97 / 110
第八章 真のハッピーエンディングを目指して
94.恵みの宝珠へ
しおりを挟む
俺がカティから恵みのベルを受け取ると、アウレリオルが代表して説明してくれるみたいだ。
精霊たちも一旦姿勢を正して、話を聞く体勢に切り替わる。
「ハルよ、今から我らの力で我らが守る秘宝の封印を解きに行く。恵みのベルが鳴らされたということは、恵みの宝珠を使用する者が現れたという報せ。我らは使命を果たさなくてはならない」
アウレリオルを怒らせないように神妙な顔で話を聞いていると、イアリスが両眉を下げて俺に優しく声をかけてきた。
「ハル、貴方は精霊使いなのです。精霊の力を行使する存在であり、私たちの上に立つ者としてもっと堂々としていて良いのですよ?」
「とは言っても……俺は俺なので。それに堅苦しいのは苦手だし、俺としても今まで通り接してもらう方が助かるんで」
俺が困っていると、シアンが側に寄ってきて背中をバンと叩く。
横にいたラウディが、シアンをじっと睨みつけるとおおこわっと言いながら少し俺から距離を取った。
「すっかりラウディを手懐けちまったな。まあ、俺様も気楽な付き合いを希望したいところだ。しっかし、ラウディ。お前も雰囲気が変わったよな」
「……シアン、近い。離れて」
「はいはいっと。ったく、お前は好きな相手にはべったりだよな。これじゃハルとまともに喋れもしないな」
「ははは……ラウディ、あの……俺は逃げないからさ」
ラウディがくっついてくるから、ものすごく歩きにくい。
アウレリオルはこっちを見ながらため息を吐いてるし……俺のせいじゃないんだけどなぁ。
アウレリオルに付いて行くと、行き止まりに辿り着いた。
見た感じ普通の岩壁に見えるんだけど、ここに恵みの宝珠があるってことか。
「では、今から全員で封印を解いていく。ラウディ」
アウレリオルの声に答えるように、ラウディが岩壁に向けてすっと手を突き出した。
「土よ、我らを導く入り口を開け」
ラウディの声と共に岩壁が下へ沈み、洞窟の入り口が現れる。
「光よ、道を示せ!」
次にアウレリオルが手を前へ突き出すと、眩い光が洞窟を突き抜けた。
すると、パリンという音が耳に届く。
「風よ、みんなを導いて」
今度はウィンが手のひらを突き出す。すると、穏やかな風が洞窟をすり抜けていった。
また、パリンという音がする。一体何の音だろう? 封印を解いた音なのか?
「水よ、障害を洗い流しなさい」
続いて、イアリスが同じように手のひらを向けると今度は足元に転がっていた岩などの障害物が綺麗に流されていった。
そしてまたパリンと音がする。やっぱり、一人一人が力を行使するたびに結界を破っているみたいだ。
「闇よ、全てを飲み込め」
シアンがギュっと拳を握り込むと、手のひらから溢れ出した闇が行く手を塞いでいた壁を飲みこみ道を切り開く。
同じくパリンという音がした。
「すごい……ボクも見てていいのかな?」
「カティも頑張ったからな。見るだけならいいだろ? 炎よ、辺りを照らして道を作れ!」
ヴォルカングは隣のカティに言い聞かせながら、手のひらから飛ばした炎で洞窟の中に灯りをともしていく。
最後にパリンという音がして洞窟の奥が見えるようになると、突き当たりに祭壇のようなものが見えてきた。
「ハルよ、祭壇に置いてあるものこそが恵みの宝珠。さあ、宝珠を手に取るのだ」
「分かりました」
俺はアウレリオルに促され、今度は俺一人で最奥の祭壇へ歩いていく。
緊張しながら祭壇へ続く階段を数段のぼり、台の上に置いてあった恵みの宝珠に触れる。
宝珠は最初は丸い水晶玉みたいだったのに、俺が触れた途端に恵みのベルと共鳴して光り始めた。
俺が驚いていると、その光は俺の腕に集中して一つの美しいブレスレットへ形を変える。
恵みの樹と三女神が描かれた金色のブレスレットの真ん中には小さくなった宝珠が光り輝いていた。
「そういやベルと宝珠ってくっつくんだったな。しばらくそんなヤツはいなかったからすっかり忘れてたな」
「そうですね。シアンが忘れるのも無理はありません。運命の三女神の寵愛を受けた精霊使いはいつ以来でしょうか?」
イアリスとシアンが昔のことを思い出していると、横からウィンもやってきて話に加わる。
精霊たちも一旦姿勢を正して、話を聞く体勢に切り替わる。
「ハルよ、今から我らの力で我らが守る秘宝の封印を解きに行く。恵みのベルが鳴らされたということは、恵みの宝珠を使用する者が現れたという報せ。我らは使命を果たさなくてはならない」
アウレリオルを怒らせないように神妙な顔で話を聞いていると、イアリスが両眉を下げて俺に優しく声をかけてきた。
「ハル、貴方は精霊使いなのです。精霊の力を行使する存在であり、私たちの上に立つ者としてもっと堂々としていて良いのですよ?」
「とは言っても……俺は俺なので。それに堅苦しいのは苦手だし、俺としても今まで通り接してもらう方が助かるんで」
俺が困っていると、シアンが側に寄ってきて背中をバンと叩く。
横にいたラウディが、シアンをじっと睨みつけるとおおこわっと言いながら少し俺から距離を取った。
「すっかりラウディを手懐けちまったな。まあ、俺様も気楽な付き合いを希望したいところだ。しっかし、ラウディ。お前も雰囲気が変わったよな」
「……シアン、近い。離れて」
「はいはいっと。ったく、お前は好きな相手にはべったりだよな。これじゃハルとまともに喋れもしないな」
「ははは……ラウディ、あの……俺は逃げないからさ」
ラウディがくっついてくるから、ものすごく歩きにくい。
アウレリオルはこっちを見ながらため息を吐いてるし……俺のせいじゃないんだけどなぁ。
アウレリオルに付いて行くと、行き止まりに辿り着いた。
見た感じ普通の岩壁に見えるんだけど、ここに恵みの宝珠があるってことか。
「では、今から全員で封印を解いていく。ラウディ」
アウレリオルの声に答えるように、ラウディが岩壁に向けてすっと手を突き出した。
「土よ、我らを導く入り口を開け」
ラウディの声と共に岩壁が下へ沈み、洞窟の入り口が現れる。
「光よ、道を示せ!」
次にアウレリオルが手を前へ突き出すと、眩い光が洞窟を突き抜けた。
すると、パリンという音が耳に届く。
「風よ、みんなを導いて」
今度はウィンが手のひらを突き出す。すると、穏やかな風が洞窟をすり抜けていった。
また、パリンという音がする。一体何の音だろう? 封印を解いた音なのか?
「水よ、障害を洗い流しなさい」
続いて、イアリスが同じように手のひらを向けると今度は足元に転がっていた岩などの障害物が綺麗に流されていった。
そしてまたパリンと音がする。やっぱり、一人一人が力を行使するたびに結界を破っているみたいだ。
「闇よ、全てを飲み込め」
シアンがギュっと拳を握り込むと、手のひらから溢れ出した闇が行く手を塞いでいた壁を飲みこみ道を切り開く。
同じくパリンという音がした。
「すごい……ボクも見てていいのかな?」
「カティも頑張ったからな。見るだけならいいだろ? 炎よ、辺りを照らして道を作れ!」
ヴォルカングは隣のカティに言い聞かせながら、手のひらから飛ばした炎で洞窟の中に灯りをともしていく。
最後にパリンという音がして洞窟の奥が見えるようになると、突き当たりに祭壇のようなものが見えてきた。
「ハルよ、祭壇に置いてあるものこそが恵みの宝珠。さあ、宝珠を手に取るのだ」
「分かりました」
俺はアウレリオルに促され、今度は俺一人で最奥の祭壇へ歩いていく。
緊張しながら祭壇へ続く階段を数段のぼり、台の上に置いてあった恵みの宝珠に触れる。
宝珠は最初は丸い水晶玉みたいだったのに、俺が触れた途端に恵みのベルと共鳴して光り始めた。
俺が驚いていると、その光は俺の腕に集中して一つの美しいブレスレットへ形を変える。
恵みの樹と三女神が描かれた金色のブレスレットの真ん中には小さくなった宝珠が光り輝いていた。
「そういやベルと宝珠ってくっつくんだったな。しばらくそんなヤツはいなかったからすっかり忘れてたな」
「そうですね。シアンが忘れるのも無理はありません。運命の三女神の寵愛を受けた精霊使いはいつ以来でしょうか?」
イアリスとシアンが昔のことを思い出していると、横からウィンもやってきて話に加わる。
248
お気に入りに追加
916
あなたにおすすめの小説
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! 時間有る時にでも読んでください
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
囚われ王子の幸福な再婚
高菜あやめ
BL
【理知的美形宰相x不遇な異能持ち王子】ヒースダイン国の王子カシュアは、触れた人の痛みを感じられるが、自分の痛みは感じられない不思議な体質のせいで、幼いころから周囲に忌み嫌われてきた。それは側室として嫁いだウェストリン国でも変わらず虐げられる日々。しかしある日クーデターが起こり、結婚相手の国王が排除され、新国王の弟殿下・第二王子バージルと再婚すると状況が一変する……不幸な生い立ちの王子が、再婚によって少しずつ己を取り戻し、幸せになる話です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる