上 下
92 / 110
第八章 真のハッピーエンディングを目指して

89.三女神は語る

しおりを挟む
 三女神は俺の側にやってきて、にこやかに話を続けてくれるみたいだ。
 俺は内心緊張しながら、耳を傾ける。

「ユアンヌ、そんな可愛い顔をしてもダメよ。ハル、わたくしが精霊神様の許可を得て貴方をこの世界へ導きました。ですので、驚かせた原因はわたくしにあります。ごめんなさい」

 モモリーヌと名乗った女神様が、俺に向かって丁寧に頭を下げてくれた。
 神々しくて美人な女神様に頭を下げられると、人間の俺はなんだか気まずいし困ってしまう。
 慌てて、いやいやいや! と取り乱しながら手を振った。

「ユアンヌ、モモリーヌ。元はと言えば私の想像した世界の民の人生を導けなかった私の責任なのです。ユアンヌは、平凡な人生に天運と言う名の祝福を与える女神。彼女はハルミリオンの人生に、ほんの少しのスパイスを加えたつもりでした」
「そのスパイスの分量をちょーっと間違えちゃったというか……正確にはハルミリオンのパパを大きな壁として、乗り越えてもらおうと思ったんだけど……」
「わたくしが目を離した隙に、ユアンヌの悪戯心が少し多めに作用してしまったのです。ハルミリオンには悪いことをしました。ユアンヌは少しだけ感覚が独特なのです」

 なんか色々納得できない部分はあるんだけど……まず話についていくのがやっとだ。
 つまり、運命の三女神はこのラブスピ世界を創った神ってことだよな?
 それで、ユアンヌが分量を間違えたって……そのせいで俺が巻き込まれて、ハルミリオンは嫌な目にあったってことか?

 でも、俺が選ばれた理由ってなんだろう?
 この出来事自体をゲーム世界と捉えれば、答えが導けるのかもしれない。

「正直、納得できないことだらけです。つまり、俺はユアンヌ様の失敗によって元いた世界からこの世界へ引っ張られて……ハルミリオンは大きすぎる壁を越えることができなかったってことですよね?」

 俺が言いきると、ユアンヌはしゅんとしてしまった。
 あ……つい女神に対して言いすぎたかもしれない。

「ハルの言う通りです。ユアンヌ、天運の女神として何事も公平に与えなければ人間はただ不幸になってしまいます。目を離したわたくしの責任も重いですが……」

 モモリーヌまでしゅんとし始めた? なんか悪いこと言っちゃったかな?
 でも、俺は間違ってないよな。事実俺は巻き込まれて、ハルミリオンと妹もひどい目にあってる訳だし。

「二人とも、今は反省会をしている場合ではありません。ハル、貴方に謝らなくてはいけないことは多くありますが……起こってしまったことをなかったことにすることはできません。どうか寛大な心で許していただけませんか?」
「はあ……。俺はここまで来たら開き直っているのでもういいですけど。ハルミリオンのことは正直怒ってます。なので、貴方たちが女神と言うのならば、ハルミリオンを助けるために力を貸してください」

 運命の三女神というくらいだし、話を聞いている限りはラブスピ世界を創造した女神ってことだ。
 ということは……ゲームとして考えたら制作側の人間ってことになる。
 だったら、プログラムを弄ってもらうこともできるよな?
 どこまでがゲームで現実なのかも、今となっては曖昧あいまいだけど……ここは図々しく言ってしまおう。

 女神様たちは何やら相談していたけど、どうやら話がまとまったみたいだ。

「ハルの言う通りですね。本来、私たちは貴方にこちらを授けるのみなのですが……精霊神に判断を仰ぐことにしましょう。必ず貴方の力になると約束します」
「ハル、ごめんね? でも、ハルもハルミリオンも……この世界に生きているみんなのことは大好きだからね!」
「その気持ちは三女神とも変わりません。この世界が皆にとって過ごしやすい素敵な世界であるように、わたくしも常に見守っています」

 そういうと、女神様たちはいっせいに天に手をかざす。すると、俺の手には銀色に輝くベルのようなものが現れた。
 この展開はゲームでも一度も見たことがなかった。
 そもそも、運命の三女神を初めて見たんだから……俺は、真のハッピーエンディングの道を切り開いたんだよな?
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! 時間有る時にでも読んでください

R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)

黒崎由希
BL
   目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。  しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ? ✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻  …ええっと…  もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m .

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

囚われ王子の幸福な再婚

高菜あやめ
BL
【理知的美形宰相x不遇な異能持ち王子】ヒースダイン国の王子カシュアは、触れた人の痛みを感じられるが、自分の痛みは感じられない不思議な体質のせいで、幼いころから周囲に忌み嫌われてきた。それは側室として嫁いだウェストリン国でも変わらず虐げられる日々。しかしある日クーデターが起こり、結婚相手の国王が排除され、新国王の弟殿下・第二王子バージルと再婚すると状況が一変する……不幸な生い立ちの王子が、再婚によって少しずつ己を取り戻し、幸せになる話です

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

処理中です...