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第八章 真のハッピーエンディングを目指して
88.白の世界で
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俺が宣言すると辺りの人々も一緒にどよめいていたけど、そのうちにパチパチと拍手が沸き起こる。
精霊使いが精霊と心を通わせるのは当然のことではあるけど、絆を結ぶというのは人間にとって偉大なことという設定だからだ。
「そっか。ハルはエーテルヴェールに残るんだ。じゃあ……お別れだね」
「カティ……」
選ばれなかった精霊使いの卵は、精霊との記憶を消されて元の生活へ戻るか、アビスヘイヴンの地に残って精霊使いの補佐としてアビスヘイヴンの地を守っていくかの二択だ。
元の生活へ戻る場合は今まで精霊界で過ごした記憶を消される上に、精霊使いとしての力もなくなってしまう。
アビスヘイヴンへ残る場合は、記憶は消されないけど精霊とは大鏡の間で状況報告のためだけに会うことを許されるのみだ。
カティの場合、ヴォルカングと会話はできても共に並んで過ごすことはできなくなる。
だったら、忘れてしまって元の生活へ戻る方がいいという選択肢もある。
「王様、ボクはアビスヘイヴンに残ります。最後まで精霊使いの卵として、ハルを支えていきたいです」
ライバルが残ると言ってくれる場合、ライバルの内部好感度も高いことを示している。
つまり、カティの俺への好感度が高いということだ。
カティには一番冷たく接してきたはずなのに、いつの間に好感度があがっていたんだろう?
「ボクはルカンや精霊様たちと過ごした時間を忘れたくないから……ハルを手伝わせて!」
「カティ……ありがとう」
俺がカティにお礼を言うと、急に辺りが輝いて何も見えなくなっていく。
「恵みの樹が? え、ハル!」
俺の身体が光に包まれていくのが分かる。驚いたカティと王様が何か声をかけ続けてくれているけど、その声もだんだん遠のいていった。
+++
眩しさに負けて目を瞑っていたけど、収まってきたのを感じてそっと目を開けた。
すると、目の前には静かな空間が広がっていた。
空気は澄んでいるけど、少しひんやりとしているような気もする。
すぐ側には川が流れていて、何故か俺の育てていた恵みの樹もある。
全体的に白っぽい感じはするけど、地に足を付けている感じというか……現実感を感じない。
ここは一体どこなのだろう?
「突然呼び出してしまってごめんなさい。異世界のハル」
「来てくれてありがとう! 私たちの世界へようこそー」
「わたくしたちは……運命の三女神。あなたをこの世界へ導いた者です」
急に声をかけられてハッとすると、俺の目の前に三人の美しい女性がふわりと浮いていた。
一人は優しい声色で、金髪の長い髪をなびかせている穏やかな女性。
一人は可愛らしい声色で、黒の可愛いショートカットの明るい女性。
一人は落ち着いた声色で、薄茶の緩いウェーブがかかった肩までの髪の真面目そうな女性。
運命の三女神……確かに、服装は緩やかな桃色のローブのような……絵画で見る女神と呼ばれるような美しい見た目の女性たちだ。
俺がぼうっとしていると、黒の女性が俺の近くに飛んできてじーっと俺の顔を眺めてきた。
「君がハルかぁ。わたしはユアンヌ。天運の女神だよー」
「ユアンヌ、ハルが驚いているわ。私はマキーヌ。創造の女神です」
「わたくしはモモリーヌ。定めの女神です。ハル、貴方に話があってこちらに来てもらいました」
三人とも性格が異なる女神みたいだ。女神にしては不思議な名前だけど……これもゲームと何か関係があるのか?
俺が静かに頷くと、三人は微笑んでくれた。
「私から説明しましょう。ハル、貴方をこの世界へ呼んだのはこの世界に生じた不和を正してもらうためでした。その不和については……」
「わたしから説明するね。わたしは生きとし生ける者にちょっとした道を授ける女神。だけど……その具合を間違えちゃったというか……」
ユアンヌと名乗った女神が、テヘペロとでもいうような可愛らしい表情を向けてきた。
……可愛いから許しちゃいそうになるけど、女神様もしかしてやらかした?
精霊使いが精霊と心を通わせるのは当然のことではあるけど、絆を結ぶというのは人間にとって偉大なことという設定だからだ。
「そっか。ハルはエーテルヴェールに残るんだ。じゃあ……お別れだね」
「カティ……」
選ばれなかった精霊使いの卵は、精霊との記憶を消されて元の生活へ戻るか、アビスヘイヴンの地に残って精霊使いの補佐としてアビスヘイヴンの地を守っていくかの二択だ。
元の生活へ戻る場合は今まで精霊界で過ごした記憶を消される上に、精霊使いとしての力もなくなってしまう。
アビスヘイヴンへ残る場合は、記憶は消されないけど精霊とは大鏡の間で状況報告のためだけに会うことを許されるのみだ。
カティの場合、ヴォルカングと会話はできても共に並んで過ごすことはできなくなる。
だったら、忘れてしまって元の生活へ戻る方がいいという選択肢もある。
「王様、ボクはアビスヘイヴンに残ります。最後まで精霊使いの卵として、ハルを支えていきたいです」
ライバルが残ると言ってくれる場合、ライバルの内部好感度も高いことを示している。
つまり、カティの俺への好感度が高いということだ。
カティには一番冷たく接してきたはずなのに、いつの間に好感度があがっていたんだろう?
「ボクはルカンや精霊様たちと過ごした時間を忘れたくないから……ハルを手伝わせて!」
「カティ……ありがとう」
俺がカティにお礼を言うと、急に辺りが輝いて何も見えなくなっていく。
「恵みの樹が? え、ハル!」
俺の身体が光に包まれていくのが分かる。驚いたカティと王様が何か声をかけ続けてくれているけど、その声もだんだん遠のいていった。
+++
眩しさに負けて目を瞑っていたけど、収まってきたのを感じてそっと目を開けた。
すると、目の前には静かな空間が広がっていた。
空気は澄んでいるけど、少しひんやりとしているような気もする。
すぐ側には川が流れていて、何故か俺の育てていた恵みの樹もある。
全体的に白っぽい感じはするけど、地に足を付けている感じというか……現実感を感じない。
ここは一体どこなのだろう?
「突然呼び出してしまってごめんなさい。異世界のハル」
「来てくれてありがとう! 私たちの世界へようこそー」
「わたくしたちは……運命の三女神。あなたをこの世界へ導いた者です」
急に声をかけられてハッとすると、俺の目の前に三人の美しい女性がふわりと浮いていた。
一人は優しい声色で、金髪の長い髪をなびかせている穏やかな女性。
一人は可愛らしい声色で、黒の可愛いショートカットの明るい女性。
一人は落ち着いた声色で、薄茶の緩いウェーブがかかった肩までの髪の真面目そうな女性。
運命の三女神……確かに、服装は緩やかな桃色のローブのような……絵画で見る女神と呼ばれるような美しい見た目の女性たちだ。
俺がぼうっとしていると、黒の女性が俺の近くに飛んできてじーっと俺の顔を眺めてきた。
「君がハルかぁ。わたしはユアンヌ。天運の女神だよー」
「ユアンヌ、ハルが驚いているわ。私はマキーヌ。創造の女神です」
「わたくしはモモリーヌ。定めの女神です。ハル、貴方に話があってこちらに来てもらいました」
三人とも性格が異なる女神みたいだ。女神にしては不思議な名前だけど……これもゲームと何か関係があるのか?
俺が静かに頷くと、三人は微笑んでくれた。
「私から説明しましょう。ハル、貴方をこの世界へ呼んだのはこの世界に生じた不和を正してもらうためでした。その不和については……」
「わたしから説明するね。わたしは生きとし生ける者にちょっとした道を授ける女神。だけど……その具合を間違えちゃったというか……」
ユアンヌと名乗った女神が、テヘペロとでもいうような可愛らしい表情を向けてきた。
……可愛いから許しちゃいそうになるけど、女神様もしかしてやらかした?
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