22 / 119
第四章 黙々と育成からのお手伝いループ
20.いざ、育成へ
しおりを挟む
効率だけで言ったら、精霊に力を送ってもらうように頼む方がいい。
だが、力を送ってもらうと一番分かりやすく精霊の好感度をあげることに繋がってしまう。
だとしたら、多少効率が悪かろうがアイテムを使って自分で世話する方がいい。
「分かってるんで大丈夫です。この手持ちの金貨で買える分だけアイテムをください。まずは一通り」
「ハルがええなら、コッチはかまへんけどな。 おお? 結構金貨を集めてるやないか。じゃあ、少しおまけしたろ」
今までのお手伝い分の金貨は、手のひらサイズの布袋半分の量くらいになっていた。
十数枚だったはずなのに、今朝グラウディから持たされた分が思っていたより多かったんだよな。
布袋ごと渡すと、紫の商人がいくつかのアイテムを見繕ってくれる。
水色のじょうろと土色のスコップ。光の肥料に青の風袋。闇の防虫薬と炎の活力剤。
精霊の力が込められた一通りのアイテムだ。
「初回限定や。詰め合わせセットで持ち運び用の紫印のリュックつきやで。ええやろ? 大きさは堪忍な。せやけど、重量軽減が付いてる優れものや」
紫の商人はキャンプ用くらいの大きさの紫のリュックサックの中に、俺が買ったものを全て詰めてくれた。
肥料とかが思っていたよりかさばりそうだったし、持ち運べなかったらどうしようと思っていたので正直助かる。
「ありがとうございます。ありがたく使わせていただきます」
「ええよええよ。カティやといつも精霊様へのプレゼントしか買わへんから、久々にアイテム売ったわーって感じや」
「そういえば売ってましたね。俺には必要ありませんが」
「ハハ。しっかし、精霊様の力を間接的に借りるやなんて面白いやっちゃな。気に入った! ついでにコイツも付けたるわ」
楽しそうな紫の商人に可愛らしく包装されたクッキーらしきものを渡された。
こんなのアイテム屋のラインナップにあったか? 記憶にない。
「今日は天気もええし、樹のお世話しながら食べてや。そのクッキー、商人のおススメやで」
楽しそうな表情が気になったけど、悪意はなさそうだし普通のクッキーらしいからありがたくもらっておくことにした。
つぶれないようにリュックの一番上にクッキーもしまい、身体を屈めて紫のリュックを背負う。
俺の身長でも大きめだから、まるで山登りをするためのリュックみたいだ。
紫の商人に、おおきにという言葉と共に見送られながら店を後にした。
この後はなかなかできていなかった恵みの樹の育成だ。
カティに大分遅れをとってしまっているし、今日はリュックの中身を全部使う勢いで世話をするしかないな。
「幸い天気もいいみたいだし。今日で巻き返さないとな」
気合を入れ直して、恵みの樹を目指して歩き始める。
恵みの樹はアイテム屋からはそう遠くない場所にある恵みの広場にある。
広場内で俺とカティの樹は比較的近くに植わっていて、お互いに樹の様子を見ることができるようになっていた。
恵みの樹は一旦精霊界に根付かせて育ててから、どういう原理で移動させるのかは分からないけど最終的にアビスヘイヴンへ移動させる。
ゲームだと画面切り替わると樹が移動してたけど、実際どうなるのかはその時になってみてだよな。
「今はそんなことより育成を……って。あれは……」
俺が自分の樹へ向かっていると、視界の先に二人いるのが見えてきた。
一人はカティ。もう一人は美しい銀の長いポニーテールの髪を背に垂らし、ピシッとした貴族風の白く美しい服を着こなす精霊。
あれは光の精霊アウレリオル……だよな。
どうやらカティが光の精霊に力を借りたみたいだ。
俺が近づくとちょうど力を送り込むところだった。
「万物を照らす光よ、恵みの樹へ降り注げ――」
アウレリオルの手のひらからキラキラとした光が溢れ出し、カティの恵みの樹を包み込んでいく。
すると、樹は光を浴びてすくすくと育ち始めた。
だが、力を送ってもらうと一番分かりやすく精霊の好感度をあげることに繋がってしまう。
だとしたら、多少効率が悪かろうがアイテムを使って自分で世話する方がいい。
