24 / 119
第四章 黙々と育成からのお手伝いループ
22.図書館でお手伝い
しおりを挟む
俺は持ち込んだアイテムを順番に使用していく。
土を盛ったり、栄養剤をあげたりとやっていることは園芸の作業に近い。
ただ、アイテムを使用するとキラキラと光ったりする演出があるから見ていて楽しい。
「ふう……アイテムの効果が出るのは翌日以降だから、今日はこのくらいか」
肥料系は使い切りだと思っていたけど、スコップやじょうろも役目を終えると消えていくことが分かった。
やっぱりその都度アイテム屋で新しいものを買わないとダメそうだな。
「毎回仕入れてくれるんだよな? じゃないと俺は困るんだけど」
今まで溜めていた金貨はなくなってしまったし、まだもう少し時間がありそうだから今日も金貨集めをしたほうがよさそうだ。
「恵みの樹に一番近そうな場所は……」
ここから一番近いのは図書館か。
白い石造りの建物があって、建物の中に本がたくさん置いてある場所がある。
ちなみにアウレリオルがお気に入りの場所でもあり、ここに光の下級精霊がいる。
アウレリオルの住処もすぐ側にあって、白の大理石で作られた光輝く美しい建物だったはずだ。
「失礼します」
建物内に入ると、書物の乾いた香りがする。この香りは嫌いじゃない。
なるべく静かに進んでいくと、奥で本の整理をしているらしい羽の透けた可愛らしいフェアリーたちの姿が見えてきた。
彼らはいつもフェアリーの姿で作業しているけど、全員が魔法の力で一つになると人の形をとることができるという特殊な下級精霊だ。
図書館は恵みの樹の近くにある場所だったから、ゲーム内でもよくお世話になった場所でもある。
「こんにちは」
「本を読みに来たの?」
「手伝いに来ました」
三人のフェアリーがいるが、一斉に二人に喋られると誰に話しかければいいのかよく分からなくなる。
黄色い服を着たフェアリーがコッチコッチと招くので、大人しくついて行く。
「君は……ハル? ビックリしたー。図書館に来てくれるなんて」
緑の服を着たフェアリーが、透ける羽をはばたかせながら俺の周りをくるりと飛ぶ。
光の下級精霊だから、俺の印象はイマイチなのかもしれないな。
でも、冷たい態度というより興味津々って感じがする。
「今、机に積んでいた本をあっちの棚へ戻そうとしていたんだ。帯の色が一緒だから分かるかなぁ?」
「はい。この本だと青い帯だから……右から二番目の棚ですね?」
「そうそう。その調子!」
ピンクの服を着たフェアリーが元気に褒めてくれる。フェアリーたちは三人で一つの本を持って少しずつ本を戻しているし、時間がかかりそうだ。
「俺なら何冊か持てますから。この赤い帯の本は全て戻してきます」
「そう? じゃあ、お願いするね」
フェアリーたちと分担しながら俺はなるべく遠くの棚へまとめた冊数を持っていき、フェアリーたちには俺が届かない上の方の本をお願いした。
うまく分担できたみたいで、机の上に重なっていた数十冊の本は少しずつ本棚の中へ戻されていく。
何度目かの往復で机の上の本は全て片付いた。
「わあ、こんなに早く終わるなんて! レリオル様も喜んでくれるよ」
「いえ、フェアリーの皆さんがいたからこそです。上の方は俺じゃはしごがないと届きませんから」
「そうだね! 協力することは大切だってよく言われるし、ハルに手伝ってもらって良かった」
三人のフェアリーは俺の周りをふわりと飛びながら、口々にお礼を言ってくれる。
何だか、むずがゆい気分だ。
「そうだ、お手伝いしてもらったんだからお礼をしないと! 対価は大切!」
フェアリーたちが一斉に頷くと、三人が順番に俺の手のひらの上に金貨を置いてくれた。
よし、これでアイテム一個分くらいにはなりそうだ。
「お役に立てて良かったです。では、失礼します」
フェアリーたちにお礼を言って図書館を出ようとすると、ちょうど中へ入ってきた人物と目が合ってしまった。
「あ、レリオル様だ!」
「レリオル様ー! 本のお片付け終わりましたよ!」
「ハルに手伝ってもらったおかげです」
フェアリーたちはアウレリオルの側へ行って、口々に報告する。
アウレリオルは報告を聞きながら、無言で俺を見遣ってきた。
土を盛ったり、栄養剤をあげたりとやっていることは園芸の作業に近い。
ただ、アイテムを使用するとキラキラと光ったりする演出があるから見ていて楽しい。
