33 / 119
第五章 突発イベントフラグ乱立中
31.土の精霊の過去
しおりを挟む
モグと話しながら、グラウディの家を目指す。
本当は行くつもりなんてなかったのに、モグが悲しそうにしているとどうも放っておけない。
妹に対しても関わりたくないのに、結局気になって関わってしまうのと似たような感覚なのかもしれないな。
モグは妹とは違って可愛いから余計だ。
「ハルさん、あっしと一緒に行ってくださるのは嬉しいんですけど……今日の予定は大丈夫だったんですかぁ?」
「お手伝いは一つしてきたし、今もお見舞いを渡すだけだから。モグが気にすることは何もないよ」
「ハルさぁん! ハルさんはとても優しい方ですね! ハルさんのことを悪く言う方もいますけど、あっしは絶対に違うと思います。あっしのためを思って足を運んでくださるし……」
「気にしないで。って、モグ。また泣くとグラウディ様が心配しちゃうだろ」
モグはまたグスグスと泣き始めてしまったので、頭をぽんぽんと撫でて落ち着かせる。
グラウディもモグの存在には助けられているんだろうし、ただの翻訳機なだけじゃなくってモグは大切な存在なんだろうな。
歩いていくうちに、グラウディの家が見えてきた。大木は今日も静かに佇んでいる。
「あ、イアリス様だ」
モグが手を振っている先に、ちょうど出入口の扉から姿を現したリバイアリスが見えた。
リバイアリスもこちらに気づいて、優しく微笑みながら手を振り返してくれる。
俺は静かにリバイアリスの側へ寄っていった。
「リバイアリス様、こんにちは」
「ハルがモグを連れてきてくれたのですね。ラウディは今漸く眠りについたところです。感情が急に溢れてしまって疲れたのでしょう。ですので、ちょうどモグを探しに行こうと思っていたところです」
「そうでしたか。俺はお見舞いの品だけ渡そうと思っただけなので。後はモグに」
俺はモグを優しくリバイアリスへ引き渡し、ついでに持っていたクッキーと数個のアメを渡す。
リバイアリスは何度か驚いた様子で瞬きを返してくる。
「これはハルから渡した方がよいのでは?」
「今、他人が入るとグラウディ様を起こしてしまうかもしれません。それに、俺はモグを連れてきただけですから。お見舞いの品は先日助けていただいたお礼でもあるので」
「そうですか……お気遣いありがとうございます。モグ、先に中へ入っていてください。この二つはあなたからラウディに渡した方が良いでしょう」
「分かりましたぁ。ハルさん、ありがとうございました!」
モグは笑顔で手を振りながら、俺が渡した物を抱えて先に家の中へ戻っていった。
リバイアリスは……俺に話でもあるのかな。目元を和らげると、少し歩きませんか? と誘ってきた。
今までかなり冷たくしてしまったし、ここは大人しくついていくしかなさそうだ。
俺は頷いて、リバイアリスと歩調を合わせて歩き始めた。
「あなたのことだから、何も聞こうとしないのでしょうけれど……私の勝手な判断です。あなたには話を聞いて欲しいと思いました」
「そうですか。俺が聞いても平気な内容ではない気がするので、正直困っています」
たぶん、グラウディのトラウマについて話そうとしてくれてるのだろうけど……俺はトラウマを聞けるほどグラウディと打ち解けているとは思えない。
今回はたまたまカティが地雷を踏みぬいただけだし、俺だってグラウディのことはゲームで攻略する前に異世界転生してしまったから地雷を踏みぬく可能性がある。
だから、困っていると伝えたことは俺の本音だ。俺にはグラウディのトラウマを受け入れる準備なんてできない。
グラウディと深く関わり合おうともしてないのに、詳細を聞くのは申し訳ない気がした。
「ハル……そうですね。私の勝手であなたを困らせてはいけませんね。では、全ては伝えません。ただ……ラウディには以前仲良くしていた精霊使いの卵がいたのです。その子と色々あって……結果、ラウディは深く傷つきました」
確実に人間とトラブルがあったとは思っていたけど、前任の精霊使いの卵だったのか。
それじゃあ余計に人と関わるのは嫌だろうな。
本当は行くつもりなんてなかったのに、モグが悲しそうにしているとどうも放っておけない。
妹に対しても関わりたくないのに、結局気になって関わってしまうのと似たような感覚なのかもしれないな。
モグは妹とは違って可愛いから余計だ。
「ハルさん、あっしと一緒に行ってくださるのは嬉しいんですけど……今日の予定は大丈夫だったんですかぁ?」
「お手伝いは一つしてきたし、今もお見舞いを渡すだけだから。モグが気にすることは何もないよ」
「ハルさぁん! ハルさんはとても優しい方ですね! ハルさんのことを悪く言う方もいますけど、あっしは絶対に違うと思います。あっしのためを思って足を運んでくださるし……」
「気にしないで。って、モグ。また泣くとグラウディ様が心配しちゃうだろ」
モグはまたグスグスと泣き始めてしまったので、頭をぽんぽんと撫でて落ち着かせる。
グラウディもモグの存在には助けられているんだろうし、ただの翻訳機なだけじゃなくってモグは大切な存在なんだろうな。
歩いていくうちに、グラウディの家が見えてきた。大木は今日も静かに佇んでいる。
「あ、イアリス様だ」
モグが手を振っている先に、ちょうど出入口の扉から姿を現したリバイアリスが見えた。
リバイアリスもこちらに気づいて、優しく微笑みながら手を振り返してくれる。
俺は静かにリバイアリスの側へ寄っていった。
「リバイアリス様、こんにちは」
「ハルがモグを連れてきてくれたのですね。ラウディは今漸く眠りについたところです。感情が急に溢れてしまって疲れたのでしょう。ですので、ちょうどモグを探しに行こうと思っていたところです」
「そうでしたか。俺はお見舞いの品だけ渡そうと思っただけなので。後はモグに」
俺はモグを優しくリバイアリスへ引き渡し、ついでに持っていたクッキーと数個のアメを渡す。
リバイアリスは何度か驚いた様子で瞬きを返してくる。
「これはハルから渡した方がよいのでは?」
「今、他人が入るとグラウディ様を起こしてしまうかもしれません。それに、俺はモグを連れてきただけですから。お見舞いの品は先日助けていただいたお礼でもあるので」
「そうですか……お気遣いありがとうございます。モグ、先に中へ入っていてください。この二つはあなたからラウディに渡した方が良いでしょう」
「分かりましたぁ。ハルさん、ありがとうございました!」
モグは笑顔で手を振りながら、俺が渡した物を抱えて先に家の中へ戻っていった。
リバイアリスは……俺に話でもあるのかな。目元を和らげると、少し歩きませんか? と誘ってきた。
今までかなり冷たくしてしまったし、ここは大人しくついていくしかなさそうだ。
俺は頷いて、リバイアリスと歩調を合わせて歩き始めた。
「あなたのことだから、何も聞こうとしないのでしょうけれど……私の勝手な判断です。あなたには話を聞いて欲しいと思いました」
「そうですか。俺が聞いても平気な内容ではない気がするので、正直困っています」
たぶん、グラウディのトラウマについて話そうとしてくれてるのだろうけど……俺はトラウマを聞けるほどグラウディと打ち解けているとは思えない。
今回はたまたまカティが地雷を踏みぬいただけだし、俺だってグラウディのことはゲームで攻略する前に異世界転生してしまったから地雷を踏みぬく可能性がある。
だから、困っていると伝えたことは俺の本音だ。俺にはグラウディのトラウマを受け入れる準備なんてできない。
グラウディと深く関わり合おうともしてないのに、詳細を聞くのは申し訳ない気がした。
「ハル……そうですね。私の勝手であなたを困らせてはいけませんね。では、全ては伝えません。ただ……ラウディには以前仲良くしていた精霊使いの卵がいたのです。その子と色々あって……結果、ラウディは深く傷つきました」
確実に人間とトラブルがあったとは思っていたけど、前任の精霊使いの卵だったのか。
それじゃあ余計に人と関わるのは嫌だろうな。
501
お気に入りに追加
1,052
あなたにおすすめの小説
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
よく効くお薬〜偏頭痛持ちの俺がエリートリーマンに助けられた話〜
高菜あやめ
BL
【マイペース美形商社マン×頭痛持ち平凡清掃員】千野はフリーのプログラマーだが収入が少ないため、夜は商社ビルで清掃員のバイトをしてる。ある日体調不良で階段から落ちた時、偶然居合わせた商社の社員・津和に助けられ……偏頭痛持ちの主人公が、エリート商社マンに世話を焼かれつつ癒される甘めの話です◾️スピンオフ1【社交的爽やかイケメン営業マン×胃弱で攻めに塩対応なSE】千野のチームの先輩SE太田が主人公です◾️スピンオフ2【元モデルの実業家×低血圧の営業マン】千野と太田のプロジェクトチーム担当営業・片瀬とその幼馴染・白石の恋模様です
箱庭の子ども〜世話焼き侍従と訳あり王子〜
真木もぐ
BL
「他人に触られるのも、そばに寄られるのも嫌だ。……怖い」
現代ヨーロッパの小国。王子として生まれながら、接触恐怖症のため身分を隠して生活するエリオットの元へ、王宮から侍従がやって来る。ロイヤルウェディングを控えた兄から、特別な役割で式に出て欲しいとの誘いだった。
無理だと断り、招待状を運んできた侍従を追い返すのだが、この侍従、己の出世にはエリオットが必要だと言って譲らない。
しかし散らかり放題の部屋を見た侍従が、説得より先に掃除を始めたことから、二人の関係は思わぬ方向へ転がり始める。
おいおい、ロイヤルウエディングどこ行った?
世話焼き侍従×ワケあり王子の恋物語。
※は性描写のほか、注意が必要な表現を含みます。
この小説は、投稿サイト「ムーンライトノベルズ」「エブリスタ」「カクヨム」で掲載しています。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
狼騎士は異世界の男巫女(のおまけ)を追跡中!
Kokonuca.
BL
異世界!召喚!ケモ耳!な王道が書きたかったので
ある日、はるひは自分の護衛騎士と関係をもってしまう、けれどその護衛騎士ははるひの兄かすがの秘密の恋人で……
兄と護衛騎士を守りたいはるひは、二人の前から姿を消すことを選択した
完結しましたが、こぼれ話を更新いたします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる