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第八章 真のハッピーエンディングを目指して

94.恵みの宝珠へ

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 俺がカティから恵みのベルを受け取ると、アウレリオルが代表して説明してくれるみたいだ。
 精霊たちも一旦姿勢を正して、話を聞く体勢に切り替わる。

「ハルよ、今から我らの力で我らが守る秘宝の封印を解きに行く。恵みのベルが鳴らされたということは、恵みの宝珠を使用する者が現れたという報せ。我らは使命を果たさなくてはならない」

 アウレリオルを怒らせないように神妙な顔で話を聞いていると、イアリスが両眉を下げて俺に優しく声をかけてきた。

「ハル、貴方は精霊使いなのです。精霊の力を行使する存在であり、私たちの上に立つ者としてもっと堂々としていて良いのですよ?」
「とは言っても……俺は俺なので。それに堅苦しいのは苦手だし、俺としても今まで通り接してもらう方が助かるんで」

 俺が困っていると、シアンが側に寄ってきて背中をバンと叩く。
 横にいたラウディが、シアンをじっと睨みつけるとおおこわっと言いながら少し俺から距離を取った。

「すっかりラウディを手懐けちまったな。まあ、俺様も気楽な付き合いを希望したいところだ。しっかし、ラウディ。お前も雰囲気が変わったよな」
「……シアン、近い。離れて」
「はいはいっと。ったく、お前は好きな相手にはべったりだよな。これじゃハルとまともに喋れもしないな」
「ははは……ラウディ、あの……俺は逃げないからさ」

 ラウディがくっついてくるから、ものすごく歩きにくい。
 アウレリオルはこっちを見ながらため息を吐いてるし……俺のせいじゃないんだけどなぁ。
 アウレリオルに付いて行くと、行き止まりに辿り着いた。
 見た感じ普通の岩壁に見えるんだけど、ここに恵みの宝珠があるってことか。

「では、今から全員で封印を解いていく。ラウディ」

 アウレリオルの声に答えるように、ラウディが岩壁に向けてすっと手を突き出した。
 
「土よ、我らを導く入り口を開け」

 ラウディの声と共に岩壁が下へ沈み、洞窟の入り口が現れる。

「光よ、道を示せ!」

 次にアウレリオルが手を前へ突き出すと、まばゆい光が洞窟を突き抜けた。
 すると、パリンという音が耳に届く。
 
「風よ、みんなを導いて」

 今度はウィンが手のひらを突き出す。すると、穏やかな風が洞窟をすり抜けていった。
 また、パリンという音がする。一体何の音だろう? 封印を解いた音なのか?

「水よ、障害を洗い流しなさい」

 続いて、イアリスが同じように手のひらを向けると今度は足元に転がっていた岩などの障害物が綺麗に流されていった。
 そしてまたパリンと音がする。やっぱり、一人一人が力を行使するたびに結界を破っているみたいだ。

「闇よ、全てを飲み込め」

 シアンがギュっと拳を握り込むと、手のひらから溢れ出した闇が行く手を塞いでいた壁を飲みこみ道を切り開く。
 同じくパリンという音がした。

「すごい……ボクも見てていいのかな?」
「カティも頑張ったからな。見るだけならいいだろ? 炎よ、辺りを照らして道を作れ!」

 ヴォルカングは隣のカティに言い聞かせながら、手のひらから飛ばした炎で洞窟の中に灯りをともしていく。
 最後にパリンという音がして洞窟の奥が見えるようになると、突き当たりに祭壇のようなものが見えてきた。

「ハルよ、祭壇に置いてあるものこそが恵みの宝珠。さあ、宝珠を手に取るのだ」
「分かりました」

 俺はアウレリオルに促され、今度は俺一人で最奥の祭壇へ歩いていく。
 緊張しながら祭壇へ続く階段を数段のぼり、台の上に置いてあった恵みの宝珠に触れる。
 宝珠は最初は丸い水晶玉みたいだったのに、俺が触れた途端に恵みのベルと共鳴して光り始めた。
 俺が驚いていると、その光は俺の腕に集中して一つの美しいブレスレットへ形を変える。

 恵みの樹と三女神が描かれた金色のブレスレットの真ん中には小さくなった宝珠が光り輝いていた。
 
「そういやベルと宝珠ってくっつくんだったな。しばらくそんなヤツはいなかったからすっかり忘れてたな」
「そうですね。シアンが忘れるのも無理はありません。運命の三女神の寵愛を受けた精霊使いはいつ以来でしょうか?」

 イアリスとシアンが昔のことを思い出していると、横からウィンもやってきて話に加わる。
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