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第六章 バグる距離感
56.バグってる距離感
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この近距離で会話するのはキツイけど、離れてもらうためにも訳を聞くしかなさそうだ。
俺は仕方なくラウディへ質問を続ける。
「急にどうした? 中間報告も終わったし、ラウディもモグと合流してやることとかあるんじゃないの?」
「……」
ラウディは首を振る。
相変わらず穴の中で俺はラウディに覆いかぶさられてる状態だ。
身体は完全に寝ている訳じゃないけど、壁際に座ったまま追い詰められて壁ドンされてるみたいな感じと似てる。
実際に壁ドンされたことはないけど、問題は壁ドンではなく木の幹にあいている穴の中のせいでかなり密着度が高めってことだ。
つまり、ラウディがどいてくれないと俺は身動きがとれない状態だということだ。
「このままじゃ俺は動けないし、ラウディもいつまでもこの状態でいる訳にはいかないだろ? この穴の中って一人で昼寝とか読書とかする場所だろ?」
ラウディは頷いて肯定する。分かっているならさっさとどいて欲しいんだけど、どうすればいい?
俺が悩んでいると、ラウディが更に近づいてきた。
「なっ……ストップ! 近い近い!」
俺は抵抗するように両手でラウディの身体を押し返そうとするけど、全く動かない。
ラウディの方が身体もデカイし、正直俺の方が不利だ。
「……嫌?」
「この状況は、嫌っていうか……意味が分からないって言ってるだけで、ラウディが何をしたいのか分からないからそれを聞きたいだけだ」
まさか俺と会話してくれる気になってくれるとは思わなかったけど、全部じゃないからある程度誘導しないとダメかもしれない。俺は状況を打破するためにも、必死になって話しかける。
「ラウディ、どうした?」
「……来てない」
「は?」
「来るって……」
来る? なんか俺言ってたっけ?
もしかして、またお礼しに行くって言ったのに、俺が来てないとかそういうこと?
「あー……そうか。助けてもらったお礼をしに行くって言ったのに行ってないってこと? いや、あれからまだ日にち経ってないよな」
「……」
ラウディはビクともしない。納得してないってこと?
俺もいつ行くとか言ってなかったけど、社交辞令もその場のノリも通じないってことなのか。
そうか……ラウディは言われたことを全部本気にしちゃうのか。
じゃあ、余計なことを言って期待させちゃいけないってことだな。
「ちゃんと言ってなかった俺も悪いけど、ラウディも無理やり俺を連れてきただろ? 俺の予定とか聞いてないのに……これでもし、俺がアウレリオル様に呼び出されてたらどうするんだ?」
「……」
例えが意地悪なのは申し訳ないけど、この体勢も耐えられないっていうか。
距離が近いのって苦手なんだよな。別に……ラウディが嫌って訳じゃないけど、慣れない距離感だ。
「今日は呼び出されてない。だけど、育成の結果が悪かったらすぐに呼び出されてたかもな。今回は俺も期待させるようなことを言ったから悪かった。お礼、いつがいい?」
モグがいない状況だと、俺がうまくコントロールしてやらないとラウディはきっとまだ不安定なんだろう。
誰かに裏切られたことがあるからこそ、俺も裏切るんじゃないかって不安なのかもしれない。
とにかく、友達として落ち着かせてやらないとな。
「……今」
「今って……え……」
俺の返事を待たずにぎゅっと抱きしめられた。
身動きも取れない狭い空間で、ラウディの腕の中に閉じ込められる。
ふわりと優しい香りが鼻腔をくすぐり、少しだけひんやりとした体温が心地よい。
……じゃなくって!
俺、どう対応するのが正解なんだ?
俺はラウディが安心するための湯たんぽか?
少しでも落ち着いてもらうために自分の腕だけ引っ張り出して、ラウディの背中をぽんぽんと叩いてやる。
ラウディって実はスキンシップ好きなのかもしれないけど……俺は落ち着かないんだよな。
俺は仕方なくラウディへ質問を続ける。
「急にどうした? 中間報告も終わったし、ラウディもモグと合流してやることとかあるんじゃないの?」
「……」
ラウディは首を振る。
相変わらず穴の中で俺はラウディに覆いかぶさられてる状態だ。
身体は完全に寝ている訳じゃないけど、壁際に座ったまま追い詰められて壁ドンされてるみたいな感じと似てる。
実際に壁ドンされたことはないけど、問題は壁ドンではなく木の幹にあいている穴の中のせいでかなり密着度が高めってことだ。
つまり、ラウディがどいてくれないと俺は身動きがとれない状態だということだ。
「このままじゃ俺は動けないし、ラウディもいつまでもこの状態でいる訳にはいかないだろ? この穴の中って一人で昼寝とか読書とかする場所だろ?」
ラウディは頷いて肯定する。分かっているならさっさとどいて欲しいんだけど、どうすればいい?
俺が悩んでいると、ラウディが更に近づいてきた。
「なっ……ストップ! 近い近い!」
俺は抵抗するように両手でラウディの身体を押し返そうとするけど、全く動かない。
ラウディの方が身体もデカイし、正直俺の方が不利だ。
「……嫌?」
「この状況は、嫌っていうか……意味が分からないって言ってるだけで、ラウディが何をしたいのか分からないからそれを聞きたいだけだ」
まさか俺と会話してくれる気になってくれるとは思わなかったけど、全部じゃないからある程度誘導しないとダメかもしれない。俺は状況を打破するためにも、必死になって話しかける。
「ラウディ、どうした?」
「……来てない」
「は?」
「来るって……」
来る? なんか俺言ってたっけ?
もしかして、またお礼しに行くって言ったのに、俺が来てないとかそういうこと?
「あー……そうか。助けてもらったお礼をしに行くって言ったのに行ってないってこと? いや、あれからまだ日にち経ってないよな」
「……」
ラウディはビクともしない。納得してないってこと?
俺もいつ行くとか言ってなかったけど、社交辞令もその場のノリも通じないってことなのか。
そうか……ラウディは言われたことを全部本気にしちゃうのか。
じゃあ、余計なことを言って期待させちゃいけないってことだな。
「ちゃんと言ってなかった俺も悪いけど、ラウディも無理やり俺を連れてきただろ? 俺の予定とか聞いてないのに……これでもし、俺がアウレリオル様に呼び出されてたらどうするんだ?」
「……」
例えが意地悪なのは申し訳ないけど、この体勢も耐えられないっていうか。
距離が近いのって苦手なんだよな。別に……ラウディが嫌って訳じゃないけど、慣れない距離感だ。
「今日は呼び出されてない。だけど、育成の結果が悪かったらすぐに呼び出されてたかもな。今回は俺も期待させるようなことを言ったから悪かった。お礼、いつがいい?」
モグがいない状況だと、俺がうまくコントロールしてやらないとラウディはきっとまだ不安定なんだろう。
誰かに裏切られたことがあるからこそ、俺も裏切るんじゃないかって不安なのかもしれない。
とにかく、友達として落ち着かせてやらないとな。
「……今」
「今って……え……」
俺の返事を待たずにぎゅっと抱きしめられた。
身動きも取れない狭い空間で、ラウディの腕の中に閉じ込められる。
ふわりと優しい香りが鼻腔をくすぐり、少しだけひんやりとした体温が心地よい。
……じゃなくって!
俺、どう対応するのが正解なんだ?
俺はラウディが安心するための湯たんぽか?
少しでも落ち着いてもらうために自分の腕だけ引っ張り出して、ラウディの背中をぽんぽんと叩いてやる。
ラウディって実はスキンシップ好きなのかもしれないけど……俺は落ち着かないんだよな。
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