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第七章 限界突破のその先は?

67.包み隠さず

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 俺はゆっくりと目を開ける。
 白い壁に囲まれた部屋は、ひんやりとした空気に包まれていた。
 少し薄暗いのは、俺が眠っていたからだろうか?
 同じくベッドに寝かされているのは分かったけど、病院と違う景色だということはすぐに理解できた。

「俺、帰ってこれたみたいだな……」

 ぽつりと呟くと、お腹の辺りでもぞりと気配が動いたのが分かる。
 誰か……寝てる?

「誰……?」

 おそるおそる声をかけると、寝ていたはずの人物はむくりと身体を起こした。
 薄暗かったけど、雰囲気で誰だかすぐに分かった。

「ラウディ? どうしてここに……」

 俺が声をかけた瞬間、ガタンという音と共にラウディが俺に飛びついてきた。
 かなり強めに抱きつかれて、戸惑いながら背中をぽんぽんと叩く。

「俺……どうしてここに?」
「……倒れてた。意識が……戻らなくて」

 ラウディの身体は小刻みに触れていた。
 ああ、そういえば嵐の時に吹き飛ばされて気を失ったんだっけ。
 あの時、結構危なかったよな。
 もしかして、ラウディが見つけて運んでくれたのか?

「……ごめんな。心配かけたみたいで。あの時は必死だったんだ。そうだ、恵みの樹は?」

 俺がたたみかけるように問うと、ラウディは答えずに俺のことをぎゅうぎゅうに抱きしめてきた。
 苦しいくらいだけど、不安にさせるほど心配させたみたいだし。俺もラウディの背中にそっと手を回す。
 
「大丈夫。ハルは……そんなに恵みの樹のことが心配?」

 ラウディが、普通に話してくれる。
 モグの言う通り、俺にそこまで気を許してくれたってことだ。
 俺はもう、覚悟を決めなくちゃいけない。
 
 正直、俺も今の状況はよく分かってはいないけど……もう嘘をつくのはやめよう。
 それに、ハルミリオンのことも助けてやりたい。
 だとしたら、俺だけじゃ力不足だ。精霊様の力も借りたい。

「それもあるんだけど……ラウディ、俺の話を聞いてくれるか? うまく話せるか分からないし、信じてもらえるのかも分からない。だけど、ラウディには知っておいて欲しいんだ」
「ハル……」

 ラウディは少し腕の力を緩めて、俺のことをじっと見つめてくる。
 暗緑色の瞳は、薄暗い中でも不安そうに揺れている。だけど、それだけじゃなくて奥底に決意のようなものを感じる気がした。
 ラウディも……不安だろうけど俺の話を聞いてくれるという意味で小さく頷いてくれる。

「じゃあ……改めて。俺の本当の名前は、桧山 晴ひやま はる。貴族でもなんでもない、平凡な暮らしをしてる。この世界ではないところから来たんだ」
「ハルは……ハルじゃない?」
「んー……説明するの下手くそだから、自信はないけど。頑張って説明するから聞いてくれ」

 俺はラウディにもう一度椅子に座ってもらい、この世界に来たところから話を始める。
 別世界から偶然この世界へ飛ばされたこと、俺にとってこの世界はラブスピリットというゲームの世界であること。
 記憶喪失ではなく、ハルという別人であること……。
 今までの経緯を包み隠さず話した。

 ラウディはその間も静かに聞いてくれていたけど、俺が頭を打って変なことを言っていると思われても仕方ないよな。
 それでも、もう嘘はつきたくなかったから……信じてもらえなくてもいいと思って全てを話した。

 全て話し終えた時もラウディは暫くの間考えこんでいたけど、俺に真剣な目を向けてきた。

「ハルは……どうしたい?」
「俺は……育成をしっかりと終わらせる。そうすると、本来はアビスヘイヴンに残って民たちを導かなきゃいけないんだろうけど……それを越えた本当のエンディングを目指す」
「エンディング?」
「そう。誰も不幸にならないハッピーエンド。それにはラウディにも力を貸してもらわないと」

 ラウディはまた考えこんでいたけど、今度はきちんと頷いてくれた。

「ハルの言っていることは難しいけど、僕はハルに協力する。その代わり……」

 ラウディはまた椅子から立って俺に近づいてくる。
 そして、急に俺の頭の後ろに手を回してグイっと引き寄せた。
 また、距離が縮まる。

 ラウディは唇が触れそうで触れない距離で、俺の唇をくすぐるように言葉を紡ぐ。
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