「分かってるんで大丈夫です。この手持ちの金貨で買える分だけアイテムをください。まずは一通り」
「ハルがええなら、コッチはかまへんけどな。 おお? 結構金貨を集めてるやないか。じゃあ、少しおまけしたろ」
今までのお手伝い分の金貨は、手のひらサイズの布袋半分の量くらいになっていた。
十数枚だったはずなのに、今朝グラウディから持たされた分が思っていたより多かったんだよな。
布袋ごと渡すと、紫の商人がいくつかのアイテムを見繕ってくれる。
水色のじょうろと土色のスコップ。光の肥料に青の風袋。闇の防虫薬と炎の活力剤。
精霊の力が込められた一通りのアイテムだ。
「初回限定や。詰め合わせセットで持ち運び用の紫印のリュックつきやで。ええやろ? 大きさは堪忍な。せやけど、重量軽減が付いてる優れものや」
紫の商人はキャンプ用くらいの大きさの紫のリュックサックの中に、俺が買ったものを全て詰めてくれた。
肥料とかが思っていたよりかさばりそうだったし、持ち運べなかったらどうしようと思っていたので正直助かる。
「ありがとうございます。ありがたく使わせていただきます」
「ええよええよ。カティやといつも精霊様へのプレゼントしか買わへんから、久々にアイテム売ったわーって感じや」
「そういえば売ってましたね。俺には必要ありませんが」
「ハハ。しっかし、精霊様の力を間接的に借りるやなんて面白いやっちゃな。気に入った! ついでにコイツも付けたるわ」
楽しそうな紫の商人に可愛らしく包装されたクッキーらしきものを渡された。
こんなのアイテム屋のラインナップにあったか? 記憶にない。
「今日は天気もええし、樹のお世話しながら食べてや。そのクッキー、商人のおススメやで」
楽しそうな表情が気になったけど、悪意はなさそうだし普通のクッキーらしいからありがたくもらっておくことにした。
つぶれないようにリュックの一番上にクッキーもしまい、身体を屈めて紫のリュックを背負う。
俺の身長でも大きめだから、まるで山登りをするためのリュックみたいだ。
紫の商人に、おおきにという言葉と共に見送られながら店を後にした。
この後はなかなかできていなかった恵みの樹の育成だ。
カティに大分遅れをとってしまっているし、今日はリュックの中身を全部使う勢いで世話をするしかないな。
「幸い天気もいいみたいだし。今日で巻き返さないとな」
気合を入れ直して、恵みの樹を目指して歩き始める。
恵みの樹はアイテム屋からはそう遠くない場所にある恵みの広場にある。
広場内で俺とカティの樹は比較的近くに植わっていて、お互いに樹の様子を見ることができるようになっていた。
恵みの樹は一旦精霊界に根付かせて育ててから、どういう原理で移動させるのかは分からないけど最終的にアビスヘイヴンへ移動させる。
ゲームだと画面切り替わると樹が移動してたけど、実際どうなるのかはその時になってみてだよな。
「今はそんなことより育成を……って。あれは……」
俺が自分の樹へ向かっていると、視界の先に二人いるのが見えてきた。
一人はカティ。もう一人は美しい銀の長いポニーテールの髪を背に垂らし、ピシッとした貴族風の白く美しい服を着こなす精霊。
あれは光の精霊アウレリオル……だよな。
どうやらカティが光の精霊に力を借りたみたいだ。
俺が近づくとちょうど力を送り込むところだった。
「万物を照らす光よ、恵みの樹へ降り注げ――」
アウレリオルの手のひらからキラキラとした光が溢れ出し、カティの恵みの樹を包み込んでいく。
すると、樹は光を浴びてすくすくと育ち始めた。
444
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。
叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。
幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。
大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。
幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる