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第三章 地道なお手伝いで金貨を稼ごう
16.土の精霊の住処
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ふいに差した影……これは人影か?
タイミング的にお迎えが来たみたいだな。
「あわわ……ラウディ様ー!」
予想通り現れたグラウディが腕を伸ばすと、ひょいとモグを摘まんで肩の上に乗せた。
モグはあわあわしているが、グラウディに必死に状況を説明しているみたいだ。
「俺はこれで失礼します」
なんか金貨をもらえる雰囲気でもないし、仕方なく去ろうとするとグラウディがモグに耳打ちする。
モグはパタパタと両手を動かして必死に訴えてきた。
「ハルさぁん! ラウディ様がお礼をしたいそうです。あっしのせいでお身体を泥だらけにしてしまいましたしー。一緒にラウディ様の家まで参りましょうー」
「え、家に?」
一瞬迷ったけど断るのも不自然だし、素直にグラウディとモグについていくことにした。
+++
二人についていく間は、予想通り一言の会話もない。モグとグラウディは何か話しているみたいだけど、俺の方までは聞こえてこない。
でも、無理やり話されるよりよっぽど楽だ。
闇の精霊が住んでいる洞窟と比較的近い位置に大木が立っていた。
この大木がグラウディの家らしい。
確かにゲームで見たグラウディの家は大木の中にある家だったけど……目の前にあると凄いな。
樹齢何年だか知らないけど、見上げても上の方が見えないくらいのとても立派な大木だ。
よく見ると大木の根本に木の扉がついていて、そこが出入口になっているらしい。
「どうぞ、お入りくださぁい」
モグがグラウディの肩の上でちまちまと手招きをするので、俺も静かに後に続いてお邪魔する。
大木の中は木の家具で統一されていて、温もりを感じる空間だ。
ふわりと漂う木の香りは、疲労感が癒される優しい香りで安心感がある。
置いてある物も少なくてシンプルだけど、とても居心地が良さそうな家だ。
「お洋服も汚れてしまいましたし。ぜひひとっぷろ浴びていってくださぁい。あっしがすぐに準備するんで」
「え、いや……でも、部屋を汚すのは申し訳ないか。では、お言葉に甘えて」
モグはグラウディの肩からぴょんと飛び降りると、ちょこちょこ歩いて俺にタオルを持ってきてくれた。
好意に甘えて手を拭かせてもらいながら、ぐるりと部屋の中を観察する。
グラウディは俺のことを気にした様子もなく、部屋の中にぶら下がっているハンモックに腰かけた。
モグがお風呂の準備をしてくれている間に、俺は立ったままぼんやりと思考を巡らせる。
グラウディは何か言ってくるわけでもなく、無言で本を読み始めていた。
そういえば、グラウディの住処に入るのってある程度の好感度が必要だった気がするけど……。
俺が中に入れたのは、モグのおかげかな。
考え事をしていると、モグが奥の部屋からひょこっと姿を現す。
どうやらお風呂の準備ができたらしい。
「ハルさぁーん! って、ラウディ様ー。ハルさんが入り口で突っ立ったままじゃないですかぁ。椅子くらい座らせてあげてくださいよぅ、もう……」
「いや、家具を汚すわけにもいかないし。別に大丈夫」
俺が答えるとグラウディもちらりと俺の方を見るけど、相変わらずの無言で読書に戻ってしまう。
お礼がしたいって思ってくれたのも謎だけど、グラウディは本当に何を考えているのかよく分からない。
プリプリしているモグに促されて、俺は風呂場へと案内された。
風呂場も木造で、どういう仕組みなのかは分からないけどイメージはヒノキ風呂みたいな感じだ。
丸い木の湯舟と、木でできたシャワーもある。
ふわふわと漂う湯気を見ていると、ちょうどよさそうな湯加減なことが分かる。
現代人としてはありがたいけど、これが丸ごと大木の中にあるっていうのが不思議すぎる。
「着替えは準備しておきますので。あと、汚れたお洋服は洗っておきますね」
「そこまでしてもらわなくても……って」
それ以上の反論も出て来ず、勢いに負けて無言で頷く。
「ラウディ様が家へ人を招くのは久しぶりですからぁ。美味しいお食事を用意しますからねぇー」
ニコニコ顔のモグを見てるとやっぱり遠慮しづらい。
俺は押しに負けて、もう一度頷くのが精一杯だった。
タイミング的にお迎えが来たみたいだな。
「あわわ……ラウディ様ー!」
予想通り現れたグラウディが腕を伸ばすと、ひょいとモグを摘まんで肩の上に乗せた。
モグはあわあわしているが、グラウディに必死に状況を説明しているみたいだ。
「俺はこれで失礼します」
なんか金貨をもらえる雰囲気でもないし、仕方なく去ろうとするとグラウディがモグに耳打ちする。
モグはパタパタと両手を動かして必死に訴えてきた。
「ハルさぁん! ラウディ様がお礼をしたいそうです。あっしのせいでお身体を泥だらけにしてしまいましたしー。一緒にラウディ様の家まで参りましょうー」
「え、家に?」
一瞬迷ったけど断るのも不自然だし、素直にグラウディとモグについていくことにした。
+++
二人についていく間は、予想通り一言の会話もない。モグとグラウディは何か話しているみたいだけど、俺の方までは聞こえてこない。
でも、無理やり話されるよりよっぽど楽だ。
闇の精霊が住んでいる洞窟と比較的近い位置に大木が立っていた。
この大木がグラウディの家らしい。
確かにゲームで見たグラウディの家は大木の中にある家だったけど……目の前にあると凄いな。
樹齢何年だか知らないけど、見上げても上の方が見えないくらいのとても立派な大木だ。
よく見ると大木の根本に木の扉がついていて、そこが出入口になっているらしい。
「どうぞ、お入りくださぁい」
モグがグラウディの肩の上でちまちまと手招きをするので、俺も静かに後に続いてお邪魔する。
大木の中は木の家具で統一されていて、温もりを感じる空間だ。
ふわりと漂う木の香りは、疲労感が癒される優しい香りで安心感がある。
置いてある物も少なくてシンプルだけど、とても居心地が良さそうな家だ。
「お洋服も汚れてしまいましたし。ぜひひとっぷろ浴びていってくださぁい。あっしがすぐに準備するんで」
「え、いや……でも、部屋を汚すのは申し訳ないか。では、お言葉に甘えて」
モグはグラウディの肩からぴょんと飛び降りると、ちょこちょこ歩いて俺にタオルを持ってきてくれた。
好意に甘えて手を拭かせてもらいながら、ぐるりと部屋の中を観察する。
グラウディは俺のことを気にした様子もなく、部屋の中にぶら下がっているハンモックに腰かけた。
モグがお風呂の準備をしてくれている間に、俺は立ったままぼんやりと思考を巡らせる。
グラウディは何か言ってくるわけでもなく、無言で本を読み始めていた。
そういえば、グラウディの住処に入るのってある程度の好感度が必要だった気がするけど……。
俺が中に入れたのは、モグのおかげかな。
考え事をしていると、モグが奥の部屋からひょこっと姿を現す。
どうやらお風呂の準備ができたらしい。
「ハルさぁーん! って、ラウディ様ー。ハルさんが入り口で突っ立ったままじゃないですかぁ。椅子くらい座らせてあげてくださいよぅ、もう……」
「いや、家具を汚すわけにもいかないし。別に大丈夫」
俺が答えるとグラウディもちらりと俺の方を見るけど、相変わらずの無言で読書に戻ってしまう。
お礼がしたいって思ってくれたのも謎だけど、グラウディは本当に何を考えているのかよく分からない。
プリプリしているモグに促されて、俺は風呂場へと案内された。
風呂場も木造で、どういう仕組みなのかは分からないけどイメージはヒノキ風呂みたいな感じだ。
丸い木の湯舟と、木でできたシャワーもある。
ふわふわと漂う湯気を見ていると、ちょうどよさそうな湯加減なことが分かる。
現代人としてはありがたいけど、これが丸ごと大木の中にあるっていうのが不思議すぎる。
「着替えは準備しておきますので。あと、汚れたお洋服は洗っておきますね」
「そこまでしてもらわなくても……って」
それ以上の反論も出て来ず、勢いに負けて無言で頷く。
「ラウディ様が家へ人を招くのは久しぶりですからぁ。美味しいお食事を用意しますからねぇー」
ニコニコ顔のモグを見てるとやっぱり遠慮しづらい。
俺は押しに負けて、もう一度頷くのが精一杯だった。
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