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第八章 真のハッピーエンディングを目指して
80.最後の中間報告
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カティが俺の家にやってきた次の日、信じられないことにまたカティが朝から訪ねてきた。
こんなに来る必要はないだろと追い返そうとしたんだけど、俺も忘れていた最後の中間報告の日だと教えに来てくれた。
昨日は俺の方が勝ってるはずだって言ったけど今回は育成もできてないし、実はカティに負けているかもしれない。
どちらにしても、最後に巻き返せばいい話だ。
「ハルー? 準備できた?」
「だから、いつも来るのが早いって言ってるだろ」
「だって、大切な日なんだから早めの方がいいでしょ?」
カティの顔も見飽きてきたけど、このやり取りもあとは最終報告の日を残すのみってことだよな。
そう思うと、あっという間にここでの日々が過ぎていった気がする。
カティに会うたび、妙なイラつきが湧いて来て冷たく対応した気がするけど……カティは俺に嫌味は言ってもハルミリオンがしたような嫌がらせはしてこなかった。
「なに? 変な顔しちゃって。緊張してるの?」
「誰が変な顔だよ。別に。このやり取りをするのも残りわずかだなって思っただけだ」
「ふーん? もしかして、ボクのこと好きになった?」
「違う」
秒で返すと、ひどーい! といつもの甘ったるい声と膨らむ頬で返された。
前言撤回。やっぱりイラっとする。
カティを無視しながら中間報告のために神殿へ向かうと、笑顔の精霊たちに迎え入れられる。
二人で大鏡の前へ立つと、王様がすでにスタンバっていた。
「二人とも、今までよく頑張ってくれた。見ると恵みの樹も良く育っているようだ。後もう少し、最後まで気を抜かずに育ててくれ」
「はい、王様!」
「はい、しっかりと育成に励みます」
俺とカティが答えると、王様はいつもと同じように俺たちへ評価を下した。
俺の予想通り、わずかだけど俺の方が育っていると判断された。
「またハルに負けちゃった……でも、最後は負けないよ!」
「望むところだ」
「ふむ。二人とも良い表情になったな。恵みの樹の果実を食すのが楽しみだ。では、アビスへイヴンで会おう」
王様の言葉も終わり、今度は精霊たちから言葉をもらう……はずだったんだけど。
なんだか以下省略のように、俺たちは精霊たちに囲まれてしまった。
「よーしよしよし……一時はどうなったかと思ったが、頑張ったなハル。カティも、もうちょい頑張れ」
「シアン……ハルの髪が乱れてしまいますよ。ハル、良く頑張りましたね。でも無理は禁物ですよ。カティ、貴方もここまでよく頑張りました」
急な頭なでなで回にでもなったのか、シアンとイアリスになでられる。
シアンにはやや乱暴に、イアリスには優しく髪を梳くようになでられて、俺たちはありがとうございますとお礼を言う。
次にやってきたのはルカンとウィンだ。
「カティー! 大丈夫だ、俺っちがついてるからな! ハル……お前には絶対負けねぇ! でも、お前の頑張りは認める」
「ルカン……暑苦しい。ハル、元気になって良かった。バードも喜んでる。カティも最後まで頑張って」
珍しい組み合わせだけど、意外といいコンビなのかもしれない。
ヴォルカングは相変わらずだけど、俺の頭もポンポンと撫でてくれた。
ウィンは平等に、俺たちの頭を優しくなでていく。
「お前たち……もっと普通にできないのか? まあいい。ハル、ここまでよくやった。だが、自分の出来る範囲を越えぬようにな。カティ、お前もこの一週間はお前なりの気遣いができていたと我も思う」
「レリオル様が……ボクのことを褒めてくれてる!」
「……だが、愛称を呼ぶことは許可していない」
「……はぁい」
このやり取りも何回見たことか分からないが、アウレリオルまで俺たちの頭をポンとなでたことには驚いた。
カティがふわぁとか言って目をハートにしているのは、見ないふりをしておこう。
