35 / 119
第五章 突発イベントフラグ乱立中
33.少々の本音
しおりを挟む
次の日の朝、朝食を取ってからすぐにグラウディの住処へ向かう。
本当は俺から関わりたくはないけど、リバイアリスから深刻な話も聞いてしまったし全てを無視するっていうのも気まずいからな。
グラウディの住んでいる大木まで辿り着くと、出入口の木の扉をコンコンとノックする。
少しの間待っているとキイっという音を立てながら、静かに扉が開かれていく。
「あれぇ? ハルさんだ。どうしたんですかぁ? こんな朝早くに来て下さるなんて」
「うん。グラウディ様に少し話があって。具合はどう? まだ無理そうだったらまた出直すけど」
「ゆっくり眠られたのでまだ完璧にお元気ではないですけど、いつものラウディ様に戻ってきたと思いますよぉ。一応ラウディ様に聞いてきますねぇ」
モグはぴょんっと飛び跳ねると、タタタと小走りで一旦中へ戻っていく。
暫く待っていると、モグが同じく小走りで戻ってきた。
「ラウディ様がどうぞとおっしゃってますー。というわけなので、ハルさんどうぞぉ」
「ありがとう」
モグの後について入り口をくぐる。最近グラウディと会ってばかりな気がするが仕方ない。
この辺りできちんと話しておかないとな。
グラウディはこの前食事をしたテーブルの側でいつもと変わらない雰囲気で座っていた。
なんとなく、少し落ち込んでいるような気もしなくはない。
「突然来てしまってすみません。お伝えしたいことがあってきました」
「……」
「あ、ハルさんもお座りください」
モグに席を勧められたが、すぐ終わるからと辞退する。
俺はグラウディの顔を見ながらゆっくりと話し始める。
「一言、伝えておきたくて。リバイアリス様から聞いたかもしれませんが、俺はあなたに深く関わったりしません。ですので、安心してください」
俺の言うことに耳を傾けているのかは分からないが、俺は言葉を続ける。
「今までのお気遣いには感謝しています。ですが、俺は恵みの樹を育てることだけに集中したいんです」
「……」
「ハルさん……」
モグの寂しそうな声色が聞こえると、俺も苦笑いするしかない。
金貨を稼ぐためには、モグには会わないといけないしな。
好感度を下げたい訳じゃないんだけど、言い回しって難しいな。
「必要以上に深入りはしませんが……その、冷たくするとかそういう意味ではないです。普通にというだけです。適度な距離が丁度いいのではないかと思っているだけなので。今はゆっくりとお休みください」
俺は軽く頭を下げてから、くるりと反転して背中を向ける。
グラウディはやっぱり最後まで無言だった。
「よし、これだけ言っておけば大丈夫だろう」
これで憂いなく育成に集中できそうだ。
俺は大きく息を吸い込んで深呼吸すると、ゆっくりと歩きだした。
+++
朝早めに家を出たせいか、森の中の空気は少しだけ冷たい。
でも、澄んだ空気は俺が暮らしていた世界と違ってとても爽やかで気持ちが良いものだ。
時折聞こえる鳥の声や、木々の間から差し込む柔らかい光。
どれもこれも、普段忘れている感覚な気がする。
「これがゲームの中の世界だなんて。未だに不思議な感覚なんだよな」
きょろきょろしながら森の道を進んでいくと、リバイアリスの住んでいる湖の近くに辿り着いた。
別に決めていた訳じゃないんだけど、ここに辿り着いたのは何故だろう?
「あ……ハル。おはよう」
「おはようございます」
今日もキラキラと輝く湖の側で、リバイアリスの下級精霊でユニコーンの子どものユニコが花に水やりをしていた。
そういえば、最初に手伝ったのもユニコだったよな。
昨日リバイアリスから話を聞いたから、自然と足が向いたのかもしれないな。
「もしかして、手伝いに来てくれたの?」
「はい。俺でよければ」
今日は手伝い目的って訳でもなかったけど、どうせ金貨を稼がないといけないしな。
ごちゃごちゃと考えているより、手を動かした方がいい気がする。
俺はユニコの側へ寄って、鉄のじょうろを受け取った。
本当は俺から関わりたくはないけど、リバイアリスから深刻な話も聞いてしまったし全てを無視するっていうのも気まずいからな。
グラウディの住んでいる大木まで辿り着くと、出入口の木の扉をコンコンとノックする。
少しの間待っているとキイっという音を立てながら、静かに扉が開かれていく。
「あれぇ? ハルさんだ。どうしたんですかぁ? こんな朝早くに来て下さるなんて」
「うん。グラウディ様に少し話があって。具合はどう? まだ無理そうだったらまた出直すけど」
「ゆっくり眠られたのでまだ完璧にお元気ではないですけど、いつものラウディ様に戻ってきたと思いますよぉ。一応ラウディ様に聞いてきますねぇ」
モグはぴょんっと飛び跳ねると、タタタと小走りで一旦中へ戻っていく。
暫く待っていると、モグが同じく小走りで戻ってきた。
「ラウディ様がどうぞとおっしゃってますー。というわけなので、ハルさんどうぞぉ」
「ありがとう」
モグの後について入り口をくぐる。最近グラウディと会ってばかりな気がするが仕方ない。
この辺りできちんと話しておかないとな。
グラウディはこの前食事をしたテーブルの側でいつもと変わらない雰囲気で座っていた。
なんとなく、少し落ち込んでいるような気もしなくはない。
「突然来てしまってすみません。お伝えしたいことがあってきました」
「……」
「あ、ハルさんもお座りください」
モグに席を勧められたが、すぐ終わるからと辞退する。
俺はグラウディの顔を見ながらゆっくりと話し始める。
「一言、伝えておきたくて。リバイアリス様から聞いたかもしれませんが、俺はあなたに深く関わったりしません。ですので、安心してください」
俺の言うことに耳を傾けているのかは分からないが、俺は言葉を続ける。
「今までのお気遣いには感謝しています。ですが、俺は恵みの樹を育てることだけに集中したいんです」
「……」
「ハルさん……」
モグの寂しそうな声色が聞こえると、俺も苦笑いするしかない。
金貨を稼ぐためには、モグには会わないといけないしな。
好感度を下げたい訳じゃないんだけど、言い回しって難しいな。
「必要以上に深入りはしませんが……その、冷たくするとかそういう意味ではないです。普通にというだけです。適度な距離が丁度いいのではないかと思っているだけなので。今はゆっくりとお休みください」
俺は軽く頭を下げてから、くるりと反転して背中を向ける。
グラウディはやっぱり最後まで無言だった。
「よし、これだけ言っておけば大丈夫だろう」
これで憂いなく育成に集中できそうだ。
俺は大きく息を吸い込んで深呼吸すると、ゆっくりと歩きだした。
+++
朝早めに家を出たせいか、森の中の空気は少しだけ冷たい。
でも、澄んだ空気は俺が暮らしていた世界と違ってとても爽やかで気持ちが良いものだ。
時折聞こえる鳥の声や、木々の間から差し込む柔らかい光。
どれもこれも、普段忘れている感覚な気がする。
「これがゲームの中の世界だなんて。未だに不思議な感覚なんだよな」
きょろきょろしながら森の道を進んでいくと、リバイアリスの住んでいる湖の近くに辿り着いた。
別に決めていた訳じゃないんだけど、ここに辿り着いたのは何故だろう?
「あ……ハル。おはよう」
「おはようございます」
今日もキラキラと輝く湖の側で、リバイアリスの下級精霊でユニコーンの子どものユニコが花に水やりをしていた。
そういえば、最初に手伝ったのもユニコだったよな。
昨日リバイアリスから話を聞いたから、自然と足が向いたのかもしれないな。
「もしかして、手伝いに来てくれたの?」
「はい。俺でよければ」
今日は手伝い目的って訳でもなかったけど、どうせ金貨を稼がないといけないしな。
ごちゃごちゃと考えているより、手を動かした方がいい気がする。
俺はユニコの側へ寄って、鉄のじょうろを受け取った。
475
お気に入りに追加
1,052
あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
よく効くお薬〜偏頭痛持ちの俺がエリートリーマンに助けられた話〜
高菜あやめ
BL
【マイペース美形商社マン×頭痛持ち平凡清掃員】千野はフリーのプログラマーだが収入が少ないため、夜は商社ビルで清掃員のバイトをしてる。ある日体調不良で階段から落ちた時、偶然居合わせた商社の社員・津和に助けられ……偏頭痛持ちの主人公が、エリート商社マンに世話を焼かれつつ癒される甘めの話です◾️スピンオフ1【社交的爽やかイケメン営業マン×胃弱で攻めに塩対応なSE】千野のチームの先輩SE太田が主人公です◾️スピンオフ2【元モデルの実業家×低血圧の営業マン】千野と太田のプロジェクトチーム担当営業・片瀬とその幼馴染・白石の恋模様です
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる