【本編完結】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

めーぷる

文字の大きさ
上 下
8 / 119
第二章 ラブスピの世界へようこそ?

7.精霊たち

しおりを挟む
 炎の精霊に上から睨みつけられると威圧感があるな。
 カティは早々に水の精霊の後ろに隠れてるし。怖くても見なければいい話だ。
 水の精霊が視線をさえぎるように、俺の前で腕を広げる。

「ルカン、決めつけてはいけません。我々はあくまで平等な立場。贔屓ひいきしてはならないのです」
「俺様もイアリスに同意する。お前はいつも感情のままに動きすぎなんだよ」

 更に話に加わってきたのは黒い短髪で黒い鎧をまとった見た目は戦士のような精霊だ。
 こっちは闇の精霊だったか?

「シアンの言うことも一理ある。だが、最初からリュカティオの邪魔をしていたのも確かだ。ハルがいくら記憶喪失だとはいえ、優しくする必要もない」

 光の精霊のアウレリオルがぴしゃりと言い放つ。この人がリーダー格だったはずだから、精霊たちのまとめ役なんだろうな。他の精霊も黙ってしまった。

「記憶がなかろうと、お前は精霊の卵だ。やるべきことはやってもらう。分からないことがあるのならもう一度イアリスに聞くといい」
「分かりました」

 俺が返事だけすると、炎の精霊が可愛げがねぇと舌打ちする。
 いや……別に男には可愛げもいらないと思うけど。このゲームは可愛げを求めてくるのか?

「そういえば……グラウディは?」
「アイツならさっさとどこかへ行っちまった。俺様も戦ってきて疲れてるからもう行くぞ」

 アウレリオルの問いに、闇の精霊はあくびをしながら答える。
 闇と光……この二人もあんまり仲は良さそうじゃないな。光の精霊はずっと闇の精霊を睨みつけてるし。

「……オブディシアン!」

 アウレリオルが闇の精霊に向かって叫んだ。なるほど、それが闇の精霊の名前か。
 闇の精霊もさっさといなくなってしまった。
 精霊はみんなイケメンだけど、こうして目の前で見ていると全員面倒臭そうな性格なのかもしれない。
 別に精霊と仲良くしたい訳じゃないからいいけど、ただ邪険にされるのに耐えるっていうのも疲れそうだ。

「そうやって怒ってばかりだと疲れるよ。終わったならオレも行く」

 最後に話を切り出したのは、ブルーの流れるような髪を持つラフな服を着ている青年だ。
 どこか水の精霊リバイアリスに似ている気がする。
 髪の色がブルー系だからか?

「ウィン、後で貴方のところへいきますね」
「了解、兄さん」

 兄さん? ってことは、水の精霊と兄弟なのか。
 精霊は光・闇・炎・水・土・風だから……ウィンは風の精霊だな。
 ここに残されたのは俺とリバイアリスとアウレリオルだけになった。

「イアリス、ハルをどうするつもりだ?」
「先ほども言ったように、もう一度こちらでの生活の仕方を教えようと思っています。レリオル、貴方は戻っていてください」
「そうか、後は任せる」

 アウレリオルは俺を一瞥してからコツコツと歩いて行ってしまった。
 俺は終始無言で見守っていたけど、リバイアリスだけは俺へ微笑みかけてくれる。

「急に記憶がなくなってしまったら不便でしょう? 今日は疲れているでしょうし、大切なことだけ簡単にお教えしますね」
「……ありがとうございます。でも、俺のことは気にしないでください」
 
 精霊と仲良くする気もないから気にするなと言ったんだけど、リバイアリスは少し悲しそうな顔をする。

「疲れているのに余計なことを言ってしまってすみません。でも、ハルの雰囲気が以前と違うので少し驚きました」
「そうですか。今の俺には以前との違いが分からないので……」
「混乱させてすみません。でも、記憶をなくす前はどこかトゲトゲとしていて……って。こんなことを言ってはいけませんね」
「別に、気にしてません。それに後は自分で何とかしますので。お構いなく」
「そう、ですか……。分かりました。でも、心配なので。退屈かもしれませんがついてきてくださいね」

 寂しそうな顔をしたリバイアリスには申し訳ないが、俺は精霊たちに頼らずともこのゲームで結果を出せる方法は理解している。
 だから、俺に対しての親切は必要ないんだけど……どうやら受け入れないと進まないみたいだ。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...