俺もありがとうございますとお礼を言って、最後に残ったラウディを見上げる。
ラウディはここでは言葉を発しないけど、俺の頭を優しくなでてくれた。
こんなに来る必要はないだろと追い返そうとしたんだけど、俺も忘れていた最後の中間報告の日だと教えに来てくれた。
昨日は俺の方が勝ってるはずだって言ったけど今回は育成もできてないし、実はカティに負けているかもしれない。
どちらにしても、最後に巻き返せばいい話だ。
「ハルー? 準備できた?」
「だから、いつも来るのが早いって言ってるだろ」
「だって、大切な日なんだから早めの方がいいでしょ?」
カティの顔も見飽きてきたけど、このやり取りもあとは最終報告の日を残すのみってことだよな。
そう思うと、あっという間にここでの日々が過ぎていった気がする。
カティに会うたび、妙なイラつきが湧いて来て冷たく対応した気がするけど……カティは俺に嫌味は言ってもハルミリオンがしたような嫌がらせはしてこなかった。
「なに? 変な顔しちゃって。緊張してるの?」
「誰が変な顔だよ。別に。このやり取りをするのも残りわずかだなって思っただけだ」
「ふーん? もしかして、ボクのこと好きになった?」
「違う」
秒で返すと、ひどーい! といつもの甘ったるい声と膨らむ頬で返された。
前言撤回。やっぱりイラっとする。
カティを無視しながら中間報告のために神殿へ向かうと、笑顔の精霊たちに迎え入れられる。
二人で大鏡の前へ立つと、王様がすでにスタンバっていた。
「二人とも、今までよく頑張ってくれた。見ると恵みの樹も良く育っているようだ。後もう少し、最後まで気を抜かずに育ててくれ」
「はい、王様!」
「はい、しっかりと育成に励みます」
俺とカティが答えると、王様はいつもと同じように俺たちへ評価を下した。
俺の予想通り、わずかだけど俺の方が育っていると判断された。
「またハルに負けちゃった……でも、最後は負けないよ!」
「望むところだ」
「ふむ。二人とも良い表情になったな。恵みの樹の果実を食すのが楽しみだ。では、アビスへイヴンで会おう」
王様の言葉も終わり、今度は精霊たちから言葉をもらう……はずだったんだけど。
なんだか以下省略のように、俺たちは精霊たちに囲まれてしまった。
「よーしよしよし……一時はどうなったかと思ったが、頑張ったなハル。カティも、もうちょい頑張れ」
「シアン……ハルの髪が乱れてしまいますよ。ハル、良く頑張りましたね。でも無理は禁物ですよ。カティ、貴方もここまでよく頑張りました」
急な頭なでなで回にでもなったのか、シアンとイアリスになでられる。
シアンにはやや乱暴に、イアリスには優しく髪を梳くようになでられて、俺たちはありがとうございますとお礼を言う。
次にやってきたのはルカンとウィンだ。
「カティー! 大丈夫だ、俺っちがついてるからな! ハル……お前には絶対負けねぇ! でも、お前の頑張りは認める」
「ルカン……暑苦しい。ハル、元気になって良かった。バードも喜んでる。カティも最後まで頑張って」
珍しい組み合わせだけど、意外といいコンビなのかもしれない。
ヴォルカングは相変わらずだけど、俺の頭もポンポンと撫でてくれた。
ウィンは平等に、俺たちの頭を優しくなでていく。
「お前たち……もっと普通にできないのか? まあいい。ハル、ここまでよくやった。だが、自分の出来る範囲を越えぬようにな。カティ、お前もこの一週間はお前なりの気遣いができていたと我も思う」
「レリオル様が……ボクのことを褒めてくれてる!」
「……だが、愛称を呼ぶことは許可していない」
「……はぁい」
このやり取りも何回見たことか分からないが、アウレリオルまで俺たちの頭をポンとなでたことには驚いた。
カティがふわぁとか言って目をハートにしているのは、見ないふりをしておこう。
俺もありがとうございますとお礼を言って、最後に残ったラウディを見上げる。
ラウディはここでは言葉を発しないけど、俺の頭を優しくなでてくれた。
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