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第六章 バグる距離感

42.家にいた先客

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 モグとラウディとティータイムを楽しんだので、一休みしてから解散することになった。
 俺の中でまだラウディとの距離感は掴めていないけど、変に避けるのもおかしいし近すぎると思ったときにはちゃんと言えばいいよな。

「ハルさん、もう眠くなっちゃいましたかぁ? なんだかぼーっとしてらっしゃいますけど」
「あ、ごめん。少し考え事。今日はそろそろ家に戻るよ。そういえば、この前渡したお菓子ももしかして食べてくれた?」
「ハルさんが差し入れしてくれたクッキーとアメですね。クッキーは全ていただきましたよぉ」
「そっか。あのクッキー……まさかな。いや、アメは気持ちが落ち着くらしいから、ぜひいっぱい食べといてくれ」

 そういやクッキーをもらった時、紫の商人が微妙に意味深だったんだよな。
 まさか……あのクッキーのせいでこの距離感とかないよな?
 
「グラウディ様がクッキーをペロリと食べてしまったんですよぉ。アメもゆっくりいただくそうです。ハルさんはいつも頑張っていらっしゃいますし、この後はゆっくり休んでくださいねぇー。お茶をご一緒できて良かったです」

 モグがニコニコすると、グラウディも二度頷いて恐らく良かったという意味を伝えてくれた。
 というか、俺が差し入れしたんだからグラウディが食べるよな……今度紫の商人に変なものが入っていなかったか聞いてみよう。
 
 それに無理に会話をしなくても、ある程度のコミュニケーションは取れそうだ。
 少し……かなり? 距離感が近づいたからこそ分かることなのかもしれないな。

 俺は広げたお茶のセットをモグと一緒に片づけていく。すると、飲み終わったポットとカップは役目を終えたとばかりにしゅわりと目の前から消えてしまった。
 精霊の能力、便利すぎる……。

「残ったのはカゴと布と……金貨の入った袋くらいか。カゴは俺が責任をもって返しにいくよ」
「では、お言葉に甘えておまかせしますー。ハルさん、また明日」
「あ、うん。また明日」

 何だか自然とまた会うような流れになったけど……別に嫌って訳じゃないからいいか。
 手を振るモグとそっと手を振る仕草をしているラウディに手を振り返しながら、お互いに違う道を進む。

「さてと、じゃあまだ時間的に余裕はありそうだけど大人しく休むかな」

 育成具合はまだ何とかなるだろう。カティもあまり力を入れていないようだし、明日またアイテム屋に行けばよさそうだ。
 ウルフのお手伝いをした分の金貨は、バードが届けてくれるって言ってたしな。

 俺は何度も歩いた家までの道を自然と辿る。
 最初にこの世界へ飛ばされたときは違和感しかなかったはずなのに、今ではこの森も見ていて安心できる場所になってしまった。

「なんだか……馴染んじゃったな」

 そんなに日は経っていないと思っていたのに、人は慣れていくものらしい。
 のんびりと散歩気分で森を歩き、家の扉をゆっくりと開く。

「ただいまっと……え?」
「おかえり」
「お帰りなさい、ハルさん!」

 俺が中へ入ると先客がいた。
 爽やかで流れるようなブルーの髪と、表情の読めない深い青の瞳。
 イアリスよりも動きやすそうなパンツを履いている風の精霊ウィンドライと風の下級精霊バードだ。
 ウィンドライは自分の家のように椅子に座って寛いでるし、バードは机の上にちょんと乗って微笑していた。

「ええと……何か御用ですか?」
「お邪魔していてすみません。先ほど手伝っていただいたお礼の金貨をお持ちしようと思ったのですが、ウィン様が一緒に行かれるとおっしゃって」
「バードが心配してたから、様子を見に来た」
「それは……どうも」

 ウィンドライに対してはいつも同じ返事をしちゃう気がするな。
 ラウディとは違った意味で絡みづらい精霊なんだよな。
 バードが机の上に置きましたと、空色の金貨の袋を羽を広げて示してくれた。
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