれよビール」
「全く、今日の仕事はいいのかい? ほら、一杯だけにしておきな! あの可愛い子に怒られるんだろ?」
「アンタまでレイヴン推しかァ? 今日だけで何回話題に出てきたよ、アイツ」
「そりゃあ、みんな気にかけるに決まってんだろ? 一生懸命頑張ってんじゃないか。アンタみたいな荒くれ者の尻拭いをあの若さでやるだなんて、気苦労が絶えないだろうに」
「まぁな。周りのヤツらが煩いから、気にしてんだよ。アイツ、この国出身じゃねぇし」
「そうなのかい? それじゃ余計に貴族からの風当たりが強いだろうねぇ。可哀想に」
「一部のお貴族様なんてただの飾りだよ、飾り。陛下にも進言してるけどよ、燃やすのはダメだとか言われんだよな」
「燃やすってアンタ、屋敷をかい? それともお貴族様をかい? どっちにしても、魔塔主様ならやってのけるんだろうねぇ」

 アイツらはどうでもいいわ。
 酒が不味くなる。

 女将の言う通り、俺が本気で壊そうとすればこの国全てをぶっ壊せる。
 適当に魔力マナを最大に放出するだけでも壊すだけなら余裕だろうな。

 俺は国に限らず組織のしがらみってヤツはそもそも好きじゃねぇ。

 面倒臭ぇし。

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