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第六章 バグる距離感
50.風の下級精霊のお手伝い
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俺はウィンの言葉の先を探るように声をかける。
「ウィン、他に俺に言いたいことがあればどうぞ」
「ん。オレも一緒に行く」
この辺りは元々ウィンの住処の近くだろうし、俺が断る理由もない。
俺も頷いて返して、一緒にバードのところまで歩いていく。
すると、俺が声をかける前にバードの方が気づいてくれた。
「あ、ハルさん。ウィン様と一緒だったのですね。今日はどうしたんですか?」
「バードのお手伝いをしたことがなかったなと思って。バードのことを探してたんだけど……ウィンとぶつかりそうになって助けてもらったところ」
「まあ、そうでしたか。ウィン様、カティさんのご様子は?」
ウィンはカティのことを見に行っていたのか。でも、ウィンはカティとそこまで仲がいいって雰囲気じゃなかった気がする。
でも、前もカティのことを助けてたのはウィンだったな。
カティの様子はアウレリオルが見に行っているのかと思ってたけど、精霊をまとめる役だって言ってたし意外と忙しいのかもな。
俺が疑問に思っていたのが表情に出ていたのか、察したバードが声をかけてくる。
「ウィン様は皆様に公平に接するお方なのです。カティ様は特定の精霊様と仲良くしがちなので、時々ウィン様が間に入るのですよ」
「へえ。ウィンも大変なんだ。じゃあ、カティにも愛称呼びは許してるのか」
「……勝手に呼ばれてるだけ」
「ああ……なるほどな」
カティはアウレリオルでさえ愛称で呼んでたもんな。ある意味あそこまで図々しさが徹底してると怒る気にもなれない。
俺の反応を見ていたのか、バードがクスクスと笑う。
「ハルさんはカティさんと気が合わなそうですよね。最初の頃のような接し方はされてませんけど……」
言いかけて、バードがはっとしたように羽で口を押さえる。ライバルはカティに嫌がらせしていたらしいからな。
それは事実なんだから、バードが何も気にすることはないことだ。
「いくら記憶がないとはいえ、やったことは事実だから。今はカティに何もする気はないよ」
「今のハルさんならそう思います。あたしもウィン様も信じてます」
ウィンも頷いてくれるので、ヴォルカングのように突っかかってこられないと思うだけで安心できる。
と、色々話していると何をしにきたか忘れてしまいそうだ。
俺は元々の目的を忘れる前に、バードに手伝いを申し出た。
「そうでした! お手伝いをしに来てくださってありがとうございます。では、折角ですのでお夕飯づくりのお手伝いをお願いします」
「俺が? 料理は積極的にしたことないから自信がないんだけど……俺で大丈夫?」
「ハルさんにはあたしの補助をしていただければいいので、大丈夫ですよ。いつもウィン様も手伝ってくださってますし。難しいことなんてないですから安心してください」
バードの優しい笑みを見ていると、俺でも大丈夫そうな気がしてきた。
分かったと返して、早速上着を脱いでシャツをまくる。
「ハルさん、近くにイアリス様が作ってくれた美味しい水が湧いている場所があるんです。そこに行って水を汲んできてくださいますか?」
「分かった。ここに置いてある木のバケツでいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
普通にバケツって言っちゃったけど、通じたらしい。
ここはゲーム世界だし作ってるのは、たぶん日本人だろうしな。
俺は言われるままに水を汲みに行く。
水道なんて便利なものはないもんな。何故か風呂は入れるけど。
言われた通りの場所に行くと、キラキラと輝く透き通った水が湧き出る小さな泉があった。
そこにバケツを突っ込んで水を汲む。
もしかしたら何往復もするかもしれないし、ある程度覚悟しておいたほうがいいかもしれないな。
俺が戻ると、ウィンがこっちと手招きしているのが見えた。
「ここは?」
「バードの調理場。いつもバードはここで料理してハルたちの分を作って運んでる」
ウィンが案内してくれたところは、木の屋根がついている場所だった。
キャンプ場の調理場みたいな感じと似てるかな。
違うのは、石と木で作られた施設ってところか。
「ウィン、他に俺に言いたいことがあればどうぞ」
「ん。オレも一緒に行く」
この辺りは元々ウィンの住処の近くだろうし、俺が断る理由もない。
俺も頷いて返して、一緒にバードのところまで歩いていく。
すると、俺が声をかける前にバードの方が気づいてくれた。
「あ、ハルさん。ウィン様と一緒だったのですね。今日はどうしたんですか?」
「バードのお手伝いをしたことがなかったなと思って。バードのことを探してたんだけど……ウィンとぶつかりそうになって助けてもらったところ」
「まあ、そうでしたか。ウィン様、カティさんのご様子は?」
ウィンはカティのことを見に行っていたのか。でも、ウィンはカティとそこまで仲がいいって雰囲気じゃなかった気がする。
でも、前もカティのことを助けてたのはウィンだったな。
カティの様子はアウレリオルが見に行っているのかと思ってたけど、精霊をまとめる役だって言ってたし意外と忙しいのかもな。
俺が疑問に思っていたのが表情に出ていたのか、察したバードが声をかけてくる。
「ウィン様は皆様に公平に接するお方なのです。カティ様は特定の精霊様と仲良くしがちなので、時々ウィン様が間に入るのですよ」
「へえ。ウィンも大変なんだ。じゃあ、カティにも愛称呼びは許してるのか」
「……勝手に呼ばれてるだけ」
「ああ……なるほどな」
カティはアウレリオルでさえ愛称で呼んでたもんな。ある意味あそこまで図々しさが徹底してると怒る気にもなれない。
俺の反応を見ていたのか、バードがクスクスと笑う。
「ハルさんはカティさんと気が合わなそうですよね。最初の頃のような接し方はされてませんけど……」
言いかけて、バードがはっとしたように羽で口を押さえる。ライバルはカティに嫌がらせしていたらしいからな。
それは事実なんだから、バードが何も気にすることはないことだ。
「いくら記憶がないとはいえ、やったことは事実だから。今はカティに何もする気はないよ」
「今のハルさんならそう思います。あたしもウィン様も信じてます」
ウィンも頷いてくれるので、ヴォルカングのように突っかかってこられないと思うだけで安心できる。
と、色々話していると何をしにきたか忘れてしまいそうだ。
俺は元々の目的を忘れる前に、バードに手伝いを申し出た。
「そうでした! お手伝いをしに来てくださってありがとうございます。では、折角ですのでお夕飯づくりのお手伝いをお願いします」
「俺が? 料理は積極的にしたことないから自信がないんだけど……俺で大丈夫?」
「ハルさんにはあたしの補助をしていただければいいので、大丈夫ですよ。いつもウィン様も手伝ってくださってますし。難しいことなんてないですから安心してください」
バードの優しい笑みを見ていると、俺でも大丈夫そうな気がしてきた。
分かったと返して、早速上着を脱いでシャツをまくる。
「ハルさん、近くにイアリス様が作ってくれた美味しい水が湧いている場所があるんです。そこに行って水を汲んできてくださいますか?」
「分かった。ここに置いてある木のバケツでいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
普通にバケツって言っちゃったけど、通じたらしい。
ここはゲーム世界だし作ってるのは、たぶん日本人だろうしな。
俺は言われるままに水を汲みに行く。
水道なんて便利なものはないもんな。何故か風呂は入れるけど。
言われた通りの場所に行くと、キラキラと輝く透き通った水が湧き出る小さな泉があった。
そこにバケツを突っ込んで水を汲む。
もしかしたら何往復もするかもしれないし、ある程度覚悟しておいたほうがいいかもしれないな。
俺が戻ると、ウィンがこっちと手招きしているのが見えた。
「ここは?」
「バードの調理場。いつもバードはここで料理してハルたちの分を作って運んでる」
ウィンが案内してくれたところは、木の屋根がついている場所だった。
キャンプ場の調理場みたいな感じと似てるかな。
違うのは、石と木で作られた施設ってところか。
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