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第四章 黙々と育成からのお手伝いループ
19.紫の商人
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翌朝、朝食までごちそうになってからグラウディとモグにお礼を言って家を出る。
洋服も元々来ていた制服が綺麗になって返ってきたので、ありがたく着替えさせてもらった。
金貨も思ったよりももらえたし、俺としてはやっと攻略に移れそうで正直助かる。
俺がプレイした時にはなかったはずだけど……ゲームでもペンダント探しをすると、このイベントがあったってことか?
グラウディの家に泊めてもらうイベントは、攻略情報サイトでは見かけなかった気がする。
そもそも俺は完璧にこのゲームをクリアできている訳じゃないから、見逃しているイベントもあるだろうけども。
回数を重ねる前に寝落ちしちゃったから、今も前もって調べた攻略情報と選択肢を思い出す程度しかできない。
「参ったな……とりあえず金貨は溜まってきたし、アイテムを買いに行くかな」
この世界に慣れようとして忘れてたけど、そろそろ育成も本格的に始めないとまたカティに負けてしまうだろう。
唯一の望みであるノーマルエンドへ辿り着くには、カティより育成の結果を出さなくてはならない。
アイテム屋は精霊たちの住まう場所の中心辺りの丸太小屋だったはずだ。
「確か……大木からだと、まっすぐ行って……左か」
ゲーム内だとカーソルを動かすだけで目的地へ辿り着くけど、自分の足でとなると移動するだけでも時間がかかる。
運動不足の俺の足じゃ、進んでる気がしないしやたら疲れる。
「移動手段って大事なんだな……バスと電車が恋しい……」
免許も持ってないから、普段の俺が頼っているのは公共の交通手段だけど……歩くだけよりはよっぽどいい。
ウォーキングなんて、したこともない。
それでも歩き続けると、ようやく目的地が見えてきた。
怪しげな看板のかかった、こぢんまりとした丸太小屋。アイテム屋のワンダーだ。
扉を開くと、奇妙なデザインの紫の服を着た銀縁丸眼鏡のイケメンが笑顔で出迎えてくれる。
奇妙なデザインと言っても、どこか気品もあるような白い立て襟シャツに細い紫のリボンが止められていてこれまた紫ベースに白のストライプの入ったベストと紫のショートマントを身に着けている。
パンツもすらりとしたスーツのようにも見えるが、皮のベルトやポーチをごちゃごちゃと身に着けているせいでスッキリしない恰好なんだよな。
紫のふわりとしたくせ毛の長髪をリボンでまとめていて、瞳も紫色の全身紫がテーマカラーとでもいうべき男性だ。
「おー? 噂のハルや。どーも、おおきに」
関西弁風の微妙な言葉遣いをしてくる商人風の男。この人は紫の商人という通称で呼ばれている。
名前を攻略サイトで見かけた気はするが覚えていない。
実は恋愛ルートが存在するキャラクターで、彼は精霊界エーテルヴェールに唯一出入りを認められている人間だ。
他にも設定があった気がするけど……彼狙いのプレイじゃないので大半の情報はスルーしていたからな。
今、特に支障はないだろうし、深く考えなくてもいいか。
「こんにちは。アイテムを買いに来ました」
「そうかそうか。遠慮せんと見てってや」
店には彼が仕入れたらしいほうきやバケツという掃除用具から、何に使うのか分からない白い仮面やふわふわの動物の毛皮まで取り揃えられている。
これが本当に購入できるのかは知らないけど、俺が欲しいのはあくまで精霊の力が込められたアイテムだけだ。
「精霊様の力が込められたアイテムを見たいのですが」
「へえ。そりゃあ珍しいな。精霊様に直接頼んだ方が効率ええやろ? しっかし前は呪いのアイテムは売ってないかって聞かれたんやけど……記憶喪失ねぇ……」
ライバルはカティに呪いでもかけるつもりだったのか? どこまで幼稚なんだよ……。
ソイツと同じだと思われてるって……記憶喪失ってことにして正解だったかもしれない。
紫の商人は店の一角に案内してくれる。そこには色とりどりのアイテムが並んでいた。
「このアイテムで恵みの樹の世話をすると、精霊様の力を借りるのと同等の効果でお世話できるっちゅう話や。にしても、ぶっちゃけアイテム使うほうが効率悪いって聞いたで」
紫の商人は商売人だというのに親切に教えてくれる。だが、俺もそれは知っていることだ。
洋服も元々来ていた制服が綺麗になって返ってきたので、ありがたく着替えさせてもらった。
金貨も思ったよりももらえたし、俺としてはやっと攻略に移れそうで正直助かる。
俺がプレイした時にはなかったはずだけど……ゲームでもペンダント探しをすると、このイベントがあったってことか?
グラウディの家に泊めてもらうイベントは、攻略情報サイトでは見かけなかった気がする。
そもそも俺は完璧にこのゲームをクリアできている訳じゃないから、見逃しているイベントもあるだろうけども。
回数を重ねる前に寝落ちしちゃったから、今も前もって調べた攻略情報と選択肢を思い出す程度しかできない。
「参ったな……とりあえず金貨は溜まってきたし、アイテムを買いに行くかな」
この世界に慣れようとして忘れてたけど、そろそろ育成も本格的に始めないとまたカティに負けてしまうだろう。
唯一の望みであるノーマルエンドへ辿り着くには、カティより育成の結果を出さなくてはならない。
アイテム屋は精霊たちの住まう場所の中心辺りの丸太小屋だったはずだ。
「確か……大木からだと、まっすぐ行って……左か」
ゲーム内だとカーソルを動かすだけで目的地へ辿り着くけど、自分の足でとなると移動するだけでも時間がかかる。
運動不足の俺の足じゃ、進んでる気がしないしやたら疲れる。
「移動手段って大事なんだな……バスと電車が恋しい……」
免許も持ってないから、普段の俺が頼っているのは公共の交通手段だけど……歩くだけよりはよっぽどいい。
ウォーキングなんて、したこともない。
それでも歩き続けると、ようやく目的地が見えてきた。
怪しげな看板のかかった、こぢんまりとした丸太小屋。アイテム屋のワンダーだ。
扉を開くと、奇妙なデザインの紫の服を着た銀縁丸眼鏡のイケメンが笑顔で出迎えてくれる。
奇妙なデザインと言っても、どこか気品もあるような白い立て襟シャツに細い紫のリボンが止められていてこれまた紫ベースに白のストライプの入ったベストと紫のショートマントを身に着けている。
パンツもすらりとしたスーツのようにも見えるが、皮のベルトやポーチをごちゃごちゃと身に着けているせいでスッキリしない恰好なんだよな。
紫のふわりとしたくせ毛の長髪をリボンでまとめていて、瞳も紫色の全身紫がテーマカラーとでもいうべき男性だ。
「おー? 噂のハルや。どーも、おおきに」
関西弁風の微妙な言葉遣いをしてくる商人風の男。この人は紫の商人という通称で呼ばれている。
名前を攻略サイトで見かけた気はするが覚えていない。
実は恋愛ルートが存在するキャラクターで、彼は精霊界エーテルヴェールに唯一出入りを認められている人間だ。
他にも設定があった気がするけど……彼狙いのプレイじゃないので大半の情報はスルーしていたからな。
今、特に支障はないだろうし、深く考えなくてもいいか。
「こんにちは。アイテムを買いに来ました」
「そうかそうか。遠慮せんと見てってや」
店には彼が仕入れたらしいほうきやバケツという掃除用具から、何に使うのか分からない白い仮面やふわふわの動物の毛皮まで取り揃えられている。
これが本当に購入できるのかは知らないけど、俺が欲しいのはあくまで精霊の力が込められたアイテムだけだ。
「精霊様の力が込められたアイテムを見たいのですが」
「へえ。そりゃあ珍しいな。精霊様に直接頼んだ方が効率ええやろ? しっかし前は呪いのアイテムは売ってないかって聞かれたんやけど……記憶喪失ねぇ……」
ライバルはカティに呪いでもかけるつもりだったのか? どこまで幼稚なんだよ……。
ソイツと同じだと思われてるって……記憶喪失ってことにして正解だったかもしれない。
紫の商人は店の一角に案内してくれる。そこには色とりどりのアイテムが並んでいた。
「このアイテムで恵みの樹の世話をすると、精霊様の力を借りるのと同等の効果でお世話できるっちゅう話や。にしても、ぶっちゃけアイテム使うほうが効率悪いって聞いたで」
紫の商人は商売人だというのに親切に教えてくれる。だが、俺もそれは知っていることだ。
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