「ふう……アイテムの効果が出るのは翌日以降だから、今日はこのくらいか」
肥料系は使い切りだと思っていたけど、スコップやじょうろも役目を終えると消えていくことが分かった。
やっぱりその都度アイテム屋で新しいものを買わないとダメそうだな。
「毎回仕入れてくれるんだよな? じゃないと俺は困るんだけど」
今まで溜めていた金貨はなくなってしまったし、まだもう少し時間がありそうだから今日も金貨集めをしたほうがよさそうだ。
「恵みの樹に一番近そうな場所は……」
ここから一番近いのは図書館か。
白い石造りの建物があって、建物の中に本がたくさん置いてある場所がある。
ちなみにアウレリオルがお気に入りの場所でもあり、ここに光の下級精霊がいる。
アウレリオルの住処もすぐ側にあって、白の大理石で作られた光輝く美しい建物だったはずだ。
「失礼します」
建物内に入ると、書物の乾いた香りがする。この香りは嫌いじゃない。
なるべく静かに進んでいくと、奥で本の整理をしているらしい羽の透けた可愛らしいフェアリーたちの姿が見えてきた。
彼らはいつもフェアリーの姿で作業しているけど、全員が魔法の力で一つになると人の形をとることができるという特殊な下級精霊だ。
図書館は恵みの樹の近くにある場所だったから、ゲーム内でもよくお世話になった場所でもある。
「こんにちは」
「本を読みに来たの?」
「手伝いに来ました」
三人のフェアリーがいるが、一斉に二人に喋られると誰に話しかければいいのかよく分からなくなる。
黄色い服を着たフェアリーがコッチコッチと招くので、大人しくついて行く。
「君は……ハル? ビックリしたー。図書館に来てくれるなんて」
緑の服を着たフェアリーが、透ける羽をはばたかせながら俺の周りをくるりと飛ぶ。
光の下級精霊だから、俺の印象はイマイチなのかもしれないな。
でも、冷たい態度というより興味津々って感じがする。
「今、机に積んでいた本をあっちの棚へ戻そうとしていたんだ。帯の色が一緒だから分かるかなぁ?」
「はい。この本だと青い帯だから……右から二番目の棚ですね?」
「そうそう。その調子!」
ピンクの服を着たフェアリーが元気に褒めてくれる。フェアリーたちは三人で一つの本を持って少しずつ本を戻しているし、時間がかかりそうだ。
「俺なら何冊か持てますから。この赤い帯の本は全て戻してきます」
「そう? じゃあ、お願いするね」
フェアリーたちと分担しながら俺はなるべく遠くの棚へまとめた冊数を持っていき、フェアリーたちには俺が届かない上の方の本をお願いした。
うまく分担できたみたいで、机の上に重なっていた数十冊の本は少しずつ本棚の中へ戻されていく。
何度目かの往復で机の上の本は全て片付いた。
「わあ、こんなに早く終わるなんて! レリオル様も喜んでくれるよ」
「いえ、フェアリーの皆さんがいたからこそです。上の方は俺じゃはしごがないと届きませんから」
「そうだね! 協力することは大切だってよく言われるし、ハルに手伝ってもらって良かった」
三人のフェアリーは俺の周りをふわりと飛びながら、口々にお礼を言ってくれる。
何だか、むずがゆい気分だ。
「そうだ、お手伝いしてもらったんだからお礼をしないと! 対価は大切!」
フェアリーたちが一斉に頷くと、三人が順番に俺の手のひらの上に金貨を置いてくれた。
よし、これでアイテム一個分くらいにはなりそうだ。
「お役に立てて良かったです。では、失礼します」
フェアリーたちにお礼を言って図書館を出ようとすると、ちょうど中へ入ってきた人物と目が合ってしまった。
「あ、レリオル様だ!」
「レリオル様ー! 本のお片付け終わりましたよ!」
「ハルに手伝ってもらったおかげです」
フェアリーたちはアウレリオルの側へ行って、口々に報告する。
アウレリオルは報告を聞きながら、無言で俺を見遣ってきた。
449
お気に入りに追加
1,049
あなたにおすすめの小説
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました!
※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています

狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる